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第十話『翼ネコとミリアにゃんの裏切りにゃん!』のその②

 第十話『翼ネコとミリアにゃんの裏切りにゃん!』のその②


「でもにゃ、ミクリにゃん。今回は」

「判っているよ。あれだけ居ちゃあ、『正々堂々と一対一で決着を』なんていかないのはねぇ。……んまぁいいや。ここで議論してもしょうがないし」

「うんにゃ。でもって話す相手も間違えているし。ウチも時間のムダと思うにゃ」

「だね。しょうがない。『闘いとはなんぞや?』の件は、……そうだなぁ。あとでミロネ君とでもゆっくり話すとするか。

 でさぁ。これからどうするの? なんか威勢良くこちらに向かってくるけど」

「もちろん、応戦するにゃよ」

「ふふっ。そうこなくっちゃ」

「とはいうものの……、多勢に無勢。今のままじゃあ力尽きるのはこちらのほうが早いのにゃん」

「だろうね」

「そこでにゃ」

「おっ。なんかいい作戦でもあるの?」

「もちろんにゃよ」

 ウチは、にやり、としたのにゃ。見れば敵がここまで来るのには、もちっとかかりそう。にゃもんで急いで円陣を組み、ウチの考えを示したのにゃ。

「……としたいのにゃけれども。どうにゃろうか?」

 ややあって、まずはミロネにゃんが口を切ったのにゃ。

「いいんじゃないか。というよりも今となっては」

 続いてミストにゃんも、

「それしかなさそうね」

 更にはミムカにゃんも、

「無条件に賛成でありまぁす」

 もちろん、ミクリにゃんも、

「なら、それまでは思いっ切り闘えるね。望むところだよ」

 そして……みんにゃがみんにゃ、いまにゃ意見を聞いていにゃい最後の友にゃちへと視線を向けたのにゃ。

「私も……異存はありません」

 こちらもまた、にやり、と意味ありげに微笑んにゃのにゃん。作戦の主役と目されるこの友にゃちは、ある意味、ウチらの中で一番怖ろしい妖精かもしれにゃい。

 かけたピンク色のメガネが、陽射しで、きらり、と光ったのにゃ。

 まるで……ウチの思いに頷くが如く、にゃん。


《有難う、ミアンちゃん。いよいよワタシの出番ね》

《イオラにゃん。あんた、いつの間に、『怖ろしい妖精』ににゃったのにゃん?》

《あっ、そうそう。メガネを貸してくれない?》

《あのにゃあ。ネコのいうことをちゃんと聴きにゃさい》


 敵は目前にまで迫ってきたのにゃん。

「にゃんとも、うるさいことにゃん」

 どどどどどっ! どどどどどっ!

 ぎゅうぅぅん! ぎゅぅぅぅん!

「にゃごおぉぉっ!」「にゃごおぉぉっ!」

「にゃおおぉぉん!」「にゃおおぉぉん!」

 大地を踏破する音や大空に響き渡る飛翔音に混じって、ネコの雄叫びまで聞こえてくる。これはもうほとんど災害に等しい騒音にゃ。

『ダメにゃろうにゃあ』と思いにゃがらも、一応尋ねてみたのにゃ。

「にゃあ、ヤカンにゃん。あれって、にゃんとかにゃらにゃいのにゃん?」

「えっ?」

 いつの間にやらヤカンにゃんの両耳が、ふわり、とした丸いもんに包まれていたのにゃ。

(あれのせいでウチの声が聞き取りにくかったのにゃん)

 防音対策かにゃんかは知らにゃいのにゃけれども、これでは会話が成り立たにゃい。にゃもんで、ぐいっ、と右耳のほうを上げて外したらにゃ。

「きゃ! うるさいわん!」といって、また元に戻してしまったのにゃん。

「ダメ以前にゃ」

 ウチは諦めるしかにゃかった。


《これならどうかしら? ミアンちゃん》

《ワタアメとはにゃあ。で? 防音効果はあるのにゃん?》

《あっ。…………すぅっかり、忘れていたわぁ》


 やかましかろうがにゃんであろうが、今は闘うしかにゃい。にゃもんで、

「みんにゃあ、行くにゃよぉ!」

 おおぉぉっ!

 めざすは自由への扉、と、こちらも一斉に雄叫びにゃん。

 たったったったったっ! たったったったったっ!

 ぱたぱたぱた! ぱたぱたぱた!

 こうしてウチらもまた、敵の群れへと突進して行ったのにゃ。


《やめてぇ! みんな、ワタシの為に争わないでぇ!》

《にゃにそれ?》

《別に。ただいってみたかっただけ》


 翼ネコ軍団VS(ミーにゃんの居にゃい)ミーにゃん同盟軍。

 戦いの火蓋は切って落とされ、両軍、激突にゃあ!

 ……とかにゃんとかいっちゃって。ぶふっ。

 でもって、どうにゃったかといえばにゃ。


《あら。仰々しいセリフで壮絶な戦いを匂わせたのは出だしだけ? あとは尻すぼみ?》

《面目にゃい。ネコには、あれで精一杯にゃったんよ》


 ずばん! ずばん! ずばん!

 一斉に開かれた『にゃんご』らの口。中から飛び出してきたのは、ネコ目を引かずにはおれにゃい代物。にゃんと、大広間で食べたシュークリームにゃん。それがまるで弾丸のように、ぽんぽん、飛んでくるのにゃ。

 ぺちっ。べちっ。べちっ。

 どのにゃんごも狙い定めず、やみくもに、やたらめったらと撃ってくるのにゃ。それでも数の多さがものをいって、といったとこにゃろう。次々とウチらの身体や顔面に命中。シュー皮まみれ、クリームまみれとにゃっていくのにゃん。

 ずぽっ。

「ふがっ」

 まるで狙ったかの如く、ストレートに口の中へ。にゃもんで思わず……、

 にんまり、と笑みを浮かべてにゃ。

 むしゃむしゃむしゃ…………ごっくん。

 有り難く頂いたらにゃ。予想にゃにしにゃかったサプライズに遭遇にゃん。

「にゃ、にゃんと!

 大広間で食べた物よりも、はるかにグレードの高い美味しさじゃにゃいのぉ!」

 おかげで食べ終わったあとでもにゃ。お口いっぱいに拡がる快い余韻が、『お楽しみはこれからにゃよぉ』とでもいうように、感動を与え続けてくれるのにゃん。

 薄い黄土色? にゃシュー皮も、ふんわりふわふわで美味にゃのにゃけれども、感動の大本はにゃんといってもクリームにゃ。地上から発射されたシュークリームの中身は茶色にゃチョコレートクリーム。でもって、空からのは真っ白にゃバニラクリームにゃ。異にゃる二つのクリームが相乗効果をもたらしてにゃ。シュークリームの美味しさををいやが上にも高めているのにゃん。にゃもんで、知らず知らずのうちに足をとめて身体をナメナメしまくっている有様にゃん。


《ミアンちゃんって、こと食べ物に関してはうるさいわね》

《うんにゃ。クリームのにゃいシューにゃんて》

《まるで、お宝を一つ残らず持っていかれた、空の宝箱のよう……なぁんてね。

 ああでも……、宝箱って、それ自体にも値打ちがあるのかしら?

 ねぇ。ミアンちゃんはどう思う?》

《イオラにゃん。『ああでも』以降は余計にゃ》


 夢中で『ナメナメ』している間も、ぶつけられ続けていることに変わりはにゃいのにゃ。

「どぉお? 翼ネコ軍団のシュークリーム弾の威力は?」

 上のほうから自慢げにゃヤカンにゃんの声が聞こえてくるのにゃけれども、もはやそれに構っている暇はにゃい。

(おにょれぇ。このままではお腹がいっぱいににゃってしまうじゃにゃいの)

『もう食えにゃい』『身動きも出来にゃい』とにゃっては、ちと困るのにゃ。にゃって、『闘えにゃい』と判定されれば、その時点でこのミッションは失敗、終了とにゃるのに違いにゃいもん。

(にゃにがにゃんでも、それは避けねばにゃ)

 危機感を覚えたウチ。迫りくるシュークリームを断腸の思い……実体波の身体にゃから断腸もクソもにゃいのにゃけれども、まぁそれほどつらかったということにゃん……で、口が届きそうにゃ範囲は食べ、それ以外は、『もったいにゃいにゃがらも避けて』との選別を繰り返したのにゃん。生まれにゃがらの食い気に自制を求めるのにゃもん。心に葛藤が生まれるのもやむを得にゃい。悩まされ、そして、抗いつつ、『にゃんご』らへと、ウチは仲間とともに襲いかかったのにゃん。


《今回は『にゃんごとの戦い』というよりも、むしろ、『自分自身との闘い』にゃん》

《自制もしすぎると、欲求不満が高まるばかりよ。ほどほどにね。なんといっても、今は霊体の身なんだから。心が乱れれば身体にだって異常をきたすわ。忘れないでね》

《うんにゃ。イオラにゃんの二の舞いにゃけは避けたいものにゃ》

《あら? それってなんのこと?》

《いつにゃったか、すっごく、ぷんぷん、しててにゃ。巨大四つ足獣とにゃって暴走しまくった挙句が、勢い良くイオラの木に、というか、自分の木に激突したにゃろう?

 あん時、ウチもミーにゃんも、イオラにゃんさえも、身体が消えそうににゃったじゃにゃいの。後にも先にも、あれほど、びびったことはにゃかったのにゃん》

《ああ、あれね。そうそう。ワタシ自身、滅びるかと思ったもの。

 エラいわよね。さっすがはワタシが宿った木。不満も怒りも全て受け留めてくれて、しかも倒れないとくる。感謝感激雨あられ。有難うございます。宿主様ってとこかしら》

《そういえば、イサベラにゃんに怒られていたにゃ》

《あの子はイオラの花の長姉。ワタシの霊体本体に直結しているから、普段は花として咲いていても、いざとなれば、妖精へとその身を変えられる。次女のミーナちゃんをはるかに超える力をも発揮する。状況次第では、ワタシに代わって精霊の力を振るうことだってね。まさに、ワタシたちの切り札、といってもいい存在なの》

《うんにゃ。ウチも知っているのにゃよ》

《あの時、ワタシたちが助かったのだって、イサベラちゃんがイオラの木と同調してくれたから。『倒れてはダメ』って、あらんかぎりの力で踏ん張ってくれたからこそ、だもの。怒る権利はあるわ。とはいえ……ふぅ。まさか、あんなに説教好きだったなんてね。

『宿主を壊してどうするの!』って、そりゃあもうさんざん》

《でもにゃ。イサベラにゃんが咲いている時期にゃったから、セーフにゃったんよ。もし、枯れて落ちてしまったあとにゃら……》

《そうね。花の命だから、寿命はすっごく短いの。だから、花が落ちてから、次につぼみが出来るまでは、ワタシもアホなことは慎んでいるのよ。

 でもどうしてなのかしら。花が咲いた、っていうか、イサベラちゃんが目覚めた途端、『たが』がゆるんでしまうのよねぇ。だから怒りに任せて、自分の木に、ずどぉん、と》

《やってしまったわけにゃ。そういえば……、にゃんで怒っていたのにゃん?》

《それは内緒の話よ。ごめんなさいね。でもまぁ長々とお説教を食らったおかげでワタシも大いに反省したわ。もうこりごりよ。

 あれ以来ね。イサベラちゃんが居ても居なくても、ムチャをやらなくなったのは》

《老いては子にしたがえ、にゃん?》

《そうそう。老いては子に……。あらイヤだ。ワタシったら、なんてことを口走ろうとしたのかしら。ミアンちゃんの言葉に釣られてつい、ではあるのだけれど、それにしたっておかしいわ。あり得ないわ。自分が信じられないわ》

《にゃにひとりで混乱しているのにゃん?》

《このワタシが、天空の村の守護神とあろう者が、一世一代のアヤマチを冒そうとしたのよ。混乱もするわよ。

 ねぇ、ミアンちゃん。この場だけでもいいから、『若くして子にしたがえ』もアリ、ってことにしてくれない? お願い。それで全てが丸く収まると思うの》

《切羽詰まった顔でわけの判らにゃいことを哀願されてもにゃあ》


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