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第七話『ネコーターで走るのにゃん!』のその⑦

 第七話『ネコーターで走るのにゃん!』のその⑦


「ふぅ。なんとか黙らせたわん」

 一つの身体の中で二つの心が闘っていたみたいにゃ。ほっ、としたようにゃ感じで喋っている様子からも、ミーにゃんがぎりぎりまで抵抗したのが伺えるのにゃ。

(にゃんとも悔しいのにゃあ)

 ウチはゴールで、ミーにゃんはヤカンにゃんに勝って、と二重の喜びを迎えられるかも、と密かに期待していたにゃけに残念至極にゃん。

 ヤカンにゃんがミーにゃんの目をこちらへ。ウチと視線が合ったことで気持ちを切り替えたのにゃろう。ちぃとばかし上から目線にゃ顔と口調で、『約束は忘れてはいないわん』と言葉を続けたのにゃん。

「勝利者には奇っ怪霊獣と闘ってもらうわん。……と、その前に」

 ぐらぐらぐらっ! ぐらぐらぐらっ!

 突如、道路がゆれ出したのにゃん。にゃにごとかと思案する間もにゃく、路上の至るところに亀裂が走り、そこから海水が溢れ始めたのにゃ。

「沈没してしまうにゃん」

 ウチはネコーターにまたがった格好で、こわごわ、じぃっと成り行きを見守ったのにゃ。

 ががぁん! ざぶぅん! ががぁん! ざぶぅん!

 哀れにゃる道路。『使い捨て』との言葉がぴったしに、砕けては沈み、を繰り返し、あっという間にほとんどが海の底へと沈んでしまったのにゃ。

 ぷかぷか。ぷかぷか。

 もはや大海原にあるのは、まるで切り取られたかのようにほぼ丸い形で残った道路にゃったものの残骸と、その上に足を下ろした、ウチが乗る『1』番のネコーターのみにゃ。

「これからどうにゃるのにゃろう」

 不安がよぎるウチの耳に、ヤカンにゃんの声が届く。

「舞台は整ったわん。それじゃあ、いよいよ、闘いの始まり、といくわん。

 出でよ、奇っ怪霊獣『ナミガシラ』!」

 ざざざざああぁぁん!

「あれは……」

 目に映る光景にしばし唖然としてしまうウチ。やっとのことで口にしたのは。

「にゃあ、ヤカンにゃん。『ナミガシラ』ってもしや?」

「そう。大波なのわん!」


《だったら、『なみかしら?』でもいい気が》

《シャレてる場合じゃにゃいんよ》


 ぐぐぐぐぐっ!

 奇っ怪霊獣『ナミガシラ』にゃんが攻撃を開始したのにゃん。遠くのほうで発生した波の高さは、こちらへと近づくにつれ、どんどん大きくにゃっていく。さにゃがら周りの海水を呑み込んでいるようにも見え、にゃかにゃかの迫力……って眺めている場合じゃにゃいのにゃん!

 ざぶうぅん!

「ふわんにゃあ!」

 砕けた波頭。直撃にゃけは免れたもののにゃ。白い泡飛沫と化した波を被ってウチはずぶ濡れ。それでも、『木の葉のように流されてにゃるもんか』と道路に蹲らせたネコータに必死でしがみついていたのにゃん。

(これはナミガシラにゃんの脅威を見せつけるデモストレーションに違いにゃい。

 恐らく次こそはウチを狙って……にゃら、望むところにゃん!)

 土壇場に来て怯むウチではにゃい!


《そうなの?》

《そうにゃんよ》

《本当の本当に?》

《…………あのにゃあ。イオラにゃん、もうその辺で勘弁にゃ》

《ふふっ。はいはい。他ならぬミアンちゃんのお頼みとあれば》


「このままむざむざとやられるわけにはいかにゃい!

 ミーにゃんを元通りにする為にも。仲間にゃちの犠牲に報いる為にもぉ!」

 血が滾る思い、とはまさにこのこと。いつしか言葉とにゃって口から吐き出されていたのにゃん。

 ひょい。

 ウチはネコ人型モードでネコーターの座席に立つ。

「迎え討つはナミガシラにゃん!」

 両腕を組み、じぃっと前を見据えたのにゃ。

 再び波が高くにゃっていく。どんどんどんどん。

「さっきよりも大きいにゃ。ぶふふっ。よぉし。望むところにゃん!」

 両腕を前に伸ばして、全身の霊力をひたすら肉球に集中にゃ。

(どんにゃ力にも対応出来るよう、ぎりぎりまで溜め込まにゃいと)

 波が砕ける様子はにゃい。ついにはウチの背丈よりも何倍もでっかい巨大波とにゃって、目の前にまで迫ってきたのにゃん。波頭を見れば、まるでウチを睨みつけてでもいるかの如く、その矛先をこちらへと向けているのにゃん。

 まさに威圧せんとばかりの迫力。……しかしにゃがら。

「この時を待っていたのにゃあ!」

(唱える霊呪は……これにゃん!)

 ウチはためらうことにゃくいい放つ。

「ネコネコ反射あぁっ!」

 ずばばばぁぁん!

 襲いかかろうとした大波。でもにゃ。ウチの放った反射波の抵抗に遭うと、まるで引っぱたかれたの如く一瞬で方向転換。向こう側へと倒れ、砕け散ってしまったのにゃん。

「ほっ。上手くいったにゃあ」

 ネコネコ反射は相手の力をそのまま相手へとはね返す。『ネコダマ』に次いでウチが得意とする霊呪にゃ。

 このまま『ウチの勝利にゃあ!』と叫べれば、『ばんばんざい』にゃったのにゃけれどもぉ……。いやはや、現実……ここが現実かどうかは疑問のあるところにゃのにゃけれども……は、そんにゃに甘くにゃい。むしろ、ここからが始まり、ともいえるのにゃ。

 ぐぐぐぐぐっ!

 懲りもせずに再びナミガシラにゃんは大っきくにゃっていく。目の前まで迫ってきたとこで、ウチは『ネコネコ反射』にて砕く。これの繰り返しにゃ。いわば無限ループかメビウスの輪にでも陥った状態。

(でもにゃ。始めあれば、終わりもあるのにゃん)

「はぁはぁはぁ。攻撃がやむ気配は……はぁはぁはぁ……一向にみえにゃいのにゃん」

 力が尽きかかっている。自然と弱きにもにゃってくる。

(ウチは、あと何回撃てるのにゃろうか……)


《三回?》

《それって決まりにゃの?》


「良ぉく辛抱したわね」

「感動でありまぁす」

「たいしたもんだ」

 頭上から声が。見上げたウチの目に映ったものは。

「ミストにゃん! ミムカにゃん! それにミロネにゃんも!」

 心喜ばせる面々にゃ。現われてくれた。それにゃけで、力が漲っていくようにゃ気すらするのにゃん。

 ぱたっ。ぱたっ。ぱたっ。

 いずれもがウチのそばへ。ネコーターの背中へと降り立ったのにゃん。

「見たところ、脱出出来たのは翅人型ばっかみたいにゃのにゃけれども」

 そう尋ねたらにゃ。ミロネにゃんが言葉を返してきたのにゃん。

「ネコ型もみんな無事だ。しかし……、

 浮かんではいるのだが、ネコかきで泳いでいることもあって波が来るたびに後退をよぎなくされている。『アレ』を倒さないかぎり、ここへは来られないだろう」

「そうにゃの……」

 しゅん、とするウチ。

「助けようとしたんだが、ミクリ殿もミリア殿も異口同音に、『自分は大丈夫だから、早く貴殿のところへ行ってくれ』というのでな。こうしてオレたちだけでやってきたんだ」

「ふたりが……。ありがたいことにゃん」

 会話の間も、ナミガシラにゃんは大っきくにゃって迫ってくる。にゃもんで焦りを覚えずにはいられにゃい。……ところがにゃ。

「安心して、ミアン。『アレ』も、もうじき終わるわ」

「終わるって……どうやってにゃん?」

「ここで休んでいて。あとはわたしに任せなさい」

 ぱたぱたぱた。

 いかにも、自信たっぷり、といった調子にゃ。ミストにゃんは再び大っきくにゃりつつあるナミガシラにゃんへと向かって羽ばたいていく。

「大丈夫にゃろうか」

 ウチの呟きに、傍らに居るふたりはこういい放ったのにゃん。

「ミアン殿。彼女を誰だと思っている?」

「心配ありませんです。大船に乗った気でいいと思いますですよ」

 どちらの言葉も、ウチの『半信半疑』を吹っ飛ばし、勇気を与えるのに十分足る力を秘めていたのにゃん。


《ぶふっ。大海原だけに大船なのね》

《注意を引くのはそこにゃの?》


 ざざざざぁっ!

 高くにゃっていくナミガシラにゃんの背丈。それを目の当たりにしにゃがらも、怯むことにゃく湾曲した水壁へとまっしぐらに突き進む戦士がひとり。

「いくわよぉ!」

 ずぶっ。

「にゃ、にゃんと!」

 こともあろうに波の中へと突っ込んにゃのにゃ。

(ミストにゃん……)

 にゃんの策もにゃく、あんにゃ真似をする幼児ではにゃい……にゃあんて頭では判っていてもにゃ。いざ、こうして姿が消えてみると、どうにも心配でにゃらにゃいのにゃん。


《まるでお母さんね。ワタシも呼んじゃおうかしら。

 お母様ぁっ!》

《イオラ。わらわを呼んだか?》

《ぎょっ! 銀霊お母様っ!》

《……にゃあ、イオラにゃん。にゃんでウチの後ろで縮こまっているのにゃん?》

《癖なの。てへっ》


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