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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第3部、カマリア王国
158/279

第158話、勝ちてより戦う


 攻撃軍は帝国に突入し、陣形を破壊した。

 双眼鏡で見ると、藤堂さんが日本刀を振り回して騒乱の敵兵を斬り殺している。血の気が多い人だったんだな。

 混乱は混乱を呼び、敵の中隊が方向転換してこちらを向いたが、その後背からマシンガンや弓矢の集中攻撃を受けて大きな被害を受けた。二つに分かれていても一つの生き物のような共和国軍。榎本さんと重松さんは、いちいち無線で連絡しなくてもツーカーで意思を共有できるらしい。

 しかし、帝国は一時の混乱を立て直し、こちらの奇襲に対応し始めた。

 アマンダの陣を半包囲していた右翼と左翼が後退し、こちらの左右を攻撃すべく進軍してくる。

「重歩兵を左側面と右側面に展開せよ」

 榎本軍師の命令で、金属の鎧を着た兵が部隊の左右に並んで防御態勢を整えた。

 戦場では、どんな場面でも迷うことがない榎本軍師。常日頃から戦闘のことばかり考えているんじゃないのか。

 こちらは正面の敵を攻撃しながら、左右からの攻撃を防御している。我が軍の重歩兵は大きな金属の盾を構え、その隙間から軽歩兵が長い槍でけん制する。

 なぜか帝国軍の連携は乱れているよう。やがて正面の敵は撃破され、帝国軍は分断された。


「大勢は決しました、佐藤さん達は後方に下がってください」

 そのように榎本軍師が言うのは、この戦いに勝利したということか。

 確かに敵兵は個別に防戦しているだけで、組織的な動きはない。つまり、向こうの指揮系統はズタズタなんだな。

「分かりました。砦に戻っています」

 俺達のことを気遣っている榎本さんの指示通り、俺と野田は歩いて戦場を後にした。


 馬に乗ることができないため、歩いて平野を抜け、森に入る。

 森の中は夕暮れが迫って薄暗い。

「おい、佐藤。一休みしようぜ」

 確かに歩き疲れていたので、小川のそばに座り込む。

 戦いの興奮と人を殺した罪悪感、それに戦闘が終わったという安堵感が胸を空虚にしていた。よく考えることができなくて、とりとめのないことがグルグルと頭の中を回る。

「これで良かったのかな……」

 大きな石に腰掛けている野田がポツリとつぶやく。

 俺は「うん」とうなずく。赤壁の時と比べて、あっけない感じだった。上手くいくときは上手くいく、これが戦争というものか。

 作戦を立て、入念に偽装工作をしていても、戦いは数時間で終わってしまう。快勝するためには入念に作戦を立て、良く準備をして勝ってから戦わないとダメらしい。戦いに臨んでから、どうやって勝とうかなと考えるようじゃダメなんだ。

 あまり複雑なことを考える気分じゃなかった。俺達は黙り込んで小川のせせらぎを聞いてボケーッとしていた。


 耳鳴りのように、遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。

「おい、佐藤」

 野田がショットガンを手に取ったので、俺も攻撃の準備をする。

 立ち上がって音の方向に銃を構えた。

 すぐに、一頭の馬がこちらに向かって走って来るのが見えた。帝国の軍服を着た男が二人乗っている。

「止まれ!」

 野田が怒鳴ったが馬のスピードは落ちない。俺は上に向けて威嚇射撃した。

 ショットガンの音に驚いて馬が急停止する。敵に当てないように地面に向けてもう一発。

 馬は激しく暴れ、乗っている男達を振り落とした。

 近寄ると、灰色の軍服を着た男達が落馬した痛さに呻いている。

「剣を捨てろ!」

 銃を構えながら慎重に近づいていった。

「分かった、抵抗はしない。俺達は一般兵だ。頼むから逃がしてくれ」

 剣を地面に置いて両手を上げている若い男。

「嘘をつけ、それは士官の軍服だろうが」

 そう言ってもう一人の男を見ると、俺の息が止まった。

 彼は帝国軍の司令官、オズワルド公爵だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] その平凡な顔をフッ飛ばして一番手柄か? フッ飛ばしたら首実検ができなくなるか。
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