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0.プロローグ
クローディス王国、王都クロミア。この地を中心に脈々と受け継がれる英雄譚がある。
それは、力を持つ者がその力のままに壮挙を成していく物語でもなければ、人並み外れた知略を持つ者が権謀術数の限りを尽くして地位を得る物語でもない。一人の英雄が産まれる物語でありながらただ一人のみの活躍が描かれる物語でもない。
一見特筆すべきものを持たぬ少年が、長き道程を経て英雄へと登りつめる物語。
それは、多くの人々に希望を与え、それゆえに長く支持され、不朽のものとなる。
人々はその英雄譚をこう呼ぶ。
――イノセント・クロニクルと。