第14話、軍事オタク
俺と野田は交互に状況を説明した。
「うーん……」
腕組みをして少しのけぞる榎本さん。
「ゲームの話じゃないんですか……?」
やはり、本当の事だとは信じてくれないか。
「まあ、ゲームとして考えてくれてもいいんだけど、対応策はありますか」
野田が聞くと、榎本さんが背筋を伸ばす。
「まあ、無くはないですけど」
「本当ですか」
野田が身を乗り出す。
「戦争というものは事象が複雑に絡み合っています。だから、戦略的や戦術的、政治的に対策を考えれば何らかの方法はあるはずです」
彼は真剣に答えている。これは使えそうだ。軍事オタクという者かな。
「そのキャンベル帝国とトルディア王国、それに大陸全体の詳細が知りたいんですが……」
うーん、と言って俺達は顔を見合わせた。
異世界に行って、すぐに帰ってきたので詳しい状況は良く知らない。
「その異世界とやらに僕が行くことはできますか」
そうか、直接、榎本さんに行ってもらえばいいんだ。
「ぜひ、お願いしますよ、モンモン……あ、いや、榎本さん」
野田が軽く頭を下げて頼む。
榎本さんは快く承諾してくれた。
モンモンは電車で来たので、トヨタ・ハリアーに乗ってもらい、野田の実家に行くことにした。
*
大きな玄関から入ると香奈恵が戻ってきていた。
「ああ、お帰りなさい。ええっと、こちらは?」
香奈恵はジャージを着てゆったりしている。自分の家にいるつもりだな。
「ああ、この人がモンモンこと榎本さんです」
野田が紹介した。
「どーも、僕が榎本です。初めまして……」
彼は赤面している。女性に対して免疫がないらしい。
「ああ、どうも、あたしは伊藤香奈恵です。よろしくね」
そう言って小首をかしげる。しゃべらなければ良い女なんだけど。
彼女に、榎本さんを異世界に連れて行くという話をした。
「うーん、その前に、転送についての情報を得るべきじゃないの」
「情報?」
いぶかしげに野田が聞く。
「転送できる場所とか細かいことを知っておかないと損よ」
香奈恵の言う通りだな。しかし、どうやって。
「そのコパルとかいう女の子を呼び出してみれば? 頼めば来てくれるんじゃないかしら」
こともなげにいう香奈恵。
「そんなことができるのかな」
悪魔召喚とか、そんな方法は知らないぞ。
とにかく、出てきてくれるように頼むことにした。
俺は客間の古畳の上に正座して、身を正す。
「コパル様、コパル様、お出ましになって下さいませ」
八畳間の中央で祈りを捧げている俺を榎本さんがバカを見るような目で見つめている。そんな顔をするなよ、モンモンさんよお……。
「偉大な悪魔のコパル様。どうか出てきて下さーい」
これで出てこなかったら、俺はアホだな。
「呼んだかしら?」
平伏している俺の上の方で可愛い声がした。
上体を伸ばすと例の幼女悪魔が宙に浮いている。