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プロローグ『一気に解決! お悩み相談室にゃん!』のその②

 プロローグ『一気に解決! お悩み相談室にゃん!』のその②


「はぁい!」

 行列の先頭が、さも張り切った様子で前足をあげたのにゃ。

 でもって、

 びゅうぅぅん!

「ふにゃん!」

 瞬きする間もにゃくウチの真ん前に。にゃんという目にもとまらにゅ動きにゃろう。一陣の風とともに現われた、にゃんてお上品にゃもんを軽くすっ飛ばす、瞬速の早技、いや、神技にゃ。と、ここまでにゃら格好良かったのにゃけれども……、今はちゃぶ台にうつ伏せの上半身をべたぁっ、と張りつけてにゃ。目を白黒させているのにゃん。

(アホにゃん)

 神技とアホとの芸術的コラボを披露してみせたのはいうまでもにゃくミクリにゃん。ややあって、わずかにゃがら頭を上げたのにゃ。

「ボクが一番だからね。はぁはぁ。でもちょっと待ってね。はぁはぁ」

 息を弾ませにゃがら、自分の用件が済むまではてこでも動かにゃいとの断固たる意志表示をしているのにゃ。これ一つとっても、ミーにゃん同盟の仲間うちで一番行動力がある妖精にゃと判ろうというもの。ついでにいえば、声も一番大っきいのにゃん。

 ミクリにゃんはネコ型妖体。真っ正面から見ると、頭の縦半分を境に左側が青、右側が赤の毛並みにゃ。力を使う時は赤。技を使う時は青と、全身がどちらか一色に染まるという特異体質にゃん。『勝つ者、強い者が正義』の思想があるのかどうかはともかく、『ええいっ! 当たって砕けろぉっ! お釣りは要らないよぉっ!』とばかりに行動が直進的。この判りやすい性格が魅力といえば魅力かもにゃ。

(……にしてもにゃ。目と鼻の先に居るっていうのに、にゃにも息咳切って駆け込まにゃくてもにゃあ。まぁミクリにゃんらしいといえばらしいのにゃけれども)

 やがて呼吸も静まり、ちゃぶ台を挟んでウチと向かい合ったのにゃ。前足を立てて後ろ足を折り畳んでと、いかにも相談者らしい行儀の良いお座りでにゃかにゃかよろしい。ちにゃみに、こちらはというとにゃ。ちゃぶ台に肘をついて、もたれかかっている格好にゃ。だらしがにゃい、と思うにゃかれ。相談の相手が多数とにゃれば、これくらいは大目に見てもらいたいものにゃ。ちゃぶ台の上で寝そべりにゃがら、話を聴こうとするミーにゃんに較べれば、はるかにまし、と思うのにゃん。


《答えるのはミアンちゃんなのよね?

 話を聴くだけなら寝そべっててもいいんじゃないかしら》

《かもにゃ。

 ウチと会話しにゃがら寝そべっている御仁がそういうのにゃら》

《失礼ね。これは更年期……ううん。なんでもないわ。なんでもないの》


「それで? ミクリにゃんの悩みごとってにゃんにゃの?」

「ミアン君」

 にゃにを思ったのにゃろう。ミクリにゃんは前のめりの格好でもって、左右の前足の間にウチの前足二つを挟んで、ぎゅうぅっ、と力強く握り締めたのにゃ。

「正々堂々と闘おう!」

(ふにゃん?)

「あにょぉ、それって?」

「知り合ってから大分経ったし、ここいらで雌雄を決したらどうかと思ってね。

 どうだい? 君がその気なら今直ぐにでも」

「ミクリにゃん…………。

 残念にゃがらミクリにゃんのご要望にはお応え出来かねるのにゃ」

「えっ。どうしてさ?」

 相談相手は意外そうにゃ。

「あんたは活気のある男の子。一方、ウチはかよわい女の子にゃもん。雌雄、つまり、オスメスは既に決している。にゃもんで残念にゃがら却下にゃ」

「そんなぁ! 今日という日を楽しみに指折り数えて」

(ネコが指折り数えて、どうするのにゃん?)

 未練がましい顔も言葉も、すぱぁっ、と切り捨てるのにかぎるのにゃ。

「はい。これにて解決にゃん」

 こんこん!

 これは一つの相談が終わったことを示す木づちにゃん。


《ええと……、あら、指が折れるわよ。ほら、ぽきぽき、って》

《にゃにウチの前足を弄んでいるのにゃん?》


「お次の方ぁ!」

「はい」

 続いて手と声を上げたのはミロネにゃん。後姿に寂しさを滲ませにゃがら去っていくミクリにゃんとすれ違う形で、戸惑いの表情を顔に浮かべにゃがら近づいてくるのにゃ。

(これは強敵かもしれにゃい)

 ミーにゃん同盟にかぎらず、ウチが知っている翅人型の中でもとにかく飛翔力抜群の妖体にゃ。逆をいえば、それ以外に秀でたところは……ううむ。にゃいとはいえにゃいのにゃけれども、あるともいえにゃいにゃあ。難しいところにゃ。ウチはネコにゃもんで、難しいところは一先ず置いといて、じゃにゃくて、忘れといて。

 ミーにゃんが『箱入り娘派』にゃら、こちらはさしずめ、『野戦派の男の子』といったところかもにゃ。おんにゃじ翅人型ではあるものの、見た目の印象はだいぶ異にゃる。髪は白色で、あご辺りくらいまでの長さ。前髪を三つに分けて、真ん中の髪先は鼻に少しかかるくらいのところで、くるんと左に。身体は褐色。翅と霊服はともに、緑、紺、茶色のまだら模様。一見、アウトドア派に見えにゃくもにゃい姿の中で唯一、印象を裏切っているのが顔立ちにゃん。インドア派を思わせる翳りと真面目さがどこはかとにゃく漂っているのにゃ。

 ついでにいえば……、ミーにゃんの『可愛い』に対し、ミロネにゃんは男の子にゃのに、はっ、と息を呑むほどの『綺麗』。おんにゃじ幼児、おんにゃじ背の高さでこうも違うかと、妖体というものの奥深さを感じ入った次第にゃん。

(ミロネにゃんの悩みとはにゃあ。にゃんとも難しそうにゃ。ウチの手に余るかも)

 困った時のにゃんとかで、隣に居るミーにゃんを、ちらっ、と覗いてみたのにゃ。するとにゃ。どうしたわけか、両目が瞑られているじゃにゃい。しかも不自然にゃ瞑り方にゃ。上下のまぶたが、ぎゅうっ、と圧し合っているのに加えて、まるでけいれんでもしているように、その周りが、ひくひく、と動いているのにゃもん。

(おネムのフリにゃろうか。困ったもんにゃ)

『はい、パス』と宣言したいところにゃけれども、折角、打ち明けに来てくれたのにゃ。

(一応、聴くにゃけは聴こうにゃん)

 そう腹を決めて促すことに。

「で? ミクリにゃんはどんにゃ悩みごとにゃのにゃん?」

「なんといったらいいのか……実は……取り留めのないような質問なのだが……」

「構わにゃいのにゃ。いってみにゃさい」

 少しためらっている風。それでも意を決したのにゃろう。口を開いたのにゃ。

「オレはなんの為に生きているのだろうか?」

 聴いた途端、ウチは、ほっ、としたのにゃ。

「にゃあんにゃ。そんにゃことにゃの」

「判るのか?」

「当たり前にゃ。ネコでも判るのにゃよぉ」

「ほぉ。なんとなくお気楽すぎて、返って聴くのが怖いが……。

 まぁ答えられるというのであれば、教えて貰おうか。

 それで? なんの為だ?」

 ウチは、さらり、といってのけたのにゃ。

「食べる為にゃよ。決まっているじゃにゃいの。ウチもそうにゃもん」

 ミロネにゃんにとって予想外の答えにゃったの違いにゃい、あっけにとられたようにゃ表情を浮かべたまま、しばし沈黙の時が流れたのにゃ。……そして。

「そうか。確かにそれも一理あるな」

 ひとりごとのようにゃ呟き。でもにゃ。特に反論もにゃいみたい。

(にゃらばっ)

「はい。これでおしまいにゃん」

 こんこん!


 ミロネにゃんが席から離れた。その気配を察したのにゃろう。ミーにゃんがこっちを振り返ったのにゃ。『やっぱおネムのフリにゃった』と思って顔を見たら、にゃんと、目がきらきら。しかもにゃ。感動に震えた様子で話しかけてきたのにゃん。

「すっごいわん、ミアン。快刀乱麻な切れ味で、次々とお悩みを解決していくじゃない。

 さぁすっがは親友。アタシの出る幕なんて、これっぽっちもないわん」

「いやあ、それほどでも……あるかもにゃあ」

 にゃあんか照れくさいウチにゃのにゃん。


《ワタシも綺麗》

《……どの姿のことをいっているのにゃん?》


 俄然、自信を持ってしまったのにゃ。

「さぁどんどんいくにゃよぉっ。お次の方ぁ!」

「はぁい、でありまぁす!」

 ぱたぱたぱた! ぱたぱたぱた!

 ぱたっ。

 空を駆ってウチの目の前に下りてきたのは、一見、翅人型とも見てとれる妖体で、名前はミムカにゃん。自称『森の妖精』にゃ。

 この友にゃちこそ、ネコ型、翅人型、ぐにゃぐにゃ型、のいずれの姿をも持つ変態、じゃにゃい、多様型霊体にゃのにゃん。今は翅人型の姿で髪は黄色。後ろ髪は首の付け根辺りぐらいまでの長さ。左右の横髪は肩の手前ぐらいまで真っ直ぐ伸びている。でもって前髪は眉毛辺りまで。どの髪先もハネているのが特徴といえば特徴にゃ。身体はネコ型の時とおんにゃじ白地に黒の縞模様。霊服と翅は逆に黒地に白の帯が絵柄のように走っているのにゃ。

 ミムカにゃんはくりくりとした目に相応しく、好奇心が旺盛みたいにゃ。自分が興味を持ったにゃら、ところ構わず突っ込む傾向がある。当然、燥ぎ回るのにゃって大大大好きみたいにゃ。感情を表に出したがるところから察するに開けっぴろげにゃ性格にゃのかも。表現の仕方がいささかオーバーにゃのは、この性格が起因しているとも考えられる。怖がったり驚いたりしていても、実際には見た目の半分ぐらいと考えたほうが良さそうにゃん。

 霊体としての実力をいうにゃら、相当にゃものらしい。あの負けず嫌いのミーにゃんでさえ、『翅人型の時であれば頭や力、それに技、顔の器量までもがアタシと伯仲の実力を持つわん』と大絶賛。『アタシの最大のライバル』といわせしめるほどの相手にゃん。にゃら、張り合ってばかりかというと、とぉんでもにゃい。ふたりの仲って、ものすっごく良いのにゃん。精霊の間に来た時にゃんぞ、『しめしめ。今日はのんびりとおネム出来るのにゃん』とウチが大喜びするくらい……ごっほん。じゃにゃかった。ウチが……ええと、ええと……そうにゃ、嫉妬するぐらいにゃん。


《ふたりの隣で気持ち良さそうにおネムしていたじゃない》

《嫉妬するとにゃ。人間はイライラ。ネコはおネムに誘われるのにゃん》

《本当に?》

《ネコのいうことにゃ。真に受けにゃいでにゃ》


「ミムカにゃんにもお悩みはあるのにゃん?」

「はい。実は、大変困ったことが起こりましたですよぉ」

 いつににゃく真剣にゃ面持ち。にゃもんでミーにゃんも気ににゃったのにゃろう。寝そべるのはやめて、正座で身を乗り出したのにゃ。

「ミムカは今、ほら、あそこ、沼の中を棲み家としているのでありますですが……」

「ふむふむ」

「地形が脆くなっているとかで、近々、沼の妖精たちが改修工事をやろうとしているみたいなのでありまぁす」

「まぁそういうこともあるのにゃろうにゃあ」

「ここからが大変なのでありますですよ」

「というと?」

「ミムカの棲み家へ大挙してやってきましてですね。『つきましては危険もありますので、当分の間、立ち退きをお願いします』っていわれたのありまぁす。抗議したくても、こちとらは居候の身。とどのつまりが、体よく追い出されてしまいそうなのでありますよぉ」

「ってことはにゃ。遠からず、『宿にゃし』とにゃるのにゃん?」

「そうなのでありまぁす。で、質問なのでありますがぁ……、工事の間だけでもいいでありますから、どこかご厄介になれる居心地のいい場所はありませんですかねぇ?」

「と急にいわれてもにゃあ」

(これは、ちと難問にゃ)

 ムダと知りにゃがらも、一応、尋ねてみたのにゃ。

「にゃあ。ミムカにゃんは常日頃から自分のことを『森の妖精』ってのたまわっているじゃにゃいの」

「それは……事実でありますですから」

「にゃったら、どこでもいいんじゃにゃいの?

 自分が、『ここら辺がいいにゃあ』と思ったら、その場を管理している霊体にゃんに、『自分は森の妖精にゃん。しばらくの間、住まわせてくださいませにゃん』と頼み込めば。それでお宿はばっちし確保出来るにゃろう?」

「それが……、前にもやったことがありますですが、『森の妖精』って知名度が低いのでありますよぉ。『なにそれ?』って突っ込まれておしまい。相手になんかされないのでありまぁす」

 明らかに間違えているのにゃ。低いんじゃにゃい。にゃいのにゃ。

(やっぱ、『自称』じゃダメみたいにゃ)

「ううんとぉ。にゃったらぁ…………そうにゃん!」

 ウチは、ぴぃん、と閃いたのにゃ。

「にゃあ、ミーにゃん」

「うん? どうしたわん?」

「どうにゃろう? ミムカにゃんを『精霊の間』に泊めるっていうのは?」

 精霊の間は、イオラにゃんとミーにゃん、そしてウチの棲み家でもある空間にゃ。

「ほら。ずぅっ、と前にも何日か泊まったことがあったにゃろう?

 あん時は半ば強引にゃったけれども、にゃかにゃか楽しかったじゃにゃいの」

 ウチの親友も覚えていたみたいにゃ。

「そういえばそんなことがあったわん。

 ずいぶんと賑やかになって、イオラも満足そうだったわん」

 ミーにゃんも俄然乗り気ににゃったみたい。ミムカにゃんに向かって、にっこりと微笑んにゃのにゃ。

「ミムカはアタシのところへ来るといいわん。イオラにはアタシからも頼んであげる。きっと、大賛成の大喜びだと思うわん」

「ミーナ…………ぐすん。有難うでありまぁす!」

 よっぽど、嬉しかったのにゃろう。ミムカにゃんは涙目にゃ。

「良かったにゃあ。ミムカにゃん」

 ミムカにゃんの絡ませた両手をミーにゃんの両手がそっと包み込む。互いを見つめる顔と顔。どちらの笑顔も、ふたりが単にライバル同士というにゃけではにゃく、仲良し好良しの間柄であることを物語っていたのにゃ。

(これこそ感動の解決にゃあ)

 こんこん!

「これにて一件落着にゃん!」


《あら、ひとり増えるのね》

《あら、って……。ミーにゃんから話は?》

《遊びに来る、ぐらいかしら?

 まっ、来る者は拒まず。どんといらっしゃい。長期滞在も可よ》

《あさってぐらいには来たいそうにゃ。イオラにゃん。大丈夫にゃん?》

《ワタシのほうは、いつでも大歓迎……あっ、そうそう。

 だったら早速、大掃除をしなくっちゃ。

 ミアンちゃんも手伝ってね》

《いきにゃり、おママさんとにゃったにゃ》


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