第161話、戦勝パーティ
戦闘が終わり、その三日後に議事堂で戦勝パーティが開かれることになった。
議事堂のホールに関係者がたくさん集まり、豪華な宴会だった。
何事もなかったように、スパイ野郎のモルトン議員が議長の隣に座っている。さらにグラン将軍も偉そうにちょび髭をいじっていた。
将軍は、帝国を撃退したという報告を聞いた途端に熱が下がって退院したそうだ。まったく、調子の良い野郎だな。
広い会場には、たくさんの丸くて大きなテーブルが置いてあり、それぞれのテーブルに旨そうな料理が山積みされている。
開演のスピーチはアレックス議長。
まるで自分が帝国を退けたというような自慢げな話を長々と話す。
俺達は端っこのテーブルで議長の演説を聴いていた。
しばらくしてスピーチが終わり、拝聴という苦行から解放された俺と野田はワインをがぶ飲みした。
ビールもあるが、アマンダ共和国のワインは絶品だった。俺が赤と白を交互に試していると、すぐに酔いが回ってきた。
「よーし、俺は王様になってやるぞー!」
大声で宣言すると、隣の野田が「おー、やれやれー、やっちまえー」とはやし立てる。
彼も酔っているらしい。
「王様になるよりも、まずプラチナでしょ。お金を手に入れなきゃ始まらないわ」
離れた席の香奈恵が忠告してきた。
彼女は今回、ほとんど活躍していないのだが、チャッカリと戦勝会には出席している。
「王様になれば、プラチナで犬小屋を作るくらい大量に手に入るさ」
それ以前の問題として、王様にならなければ馬に変えられてしまうかもしれないのだが。
「佐藤さんは、どのようにして王になるつもりですか」
榎本さんがマジに聞いてきた。
「うーん……、どうすれば良いんですかね」
俺はワインをコクコクと飲みながら考えた……しかし、分からない。誰でも王様になれる、というようなハウツー本を今までに見たことがないよな。
「一番簡単なのは、王国を乗っ取ってしまうことでしょうね」
淡々とした言い方の榎本さんだが、内容は過激。彼も酔っているのか。
「密約で、カマリア王国を擬似的に占領するという約束になっていますよね」
「ああ、そうですね」
「そのときに本当に占領してしまうのですよ。こちらの方が戦力が大きいので制圧するのは容易です」
少し驚いて榎本さんを見る。そんなことを考えていたのか榎本さんは。根っからの軍師の血が彼にそうさせるのだろうか……。
「カマリア王国の王様になって、帝国軍が攻めてきても必ず撃退するという約束をすれば、国民も支持するはずです」
榎本さんの話は悪魔のささやきのように俺のハートを握る。
「じゃあ、元の王様や王子はどうなるんですか」
「まあ、非情なやり方になりますが国を占領した場合、その王家の血筋は根絶やしにするのが良いと、君主論に書いてあります」
処刑の場面を想像して俺は首を横に振った。
「俺にはできません。あの優しいジェームズ王や人なつっこい感じの王子をだますなんて……」
根絶やしということは、幼児まで殺すの?
「では、仕方がありませんね」
榎本さんはテーブルの一点に視線を移動させ、ビールをチビチビと飲む。
香奈恵の隣では、アズベルが豪華な料理を豪快に食べていた。