第199話、懇親会
同盟の再締結を祝ってパーティが開かれた。
王宮にはパーティ専用の大広間があって、そこに帝国の武官や文官がズラッと集まる。
壁に帝国の国旗が掲げてあり、その手前に大きなテーブルが置かれている。その中央には皇帝が座り、皇帝の右側に弟のオズワルド公爵と将軍達、左側には俺達が座ることになった。
俺は皇帝の隣。背後には近衛兵が帯剣して立っている。もし、俺が皇帝陛下に無礼を働こうものなら即座に脳天を割られるだろう。
「カマリア王国とキャンベル帝国との固い絆を祝って乾杯!」
皇帝が音頭を取ると、会場の全員が立ち上がって酒杯を高く掲げた。
「キャンベル帝国、バンザイ! レオナルド皇帝陛下、バンザイ!」
慌てて俺も立ち上がってワイングラスを持ち上げた。
皆が一気に飲み干すので、俺も真似をする。
かなり旨いワインだった。俺はビール派なのでワインはあまり飲んだことがないが、かなり上質なワインに違いない。
「カマリア王国に派兵する部隊が決定した」
皇帝が俺に言った。
「彼が派遣部隊を率いるクローゼ将軍だ」
皇帝が紹介すると、オズワルド公爵の隣に座っていた軍服姿の男が立ち上がった。
「私はクローゼ将軍であります。このたび、三千の兵を連れてカマリア王国の援軍の役を賜りました」
将軍は四十歳くらいだろうか。ヨーロッパ人のように彫りの深い顔をしている。中肉中背でキリッとした体。いつも鍛えているのだろう。その立ち姿はビシッとしていて、真面目な性格をしているよう。
「三千ですか……」
藤堂さんが不満そうにつぶやく。
アマンダの駐留軍は一万人。こちらは三千人で、クローゼ将軍の部隊を併せても数が足りない。皇帝の表情をうかがうと、ちょっと気まずそうだ。俺は、その隣のオズワルド公爵が薄ら笑いを浮かべているのに気がついた。……こいつが援軍の数をケチったのに違いない。まったく、この土下座ロリコン野郎が。
「ご厚意、ありがとうございます」
王子が頭を下げて、日本組の不満そうな空気を取り繕う。
「まあ、そちらには人食い軍師のエノモトがいるから大丈夫でしょう」
皮肉を言ったのはロリコン野郎。これまでの戦闘で散々、俺達に叩きのめされたのを根に持っているよう。まったく、ちいせえ野郎だぜ。
もう、援軍の数は決まってしまった。後は、マンイーターの榎本さんに任せるしかないか……。
酒が進み、皇帝はさかんに日本のことを聞いてきた。
嘘をついても仕方がないので、俺は聞かれるままに全て答える。
皇帝は日本に強い興味があるようだ。異世界の大陸を制覇したら、次は日本に触手を伸ばすのだろうか。人間の征服欲というものは限りがない、銀河系を征服しても、まだ喉が渇くのだろうと俺は思う。
「カマリア王国を取り戻したら、次はアマンダに侵攻するのだろう?」
皇帝の白い頬がほんのり赤くなっている。
「はあ……まあ、放っておいても向こうから報復してくるだろうと思います」
それをどうやって撃退するかだな。
「うん、それで、アマンダを征服したら、サトウ司令官がアマンダの王になれば良いだろう」
「ハイ?」
俺の声がひっくり返って黄色い声音になった。