405 反攻行進曲
「『乙女蹂躙斬殺斬』だす!!」
ササエちゃんの大鎌によってパックリ開いたルシファーの表皮、そこからトビウオのように舞い上がる、流線型の肢体。
「やった! ガブリエルも解放されたわ!!」
私に寄り添いながら暗黒物質放出に手を貸すシルティスちゃんも、相棒の復活に喝采を上げた。
そして当のガブリエルさんは……!
「うわぁぁぁーーーーー! ラファエルぅぅーーーーッ!!」
「お前もかァーーッ!?」
やっぱり復活したラファエルさんに泣きながら抱きついていた。
「ごめんねぇー! アナタの悩みに気づいてあげられなくてごめんねー!! もう間違わないから! 私たちずっと友だちだからぁーッ!!」
「ええい離せ気持ち悪い!! 魔王はもっとドライな仲間関係なんじゃないのか!?」
いやもうこれ以上ないウェットな感じになっておりますが。
「人間関係湿っぽいぐらいでちょうどいいのよ!」
シルティスちゃんが舞い上がる。
「今度はアタシの順番ね! もうアタシの神気も聖剣に込めておいたから。あとよろしくーッ!!」
「ああッ!? シルティスちゃん!?」
なんかもう一連の流れ作業みたいな感じでシルティスちゃんが行ってしまった!
「ガブリエル! 感動中悪いんだけど早速働いてもらうわ! 最後の一人を助け出すわよ!!」
「わかったわシルティス! リーダーに出てもらわないとまとまりがつかないものね!!」
水属性の二人は、計り合ったかのように同時に両手から超水圧流を放出し、そのまま体を大回転させる。
「「『水斬刃・龍牙の舞』!!」」
奇しくも二人とも同じ技で、螺旋状の水流カッターをルシファーの体に押し付ける。
「解阿々々々々々々々々々々々々々々々々ッ!?」
苦悶の雄叫びを上げるルシファー。
狙うべき場所は、あらかじめヒュエちゃんから指示を貰っている。
水の神気が、火の神気で作った生体牢を破って、中の囚人を解放する。
この世のすべての苦悶を一人で背負い込むかのような巨体が、まるで地獄から這い出してきたかのよう。
火の魔王ミカエル復活。
「ミカエル!?」
「やった! これで全魔王の復活だ!」
「魔王はやはり四人揃わねば張り合いがないね……!!」
四人の翼ある者が空に戻ると同時に、ルシファーの背を飾る羽は二対四枚にまで減っていた。
光と闇。
その二種類のみ。
「おのれ……! おのれ……! 部品のくせに、パズルのピースの分際で……!!」
アテスの顔色が、怒りで真っ赤に染まっていた。
「……カレン、あとは頼むぞ」
「えッ!? ミラクちゃん!?」
ついにミラクちゃんまで、私に火の神気を託していってしまった。
そして甦ったばかりの火の魔王へ飛ぶ。
「ミカエル!」
「火の勇者ミラクよ……! 今や真魔王ルシファーは、この世界に住むすべての者にとっての敵だ。ヤツを葬らずしてこの世界に未来はない!」
「ああ、だからこそぶん殴るぞ! オレと、お前の両方で!!」
二手から燃え上がる爆炎。
「『フェネクス・ハンマー』ッ!!」
「『プレデアス・バースト』ッ!!」
もはや堂に入ってきた感じで放たれる、火の神勇者と火の魔王の同時攻撃。
勇者と魔王の中では一番最初に戦い合って、一番長く行動を共にしたコンビ。
その二人の攻撃を、ルシファーは全身に食らって吹き飛ぶ。
「阿禦々々々々々々々々々々々ッ!?」
そのショックにブラックホールへ神気を送り続ける余裕もない!
よし、今こそ……!
「この均衡を破壊する!」
ヒュエちゃん、ササエちゃん、シルティスちゃん、ミラクちゃんから貰った神気が、まだ聖剣サンジョルジュの中に残っている。
これが尽きる前に、ありったけの闇の力でぇぇぇッ!!
「聖剣サンジョルジュよ! 光の剣よ! 今だけは皆の希望を込めて、偉大なる闇を解き放って!!」
聖剣がかつてない漆黒に包まれる。
この闇は、私たちの世界を守りたいという願いが実体化した闇。
光にも闇にも善悪はない。
善悪を決めるのは、そこに宿った心なのだから。
「闇の剣、一刀両断!!」
伸びた暗黒の刃が、ルシファーが作りかけていたブラックホールを捉え。
即座に真っ二つにして、さらに粉々にした。
その一撃で聖剣サンジョルジュも皆から託された神気を使い切り、純粋な光の剣へと戻る。
「ハァ……、ハァ……!」
世界を滅ぼすブラックホールを止めるのに精いっぱいでルシファー本体まで手が回らなかったけれど。
私たち神勇者や魔王さんたちから度重なる攻撃を受けて、その巨体ももはやボロボロ。
翼も十二枚あったのが、四枚にまで減っている。
ルシファーが元々持っている光の翼を除けば、ハイネさんを取り込むことで得た闇の翼のみ。
「……追い詰めましたよ。真魔王ルシファー」
そしてそれを操るアテス。




