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409 愛の闇

『皆がルシファーを追いこんでくれたおかげで、やっとパスが繋がった』


 とルシファーの口を通してハイネさんが語った。


「ハイネさん! 無事だったんですね!?」

『ええ、なんとか……! その声はカレンさんですね? よかった聴覚のパスも通じている……!』


 よかった……! ハイネさん無事でよかった……!!


「え? ハイネッちって……! 闇の神エントロピー様!?」

「今は空気読んでろ」


 周囲も戸惑うけど、……とにかくよかった!


「ハイネさん!」

『ヨリシロか?』


 その中でヨリシロ様がいち早く冷静に先駆ける。


「ルシファーを通じて会話ができるということは、ルシファーの神経系を暗黒物質で制御したということですね?」

『ああ、たった今。皆が痛めつけてルシファーにダメージを与えてくれた分、拘束が緩んだようだ。でも脱出はできない。周りにある光の神気が暗黒物質を消して……!』


 そうか……!

 悪の光の女神が生み出したルシファーは、本質的には光の魔王。

 闇を操るハイネさんにとっては天敵なんだ。

 ハイネさんの操る闇と、ルシファーを通して暴走する闇は違う。

 ハイネさんがしっかりと制御する闇は、ハイネさんが世界を愛するがゆえに『光に負ける』という制約を設けた闇なんだ。


「ハイネさん。今ルシファーは、アナタから吸い取った闇を暴走させ周囲に振り撒いています! このままでは世界すべてが愛なき闇に覆われかねません!」

『愛なき闇って!? 何!?』

「アナタの方で何とか闇神気の供給を断つことはできませんか!? 今やアナタこそが世界の危機の根源なんですよ!!」

『……そう言われても。……ダメだ、アテスのヤツ、ここだけが超念入りに設計したのかどうやっても抜け出せない。闇の力の抽出も止められない。神経系のパスを繋ぐので精一杯だ!』


 アテスにとっては一番大事な部分のはずのハイネさん保管庫。

 そりゃ逃げられないように超厳重にしてますってこと!?


『皆、すまないが手を貸してくれ!』

「と、言いますと!?」

『ルシファーは、闇の力を暴走させると同時に、光の力も暴走させている!』


 基本は光の魔王ですもんね!

 今ルシファーの中では、光の神気と闇の神気がごちゃ混ぜになりながら荒れ狂っている。

 そしてそのうち光の神気部分が、都合よくハイネさんを封じ込めている?


『その光の神気を、外から攻撃して打ち消してくれ!!』

「そんなこと、どうやって……?」

「できます」


 ヨリシロ様が進み出た。


「闇の神気は、他の神気では絶対に対消滅不可能です。でも光の神気相手なら、それ以外の神気をぶつけて対消滅可能。全体に優位性を持つと言っても、光のそれは闇に遥かに劣りますから……!」


 ここに集う全員の全属性攻撃を叩き込めば充分に中和できる!?


『僕を戒める光の神気がなくなれば、僕は脱出して闇の神気を処理する。結局のところ闇だけが闇を制することができるんだ!!』

「わかりました!」


 俄然やる気が湧いてきた。


「皆! これが最後の一斉攻撃です! ルシファーの光を消し飛ばしてハイネさんを助け出しますよ!!」

「「「「「「「「おう!!」」だす!!」」」」」」


 魔王が、神勇者が、所属も立場も隔たりなく同じ方向へ駆け出す。

 今こそすべてを乗り越えて、皆の心が一つのなる時。

 皆で一番大事なものを……、世界の平和を取り戻す!!


 ます私が……!

「『聖光巨蟹鋏』ッ!!」


 次にミラクちゃんとミカエル、火のコンビが。

「『プレデアス・バースト』ッ!!」

「『フェネクス・ハンマー』ッ!!」


 シルティスちゃんとガブリエルは流れるように。

「「ダブル『水斬刃・龍牙の舞』ッ!!」」


 ササエちゃんとウリエルも息を合わせて。

「『乙女蹂躙斬殺斬』だす!」

「いやぁー! 僕の腕まで斬らないでーッ!! 『フォビドゥン・ドライゼン』!」


 ヒュエちゃんとラファエルはまさに人機一体。


「『ラファエル砲』! もう一撃行くぞ!」

「承知した! 風の神銃術『平天秤』!!」


 光が、火が水が地が風が、ルシファーの内部にある光の神気を消し飛ばしていく。

 光がなくなればなくなるほどハイネさんが体内で動きやすくなる。


「世界の危機を救うのは人、そしてモンスターですか」


 最後に控えていたのはヨリシロ様だった。


「それでいい。この世界はもう彼らのものです。今はわたくしも、この世界に住まう人間の一人として!」


 ヨリシロ様の手から、巨大な光のクモが現れた。


「『聖光黙示掌』!!」


 それはヨリシロ様の五指から迸った巨大な光の神気だった。

 クモの足と見紛う凶悪な光の爪に、ルシファーの残骸は容赦なく斬り刻まれる。


 これだけの魔王級、神勇者級の攻撃をのべつ幕なしに食らって、ルシファーの光の神気はあらかた吹き飛んだことだろう。

 それでも同時に噴き出している闇の神気はまったく陰らないのが怖すぎる。


「っていうか飛び散る!? 衝撃で闇がアチコチ飛び散るぅ!?」

「多少は仕方あるまい! 闇が世界中を覆い尽くしてしまう前に解決するには!!」


 これできっとハイネさんへの戒めは消えたはず……!

 光の神気は吹き飛ばしても、闇の神気はまだ大量に残っているから私たちからは助けに行けない。

 早く脱出して来てハイネさん。


『…………』


 ピタリと。

 闇の流出が止まった。


 それどころか……、既に放出された超暗黒物質が、ルシファーへ向かって戻って行く? 吸い込まれていく!?


「闇に……、温かみが戻った?」

「え? どういうことですヨリシロ様?」


 ルシファー及びアテスに利用されたことで神の愛を失った闇は、『光に弱い』という弱点すら消し去り、世界を滅ぼす凶悪となった。


「でも今の闇は違う。ルシファーの放つ闇そのものに。ハイネさんの暗黒物質と同じ優しさを感じる……?」

『僕が作り直したからだ』


 再びルシファーが口を開いた。

 というかルシファーを通したハイネさんの声なんだけど。


『体が半壊し、光の力を吹き飛ばした隙を突いて、コイツの全身に暗黒物質を浸透させて乗っ取ったんだ。今のコイツは、もう光の魔王じゃない』


 言うなれば……。


『闇の魔王サタン』

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