第134話、新ウニモグ
重松さん達は準備をするために帰って行った。
野田は異世界に行きたくないと言っているが、彼がいないと日本と通信できないので連れて行かざるを得ない。
久しぶりに異世界の様子を見たいというのでアズベルも同行することになった。
彼女はクリーニングに出しておいた神官用の黒いローブを押し入れから引っ張り出してきた。それは榎本軍師の金ピカマントほどではないが、派手な金の刺繍がしてある。
トルディア王国の宮廷では、全裸の上にローブを羽織って儀式を行う。野田は、それを写真に収めたいと切に願っているようだが、撮影現場を見られたら香奈恵に殺されてしまうのだ。
*
翌日、野田の実家にオフロード車が集合した。
榎本さんのランドクルーザーと重松さんのウニモグ、それに藤堂さんのミニバンだ。
俺達は重松さんのウニモグに乗り込んだ。
それは重心の低い悪路走行可能車で、運送や工事など多目的に使用されているオフロード車だ。
前のウニモグは赤壁の戦いでスクラップになってしまったので、また別のを買ったと言う。重松さんはウニモグが好きなのか。中古でもオプションを付けて二千万円以上する。
運送オプションを装備していて、荷台にはガソリンが入ったドラム缶が数本と生活用品が満載されていた。
長い間、転送していなかったので重量ポイントは貯まっているはず。ウニモグは三台くらい持って行けるだろう。
搭乗者は俺と野田、アズベル、それに重松さん達だ。
重松さん達は自衛隊の迷彩服。アズベルは赤いミニスカートにピンクのブラウスだった。大きめのショルダーバッグにはお菓子が入っているのだろう。お前はピクニックにでも行くつもりかよ。そういう俺もジーンズにTシャツという普段着だが。
「じゃあ、行ってくるよ」
雑草が伸びた庭。玄関先に立っている香奈恵と祐子さんに言った。
転送先はアマンダ共和国のミッキー老人の邸宅。しばらくその家にやっかいになろうという考えだ。あまり、ワニ老人を頼りたくはないが、他に知り合いはいないので仕方がない。アレックス議長は榎本さんのことをなんとなく警戒しているみたいだし。
「では、転送します」
俺はウニモグの助手席でミッキー老人の邸宅を思い浮かべた。
香奈恵は腕組みをして、うざったいという表情。祐子さんはいつもの無表情で小さく手を振っている。
目の前がゆがんで暗くなる。それは懐かしいような感じ。
そして、漆黒の闇に突入した。




