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63 アポロンシティの休日

 そして僕たちは外にいる。

 アポロンシティは五大教団の一つ、光の教団本部のある街。

 当然ながら総人口、総面積、貿易額などあらゆる面で世界有数の大都市。

 現在はエーテリアルによって起きたエネルギー革命で文明水準も上がり、街中では自身の動力で走る車まで行き交っている。

 建物もデカくて高層のものがやたら並んでいる。


「しかしこの光景にもすっかり見慣れてしまったなあ……」


 故郷の村からこの街に初めて来た時は、見るものすべてが珍しくてニワトリみたいに首を振りまくってたものだが。

 僕も今や都会っ子か……。


「ハイネさん、都会の道は混雑しますから、人とぶつからないように手を上げて歩くんですよ」

「何ぃ!? でも他の人たちはそんなことしてないぞ!?」

「それは彼らが都会暮らしのプロだからです。上京したばかりの初心者は、避ける技術が拙いので手を上げるんですよ」

「なるほど、そういうことか!」


 バッと手を上げる。


「ウソです。うふふ」

「くっそう!?」


 光の教祖様は冗談がお好きでいらっしゃる。

 そんなヨリシロも今は、ごく普通の格好。ちょっといい仕立てのワンピースを着て、この出で立ちなら贔屓目に見てもそこそこいいとこのお嬢様。

 まさかこの街の支配者と言って差し支えない光の教団教主がお忍びデートの最中とは思うまい。


「お前って、元々人前ではヴェールなんかつけて顔隠してたからな。ちょっとやそっとで正体に勘付くヤツはいまい」


 正体といっても、神の魂の方ではなく、光の教主ヨリシロ様の正体ってことだが。


「ええ、わたくしが普段から人前で顔を隠していたのも、こういう日が来ることを知っていたからです。ハイネさんと二人きりで過ごすこの時間を、ボディガードや野次馬に囲まれたりしたら堪りません」


 どんだけ昔から僕とのデートを心待ちにしてたの?

 ちなみにそれでも、腕を組んで歩く僕たち二人に、擦れ違いながら横目に見る通行人は多い。

 普通にヨリシロが可愛いからだ。

 カレンさんやミラク、シルティス。これまで出会ってきた女性たちも皆それぞれに違った味わいで美しかったが、やはりヨリシロだけは別格の見目麗しさ。

 まさに神の作り出した奇跡の美貌というか。……まあ実際そうだから綺麗なんだろうけどな。


「それでお姫様? 行きたいところはどちらですか?」


 今日一日何でも言うことを聞くと言ったからにはしょうがない。

 明日に響かない程度に、このお嬢様を満足させてさしあげるとしよう。


「それは、ハイネさんにお任せいたしますわ」

「おい」


 お前が連れ出したんだから、お前にプランがあるんじゃないのか?


「あら、こういう時は男の方がエスコートしてくださるんでは?」


 そう言うヨリシロの瞳にしっかりといじめっ子の輝きが宿っていた。

 田舎者のこの僕を狼狽えさせて楽しむ所存だな。この魔女め。

 しかし甘い。このクロミヤ=ハイネに死角はないと思い知れ。


「よしわかった! ではこの僕ご自慢のデートスポットにご案内しよう!」

「えっ!?」


 突然組んだ腕を引っ張られて、戸惑い驚きのヨリシロ。


「ぬかったな女神様? お前の言い出してくることなんて、こっちは先刻予測済みなんだよ。一日言うことを聞かせる条件でデートに連れて行かせることぐらいわかっていたから、昨日のうちに、その手の店はリサーチ済みだ!」


 思い知ったか。

 一部の隙も無いデートプランで文句の一つも出せず、アテが外れてくやしがるヨリシロをこっちが眺めて嘲笑ってやる。

 さっそく出鼻をくじかれたコイツの悔し顔を見てやろうと横を向くと……、アレ?

 想像とは真逆に瞳をウルウルキラキラ輝かせたヨリシロの喜悦顔が。


「それって、わたくしのために……?」


 問いかけているのか独り言なのか判別しがたい呟きからの……。


「ハイネさん大好きッ!!」

「おおうッ!?」


 元々組んでた腕を全力で締め付けてきた!?


「やっぱり結婚しましょう! デートの最初の行き先はわたくしが決めます! 教会です! 教会で誓いを立ててから、ハイネさんの立てたデートプランを心行くまで……!!」

「あれぇー!? 逆効果ーッ!?」


 くやしがらせるつもりが心から喜んでやがる。

 って言うか、教会っていつもアナタが暮らしているところじゃないですかねえ!?


 互いに当てが外れたのでここは引き分けということになろうか?

 初戦はドローで、僕たちのデートは今始まった。

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