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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第3部、カマリア王国
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第174話、軍神


 しかし、ちょっと待てよ……?

「それでは、榎本さんはどうなるんでしょうか」

 俺が聞くと藤堂さんが何も言わずに天井を向いて鼻から息を吐く。やがて、俺の方に向いて言った。

「難しいな……」

 ……それってどういうこと?

「彼は真っ先に殺されるだろう」

「そんな……」

 くったくのない榎本さんの笑顔が浮かぶ。あの人がこの世からいなくなるというのか。

 藤堂さんの表情は冷静なようで、少し引きつっている。認めたくないことでも、正面から向き合って受け止めているよう。

「榎本さんは、一人なら軍事オタクの冴えない貧弱なオヤジだが、ひとたび軍隊を率いれば手の付けられない凶悪な怪物になる。議長にしてみれば最高に危険な存在だ」

 そういうことか……。

 確かに、大軍を率いた榎本軍師を敵にはしたくない。彼に三万の兵を与えればアマンダ共和国の首都など一週間で攻略してしまうんじゃないのか。配下の兵が多ければ多いほど真価を発揮する軍神の生まれ変わりのような人。

 藤堂さんは話を続ける。

「彼をコントロールできれば良いが、その自信が無ければ、いっそのこと抹殺した方が議長にとって安心だろう」

 榎本さんの才能が彼を危機に陥れているのだ。戦国では、秀でた能力を持っていることが自分を不利にすることがあるんだなあ。日本でも、自分の能力を誇示すると足を引っ張るやつがいる。天才は凡人に殺されてしまう宿命なのか。

 八畳間に暗澹たる空気がよどんでいた。

 テレビからは、ラブコメドラマのエンディングテーマが流れている。それは何とかダンスという曲で、居間の暗い雰囲気には場違いで似合わなかった。


 沈黙の中、俺のスマホが鳴った。

 画面を見ると野田という表示。慌てて液晶をタップしてスマホを耳に当てる。

「おい、野田! 生きていたか、今はどこにいるんだ」

 スマホを持っている手が、もどかしさで震える。

「はい、佐藤さん。彼は無事ですよ……今はね」

 体温が一気に下がって背筋が震えた。向こうはアレックス議長の声。

「議長……どうして……」

 寝転がっていた重松さんが勢いよく起き上がった。

「佐藤さん! 相手は議長なのか? スマホをハンズフリー通話にしろ」

 スマホを操作してから、皆に聞こえるようにテーブルに置く。

「野田は無事なんだな。榎本さんはどうした? アズベルは?」

 俺の問いに、しばらく沈黙した後で議長が答えた。

「はい、野田さんも榎本軍師も生きていますよ。アズベルさんは神官なので殺すはずがありません」

 ホッとして大きく深呼吸をする。

「じゃあ、アズベルに変なことはしていないのね」

 横から香奈恵が口を出す。電話の向こうからため息が聞こえた。

「変なことをしていたのは、佐藤さん、あなたの方でしょう」

「ハイッ?」

 俺の声が裏返っていた。


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