第197話、日本の王
「私はニホン、それにチキュウという世界に興味がある」
皇帝の目は無邪気に輝いている。
「我が帝国の精鋭をニホンに侵攻させよう。サトウ司令官は転送能力を使って帝国軍の手助けしてくれれば良い。ニホンを征服した暁には、あなたをニホンの国王にしてやっても良いぞ」
この人は本気らしい。征服欲というのかなあ、全てを統一しないと気が済まないのだろうな。
もし、俺が日本の国王になったらどうするか?
アニメやゲームの倫理規定を廃止して、それから、えーと……あの憎い上司を逮捕して、穴を掘ってはそれを埋めるということを際限なく繰り返す刑に処してやるかな……。
「それは無理というものです……」
藤堂さんが話に割り込む。声に困惑している空気が含まれていた。
「この異世界と日本とでは文明が違いすぎる。地球の科学技術は進んでいて、陛下が想像できないくらいに強力な武器やシステムが大量に存在しているのです。それは私達が今まで使っていた兵器など子供のオモチャと思えるほどでしょう」
少し困ったように説明した藤堂さん。
ふーん、と息を吐いて豪華なイスに体重を預ける皇帝。彼は天井を見上げて考え込んだ。
「そうか、今まで使っていた武器だけではなかったのか……。そうか、まだ他にあるのか」
皇帝は小さくウンウンとうなずくと言った。
「しかし、チキュウでも戦争は行われているのだろう? ならば、帝国が介入する余地はあるわけだ」
「それはそうですが……」
藤堂さんが口ごもる。
確かに地球でも戦争はなくならない。カマリア王国からはプラチナやレアメタルが産出されるのだから、この異世界を良く探せば貴重が資源が見つかるかもしれない。それをネタにして帝国が日本やアメリカの政府に介入するという方策もあるかな……という気がしないでもない。
「まあ、それは後の話だ」
皇帝が話を区切り、正面を向いた。
「カマリア王国とキャンベル帝国の同盟は再確認された!」
凜とした声が会場に響く。部屋にいる臣下は皆、姿勢を正した。
「それにはニホン人も含まれる。今まで多くの犠牲を払ったが、それらは全て水に流そう。これからはニホン人を対等な同盟者と私は見なす。ゆえに、過去のしがらみに囚われて彼らを害するような行為は堅く禁ずる。これは私、レオナルド皇帝の勅命である!」
「はっ!」
席に着いていた帝国の人達は一斉に立ち上がり、右手を横にして胸に付けた。
あー、なんか、殺される恐れはなくなったらしい。