07 光の入団試験
「入団希望者はこちらに集まれ!」
大聖堂の門をくぐると、鎧を着ていない者たちはすぐさま呼び集められた。
募集遠征で各地から集められた新人たち。
僕もその中の一人だが「入団希望者」などと呼ばれると何とも釈然としないものだ。
カレンさんやベサージュ小隊長とはとっくに別行動となって、二人ともどこぞへと行ってしまった。
彼らも勇者なり小隊長なりとしてのお勤めがあるのだろう。
「いいかヒヨッ子ども! 光の御許によく集まった! 今日から貴様らも誇り高き光の教団の一員だ!!」
と新人たちに呼びかけるのは、やたらと暑苦しい禿頭のオッサンだった。
何かが既に始まっている。
「しかし! 一口に光の教団と言ってもその職務は様々だ。光の女神様に祈りを捧げる神官。その神官の身の回りのお世話をする者。そして教団の武力、極光騎士団に属する光騎士! 大方そんなところだが、そうそう……!」
禿頭のオッサンは「これから面白いことを言うぞ」とばかりに口調を勿体ぶる。
「この中で、光の勇者を目指すというヤツは、悪いことは言わんから早めに諦めとけ。現役の勇者たるカレン様を超える者など、向こう三十年は現れんだろうからな!!」
ドッとそこに集う群衆から歓声が起きた。
「余談はさておき。……ヒヨッ子の貴様らには試験を受けてもらう。何、難しいことなどはしない。コイツを使うだけだ」
と言ってオッサンは、何かを手に持って掲げた。
僕の位置からは遠くてわかりにくいが、何か板のようなものだ。
「これは属性盤と言って、貴様らの属性を計るための道具だ。この世界にあるものはすべて、それを創造した五大神のいずれかの加護を受けている。地水火風、そして光の五属性だ」
オッサンが持つ板をよく見ると、それは綺麗な五角形になっており、その五つの隅にそれぞれ地水火風光、五大神のシンボルが刻んであった。
「この属性盤を人がもつと、中央に備え付けられた針が地水火風光のシンボルいずれかを示す。指されたシンボルがソイツの属性というわけだ。我ら光の教団は、当然光属性をもつ者を歓迎する。属性盤の針が光属性を示した者は、無条件で極光騎士団入りだ!!」
という説明の後、実際に試験が行われた。
入団希望者は一列に並ばされて、順番に属性盤を握る。
「風属性! 不合格!」「水属性! 不合格!」「光属性! 合格!」
そんな声が、大聖堂内広場に響き渡った。
そんなこんなしているうちに僕の番。あの禿頭オッサンの顔が、すぐ目前へと迫ってきた。
「貴様、クロミヤ=ハイネだな?」
「え? そうですけど、何で僕の名を?」
「まあいいさ、とにかく握ってみろ。ん?」
とオッサンは五角形の板を、僕に向けて差し出す。その時属性盤の針は、光のシンボルを左にややずれた位置を指していた。
恐らくそれが、このオッサンの属性なのだろう。
「そうそう、オレ様は極光騎士団のグレーツ中隊長だ。貴様が騎士団入りすれば直接の上司になる。言うのを忘れてたぜ」
「そういうことは全員の前で言ってくださいよ。何ですこの露骨な依怙贔屓?」
「勇者カレン様からよろしく言われているのよ。ベサージュとの騒動も聞いている。即戦力ならオレ様も大歓迎というわけさ」
なるほどそういうことか。
とにかく僕は、グレーツ中隊長なるオッサンから属性盤を受け取った。
さて、どうなることやら……。
「………………ん!?」
メリメリメリ、と属性盤から音が鳴った。
属性盤の針。これが何でできているかわからないが、恐らく金属製だろう。
メリメリ……、という音は針から出ていた。
そして直後、誰も触れることなく針が折れ曲がった。
「なにぃぃぃッ!?」
これには目前で見守るグレーツ中隊長も驚いたようだった。
僕もたまげた。しかしある程度、こういうことになるんじゃないかと予想していたけど。
属性盤の針は、地水火風光どれを指し示すこともなく、自身をへし折って天を示した。
闇の神の転生者である僕の属性は当然『闇』。
闇の項目がないこの属性盤では、僕の属性を正確に測ることなどできるはずがなかった。