表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生、王様になろう  作者: 佐藤コウキ
第2部、アマンダ共和国
103/279

第103話、最後通告


 炎天下、しばらくして帝国軍が姿を見せた。

 荷馬車に鉄板を張ったような戦車が、ゆっくりと進み、その後ろに隠れるように歩兵が続いてきた。その戦車には、長いハシゴがたくさん乗せてある。それを使って崖を登るのか。

 ある程度まで進むと、戦車を引いていた馬を後方に戻してしまった。このような戦いでは馬を活用することができないので、後方に温存するのだろう。

 それから、戦車は人力で押してきた。そして、その後ろからは、長い木の柱を取り付けたような車がやってくる。

「あれは何でしょうかね」

 俺が榎本軍師に聞く。

「投石器でしょうね……たぶん」

 あれで石を飛ばすのか。シーソーの片方におもりを付けて、おもりが下がる力を利用して石を飛ばすやつ。現物は初めて見るな。帝国は攻城戦の機械も用意してきたのだ。

 トルディア王国の城塞都市を攻めるときも使わなかった武器を用意するということは、この戦いは帝国にとって厳しいことを熟知して、その上で準備してきたのだろう。

 榎本軍師は金属製の盾を使うように指示した。帝国が置いていって物は、全て利用するのだ。その盾で飛んでくる石を防ぐことができるかは微妙だが。


 こちらも準備は整っている。

 大きなバケツには熱湯が煮えたぎってるし、敵に落とすための石もたくさん積んでいた。

 また、敵を油断させるために、最初は銃を使わないことになっている。


「まあ、良かったですね」

 榎本さんが重松さんに言った。

「ああ、捕虜は使わなかったようだな」

 そう言って重松さんがあごひげを引っ張る。

「どういうことですか」

 俺が聞くと榎本さんが笑って答えた。

「もしかしたら、大勢の捕虜を前面に出して進撃してくるかと心配していたんですよ」

 そこまでやるかな……いくら帝国でも。

「戦車の前方に捕虜を縛り付けて、こちらが攻撃をためらうようにするかな、と思ったんですが……まあ、良かった」

 榎本さんは本当に安心しているよう。もし、帝国が共和国軍の捕虜を盾にしてきたら彼はどうしていたのかな……。


「共和国軍に告ぐ! 速やかに降伏せよ、されば命だけは助けてやる」

 前に来た大声担当の男だ。本当に岩場に響く声だな。

 榎本軍師がメガホンを持った。

「くどいな帝国も。こちらは降伏する気はない! さっさと攻撃してこい。トルディア王国の防衛戦で帝国の大軍を屠った、この榎本が相手をしてやるぞ」

 榎本軍師の名が出ると、帝国軍に動揺の波が起きた。軍師の名は帝国に知れ渡っているのだ。その心理的な効果も利用したのか、榎本さんは。

「最後の通告だ。命が惜しければ逃げ帰るが良い!」

 その大声担当の台詞を笑ってやり過ごす軍師。やけに自信があるんだなあ。

「ちょっと、返事をしてみますか、佐藤司令官」

 そう言って榎本さんがメガホンを差し出した。

 反射的に受け取ったが、何を言えばいいのやら。

「えーと、俺は、あの……佐藤司令官です、よろしく……。えーと、このオタンコナス共、へそ噛んで死ね!」

 榎本さんがメガホンをもぎ取った。一つ咳払いをしてからメガホンを口に当てる。

「帝国は言葉で戦うのか、早く攻撃してこい! 兵達の超過勤務手当がかさむだろうが。攻めてきたならば、お前達に自分の未熟さを反省する最後の機会をくれてやるぞ!」

 しばらくの沈黙の後、太鼓の音が鳴り響いて帝国軍が押し寄せてきた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ