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異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第2部、アマンダ共和国
110/279

第110話、赤壁


 重松さんのジープに荷物を積み込んで、異世界に転送する準備は完了。

 藤堂さんも一緒に行くことになった。

 すでに彼は重松さんから異世界の説明は受けている。そういったものがあるのだと彼は納得しているそうだ。重松さんと同じ、物事に動じない性格なんだなあ。


「じゃあ、行きますよ」

 助手席から見えるのは夏草が生えている雑草だらけの庭。玄関の前には、面倒くさそうに見送りに出てきた香奈恵とポテトチップスの袋を片手に持ったアズベルが立っていた。

 ジープの室内はガソリン臭い。荷室に燃料の入った缶などが置いてあるのだ。

 意識を集中して異世界を想像する。転送先は例の激戦地の崖だ。そこは、いつの間にか赤壁と呼ばれている。五〇メートルもある高い壁面が炎と敵兵の流血によって真っ赤に染まったからだ。

 夕日の庭がゆがみ、俺達は赤壁の作戦本部に転送した。


「ほうーっ! 重松の言ったことは本当だったんだなあ」

 藤堂さんがジープから降りて辺りの景色を見回す。後輩の言うことを疑っていたわけではないだろうが、実際に転送してみないと信じることは難しいだろう。

 本部に入ると、榎本さんと野田、それに祐子さんがいた。

「よお、軍師殿。様子はどうだい?」

 重松さんが部屋に響く声で聞く。

「お疲れ様、別に変化はありませんね。帝国が動く気配はないです」

 相変わらず冷静な口調の榎本さん。戦いになると性格が変わるよな、この人。

「やあ、久しぶり、榎本さん」

 藤堂さんが片手をあげてあいさつする。なんだ、三人は知り合いだったのか。戦争オタクと軍人崩れの人間、気が合うのかな。

「なんだよ、その派手なマントは。こっちでもコスプレをやっているのか?」

 金色マントを見た藤堂さんが目を細めて笑うと、榎本さんは照れくさそうに頭に手をやった。

 あれ、榎本さんは日本でコスプレをやっていたのかな。

 藤堂さんは祐子さんとも知り合いのようで楽しげに話していた。彼女の笑顔を見るのは珍しい。


 榎本さん達、三人はスパイについて相談し始めた。

 俺と野田は部外者のようにイスに座ってボンヤリと聞いているしかない。

 ミッキー老人が情報を探っているので、とにかく、老人の話を聞いてからということになった。

「ちょうど、戦況報告の会議に出席するように要請されているので、町に戻りましょう」

 榎本さんが誘うので、俺達も同行することになった。

 ジョンソン連隊長に後を任せて、俺達はウニモグでミッキー老人の邸宅に向かう。その別宅が共和国軍の本営になっているのだ。

 夕闇が迫っている荒れた道路。強力なヘッドライトには石ころだらけのデコボコ道が照らし出されている。


 重松さんがハンドルを握り、後部座席には俺達と藤堂さんが座っていた。

「藤堂さんは何の仕事をしているんですか?」

 本営に到着するまで一時間以上かかるので、ちょっと聞いてみた。

「うーん、まあ探偵ってやつかな……」

 隣の藤堂さんは苦笑いをして角刈りの頭をなでる。

「はあ、探偵ですか。それって、どういったことをやっているんです?」

 難事件を解決したり、ヤクザと渡り合ったりしているのか。

「うーむ、来る仕事のほとんどが浮気調査だな。世の中の男と女は性懲りもなく色恋沙汰を繰り広げているようだ」

 苦笑いしながら小さなため息をつく。

「そうなんですか……」

 浮気調査とか似合わないよな、この人には。たぶん、重松さんと同じ格闘系の人間だろう。戦いに臨んで生き生きとする性格に違いない。

 俺の洞察は合っているだろう。そうでもなければ、戦いの真っ最中である異世界に連れてくるわけがないよな。


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