表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第2部、アマンダ共和国
121/279

第121話、悪鬼


 やぐらのハシゴを降りて、俺と野田は辺りを見回した。

 死体がゴミのように散らばっている。

 現在の日本では見ることが出来ない光景。一昔前の戦争の時でもなければ、このように大量の死体を間近に見ることは不可能だろう。

 散乱している死体を避けるようにして、榎本軍師の方に歩いて行く。

「ぎゃっ!」

 野田の叫び声。

 見ると、彼の足首を敵兵がつかんでいた。まだ息のある者がいたのか。

「……お前達は悪魔か……。ニホンとかいう魔界から来た悪鬼どもめ……」

 うつ伏せに倒れて革の鎧を血で赤黒く染めた敵の兵。握った足首に、すがりつくように上げた顔は、けっこう若い。その表情を苦痛にゆがめながら俺達に呪詛の言葉を吐き続ける。

 野田は青ざめていた。俺も同じだろう。

「侵略してきた、お前達が悪いんだろうが!」

 そう言って野田は足をバタつかせて手を振り払った。

「うるせえんだよ!」

 少し離れてからショットガンを撃ち込む。若い敵兵は絶命した。

 野田が引き金を引いたのは、敵の言葉に怒ったからか、それとも楽にしてやったのだろうか……。


「全員、追撃の準備!」

 榎本軍師の号令が響き、共和国軍は爆弾によって出来た斜面を降り始めた。

 まだ戦うのかよ……。

「ここで決着を付けてしまいます。敵の兵は一万くらいに減ったはず。こちらの部隊と同じ数だし、敵の士気は急激に落下しています。ここが帝国を撤退に追い込む最高のチャンスなのですよ」

 そう説明する榎本軍師の表情は普段と変わらない。

 この人の頭の中はどうなっているのだろう。戦いのたびにピーピーと喚いているセンチメンタルな俺達と違って、榎本さんは冷徹に計算しているよな。


 榎本軍師は用意された指揮車に乗る。それは馬車の前後に、動かすための取っ手を付けたような物で、それを四人がかりで移動させていた。

 斜面の死体を片付ける時間はない。くすぶっている焼死体の上を指揮車の車輪が踏んでいく。

 ジョンソン連隊長は先頭に立って、鎮火の作業をしていた。日本から持ってきた消化器を使って、まだ燃えている岩場に一本の道を作る。

「追撃開始!」

 榎本軍師がハンドメガホンで命令を飛ばした。

 その一言で、一斉に狭い道を一万の大軍が通過する。

 馬がいないので、俺達も徒歩で重松さんの後についていく。辺りには焼け焦げた匂いが漂い、足下には焼けただれた敵の死体。

 ああ、もう俺は一生、焼き肉を食べることが出来ないだろうな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 榎本さんカッコいい。 こんな人が欲求不満の女子高生モンモンって名乗るはずがない。 3万の帝国兵が1万まで減らされたのか。 2万殺されたって言う方が適切か。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ