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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第3部、カマリア王国
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第170話、臨戦状態


「見せてみろ」

 重松さんがメモをひったくった。睨みつけるようにして、書いてある文字を読む。

 藤堂さんは窓際に進み、外を確認する。

「いかんな……。アマンダの兵がこの建物に集まっているぜ」

 俺も窓から下を見ると、確かに多くの兵が行ったり来たりしていた。普段は立哨の兵が散見しているだけなのだ。

「朝から変な感じだったが……逃げるしかないな」

 そう言って重松さんがメモを俺に押しつけた。

「和田が帰ってきたのを見計らって行動を開始したんだな」

 藤堂さんがボソリと言って、それに重松さんがうなずく。

「佐藤さん、そのメモを食え」

「えっ」

 重松さんの意図がすぐには分からなかった。

「それが見つかったらルーシーさんに危害が及ぶ。証拠を隠滅するんだ」

「ああ、そうですね」

 メモを口に入れてモグモグと噛んだ。俺の人生で紙を食べたのは初めてのこと。

「今は転送して逃げるしかないだろう」

 そう言って藤堂さんが口を結ぶ。

「えっ、ちょっと待ってください。じゃあ、野田や榎本さんはどうするんですか。それにアズベルは」

 彼らはアマンダ軍の砦に行って、指揮所の通信機などを撤去している。そして確か、アズベルはミッキー老人の邸宅にいるはず。

「後で救出する……」

 藤堂さんは平静な口調だが、やはり少し迷っているトーンがある。

 代わって重松さんが俺の前に立つ。

「佐藤さん。アマンダ共和国は立法国だ。逮捕した後には裁判を行うし、処刑するのも事務手続きが必要なはず。すぐには殺さないさ……」

 大丈夫かな……。神経が逆立ってざわざわする。でも、今は考えても仕方がない。

「そうですね……アズベルは神官だから殺すということはあり得ない……」

 でも、絶対ではない。議会が暴走して、全員を死刑にするかも。俺が戦勝パーティで独裁者になるとか大声で宣言したのが原因……ということはないよな。


 不意にノックの音が響いた。

 全員がドアに視線を集中する。

「佐藤司令官は在室ですか」

 ジョンソン連隊長の声だ。それは普通のノックで、普通の言い方だ。

「入ってもよろしいですか」

 さすがの重松さんも対応に迷っているよう。俺達は動けないでいた。

「はい、どうぞ」

 和田さんがドアを開けた。

 あっ、バカ! 何をやっているんだ。ここは鍵を掛けるとこだろう。そう思ったのは俺だけではないはず。

 ドドドドっと兵がなだれ込んできた。

 五人の兵は部屋に広がって剣を抜き、臨戦状態で構えている。

「和田! 佐藤さんを守れ!」

 怒鳴って藤堂さんが腰の警棒を抜く。そして、シャキーンと伸ばした。重松さんも同じく伸縮式の警棒を構えていた。

 戦争マニアは常に警棒を持っているのがお約束なのだろうか。

 俺は離れた窓際で和田さんにお姫様抱っこされていた。

 何でお姫様抱っこ? これが彼にとって守るというイメージなのだろうか。それとも、マシンのような副官でも動揺しているのだろうか。


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