表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第3部、カマリア王国
160/279

第160話、甘ちゃん


 やつらから注意を外したのがマズかった。

 急に視界が暗くなって目に激しい痛みが走る。

「うわぁ!」

 俺は目に手を当てた。やつらは砂を投げつけてきたのだ。

「チクショウ!」

 野田も目潰しを受けたよう。

「よし、ワイスマン! こいつらを斬り殺せ」

 オズワルドの声だ。俺の背中に戦慄が走る。

「いえ、ダメです。ニホン人は特殊な武器を持っている。今は逃げる選択肢しかありません」

 そう言った側近らしき男が近くにいた馬を呼び、乗って走り去っていく音が聞こえた。


 ようやく視力を回復し、涙でぐちゃぐちゃになった目を開けると周りには誰もいない。

「あのロリコン野郎! 股間にぶち込んでおけば良かったぁ!」

 タオルで目をこすりながら野田が叫ぶ。

「戦場で情けは禁物だよな……」

 まだまだ俺達は平和ボケした甘ちゃんだったのだ。


  *


 俺達は陣地に戻った。

 テントに引きこもり、俺はユーチューブで子犬が戯れる姿をボケーッと見ていた。

 スマホでアニメを見ていた野田が話しかけてきた。

「あのオズワルドの件はどうするよ……」

「うーん……」

 どうしようかな。藤堂さんに報告すると怒られそうだな。

「まあ、黙っておこうぜ。言っても仕方ないだろう」

 そう答えると野田はうなずく。

 敵の司令官を逃がしてしまったと知られたら、もしかしたらカマリア軍の軍法会議に掛けられるかもしれない。ここは口を閉ざすのが上策というもの。

「でも、今度会ったら迷わず股間にショットガンだ」

 野田がキッパリと言う。

「ああ、顔面にショットガンだ」

 俺も胸に刻み込む。

 次は情けをかけない。問答無用で攻撃だ。


 夕闇の中、榎本軍師の攻撃隊が帰還した。

 指揮車から降りてくる榎本さん。

「お疲れさまです。榎本さん」

 俺が声を掛けると、彼はニコリと笑った。

「まあ、今回は楽勝でしたね。佐藤司令官が提案した作戦のおかげです」

「いやあ……」

 照れくさくなって頭をかく。

「それで帝国軍はどうなったんですか」

 野田が顛末を確認する。

「帝国軍は散り散りになって逃走していきました。帝国に逃げていったのでしょう」

「殲滅しなかったんですか?」

 榎本さんは首を振った。

「今回の戦術目的は帝国軍を撃退することで、一兵残らず全滅させることではありません。欲をかくと手痛い反撃に合うかもしれませんので……」

 そう答えた榎本軍師の顔は、物足りなかったという表情。もっと戦いたかったのかな、戦争人間達は。

「まあ、とにかく我々の勝利です。共和国の首都に凱旋しましょう」

 榎本軍師の指示で、陣地の部隊は帰り支度を始めた。

 念のために陣地には千名を残し、後は全て撤収する。俺と野田もジムニーに乗って帰途についた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ