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「という訳でスノーク領のアリタリア・ノイバン侯爵夫人がショップにいらっしゃることになりました」


なにが「という訳」なのかさっぱりわからないけど

マリアレさんいわくM’s cuteにVIPのお客様が来るらしい


海外セレブ来店しちゃう感じ?やばくない?


最近またいくつかショップLvとやらがあがってお店を拡張し放題だから

バーンとVIP専用ルームでも作っちゃう?


え?違う?

そいうことじゃない?

マナー、服装?言葉づかい?何それ?

今、相当にパーフェクトっしょ?




その日から、マリアレ講師による地獄の合宿がはじまった

新たに泊まりこんでるのはマリアレさんだけで

私らは仕事終わりにガッツリ拘束されてるだけなんだけど


「お辞儀のときは5秒ためて」


「手、ちゃんと前で組んでて」


「ティースプーンの向き、逆」


「高貴な方の後ろに安易に回り込まない」


とにかく決まり事が多くて覚えきれない

そしてマリアレさんむっちゃスパルタ


「今日のところはこれくらいにいたしましょう」


「だはー!私もう無理です。細かすぎですーー」


「それな

もうVIPめんどくさすぎる」


やっと解放されたメイドと私は二人してテーブルに突っ伏した

はじめてメイドと気があった気がする


ここ数日二人はマリアレさんによってフルボッコだ


事務方のマリアレさんがなんで教官役なのかというと


実はマリアレさんは生まれながらに親の決めた婚約者がいるような

そこそこのおうちに3女として生まれた

王都でも有数の有名学校に入学、一流のマナーや教養を身につけるも

なんと!婚約者に結婚直前に浮気され、一方的に破断


「浮気男サイテー」


「本当です!もげればいいのに」


「うふふ、もういいんですよ」


マリアレさんいわく、

その後「ざまあ」とやらをかまして

さらには家を出て、自由に生きる権利を得たらしい


何気に激しくハードな人生だな鬼教官

私ももげるように祈っておくよ



ゴブはというと全ての指示を一度で覚え、

なおかつミスを一切しないという素晴らしい成績を残した


マリアレさんも

「あつかましさを感じさせない流れるような所作と、

生まれもっての貴賓、全てがパーフェクト」

ってべた褒め


そんなに言ったらメイドがあつかましくて下品みたいでかわいそうくない?



ゴブはとっくにマナーのクラスは卒業している


今は夫人に何を話しかけられてもついていけるようにとマリアレさんの私物らしい歴史、文学、音楽、詩集と様々な本を読まされている


何その勝ち組コース!?拷問じゃん




チョコはソファの上で腹を出して寝ている


タルのおっさんにもらったおもちゃがソファの下に放り出してある

遊んでいて寝落ちしたらしい

時折、プピープピーという寝息まで聞こえる


真の勝ち組はお前だったか


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