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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第3部、カマリア王国
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第178話、秋の星


「ノダさんとエノモトさんは明日の日暮れまでにギロチンで処刑されるそうです」

 そうか、もう決まっていたのか……。あの議長は本気だな。やっぱり、俺が出頭するしかないよな。

「それで、アズベルはどうなったんだ」

 重松さんが問いかける。

 うまく議長に取り入ったということは知っているが。

「彼女は議長と行動を共にしています。いきなりサトウさんが転送してきて、議長をニホンにさらっていくのを防ぐためだとか。あの子は転送を無効にする魔法を使えるそうですね」

 そんなことができるはずがねえよ! 名ばかりの神官が。

 しかし、そうか……。議長を誘拐するという手もあったか。よく考えると転送能力は怖いな。

「それにアズベルちゃんはサトウさん達に、その……あの……凄くいやらしいことをされたとかで議長達も同情していました。いえ、私は信じていませんよ。サトウさんがそんなことをするはずがないですから……」

 ルーシーさんはチラッと俺の顔を見て下を向く。

「当たり前ですよ! それはアズベルが自分を可哀想に見せるための嘘に決まっていますよ……」

 そんなことを全くしていないと断言できない自分が憎らしい。

「アズベルの嬢ちゃんは俺達を裏切ったわけじゃないだろう」

 ヒゲ面の重松さんが言った。

「それは、どうしてですか」

 俺が聞くと彼は髭をなでる。

「アズベルは転送を妨害する魔法などという、すぐにバレるような嘘をつく必要はない。神官は殺されることがないからな」

「はあ……」

 そう言えばそうかな。

「つまり、転送を無効化できると嘘をつけば、佐藤さんが現れたときに接触できると嬢ちゃんは考えたんだろう」

「なるほど……」

 ポテトチップスをバクバク食べるしか能が無いと思っていたが、アズベルは拘束されたとき、瞬時に考えを巡らせていたのだ。

「あとは佐藤さんに頼むしかない。よろしく頼むぜ、最高司令官閣下」

 重松さんが片方の頬を上げて、嫌らしい笑いを浮かべていた。


  *


 俺達は森の中に戻り、車の近くにテントを張った。

 俺は軽自動車のイスを倒して寝ることにした。重松さんと祐子さんは車の左右、少し離れた場所にテントを設置して眠る。誰かが来たときに俺を守るためだ。

 窓からは秋の星が見える。

 人間が争っていても自然界は何事もなく巡るのだ。空の上の星は殺し合っている人間達を見て何を思っているのか……。

 明日、俺は野田と榎本さんを救うことができるのかな。

 なんとなくセンチメンタルになっているのは、明日の救出作戦が怖くて心の重しになっているのだろう。

 今日はいろんな出来事があった。

 精神的な疲れのせいで、いつの間にか寝てしまった。


  *


 翌日の昼過ぎ。俺達はアマンダ共和国の首都に入った。

 市民広場には演劇上のような広い台が作られていて、その手前の中央にはギロチン台が設置されていた。その正面には大勢の市民が集まり、これから始まるクビチョンパ・ショーを期待しているのか、ざわめく声が会場を埋めている。

 俺達は建物の影に隠れて双眼鏡で様子をうかがっていた。


 やがて日が傾いた頃、憎たらしい議長が笑顔で現れた。彼は木の階段を上って壇上に進む。その後ろには黒い神官の服を着たアズベルが続いていた。他には、グラン将軍とモルトン議員の顔も見えた。刑場の周りには十数人の兵が立っており、その警備はグラン将軍が指揮しているらしい。

 馬車が到着し、そこから降りてきたのは、後ろ手に縛られた野田と榎本さんの哀れな姿だった。


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