表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/64

26

せまい店の中はパニックだった


誰かが息をのむ音が聞こえる


ポテトをキメていたおっさんたちがイモをまき散らかしてかけつけ

フレアさんがメラメラと燃える剣をかまえている


自分で求人をかけたはずのメイドはへたりこんでいる





「お座り」

犬ならこれくらいできるだろう


パキパキパキと乾いた音をさせてデカいフレンチブルが腰を落とした

いくつかのイスをまきこんだようだ


「ひぃぃぃ」

あ、ローズさんが引きつけを起こして倒れた


私もわりとショック


仔犬が来ると思ってたし、

ちっさくってかわいいやつかと思ってた


「ちょっとかわいくないし、デカすぎ」


こちらを見つめるフレンチブルがショックを受けたように小さな目をまたたかせた


「どれくらいが、よろしいですか?」


「うーん、抱っこできるくらい?

ゴブだってお散歩行く時、こんなデカいの困るでしょ?」


フレンチブルの体はみるみる間にそのごっつい体が小さくなり、

頭を椅子の座面と並べるくらいになった


つぶれた鼻、真っ黒な目、三角の耳、牛みたいなツノ、あれ?犬ってツノあったっけ?

シッポらしき物を高速で振って上目遣いでクネクネと媚びてくる


ゴブが抱き上げる

よく見るとブサかわと言えなくもない?


「返品、、します?」

ゴブまで上目遣いでせめてくる


わかった

私の負けだ


「しつけはちゃんとして、

お客様にもかわいくご挨拶しなきゃダメなんだからね」


フレンチブルは毛がチョコレート色だからチョコちゃん

何にもひねりがないんじゃなくってシンプルと言ってほしい




結論からいうと、チョコは賢い子だった


お手もお座りもしっかりできる

ゴブや私の言う事はちゃんと理解するし、お客様に吠えたりもしない

ユリアーヌさんやタルのおっさん達にシッポを振ってご挨拶した


これならショップ内でのお出迎えも問題ない


ただ、チョコはメイドの事を格下に見ているらしく

メイドにはお手もせず、シッポも振らない


犬って集団の中で順位付けするっていうからそういう事なんだろう


今日はいろいろ決まったり、新しい仲間が増えたりした


これからもM’s cuteよろしくね!




--

魔剣を持つ手が震えていた

まさか炎帝剣のフレアがこんな所で魂を天に帰すことになろうとは!


メイドが召喚したベヒモスは思った以上のデカさと禍々しさだ

イヤリングの効果でいつも以上の戦闘はできるはずだが

こいつは私達なぞ、その脚をひと払いしただけで退ける事ができるだろう



確かにこの場所には抑止力となってくれる番犬が必要との話になった

けれど、まさかこんな厄災級をすぐに召喚するとは思わなかった


ダンジョンマスターのミカリがあまりにもお気楽そうな人物だから

ダンジョンというのを忘れて油断していた


厄災級を討ち取る事はできずとも、せめて一太刀だけでもーーー





「今日から看板犬になったチョコちゃんです」


ミカリはやはりお気楽なダンジョンマスターのようだ


絶望を予感させたモンスターは本物の犬のほどの大きさとなり

シッポを振りつぶらな目を向けてくる

ミカリが「お客様にかわいくご挨拶してね」と言ったのを忠実に守っているのだろう


「ちゃんといい子にできるじゃん」

そう言われて頭をぐりぐりと撫でられて得意げにしている


はたしてチョコちゃんは戦力にはなっても

抑止力になるかどうかわからないが

とりあえず魔剣をしまおう


そしてまだ

「イスが、イスがぁ、」

とうめくローズを連れて街に帰ろう


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ