404 人魔共演
「解ッ!」
ラファエルの体が分裂して弾けた!?
……いや違う。正確にはラファエルのまとっている全身鎧がパーツごとに分解して、それぞれが独自に飛び回っている!?
「あれがヒュエちゃんの言っていた……、ラファエルの必殺技?」
暗黒物質の噴出を止めないまま、私たちは地上から戦いに見入っていた。
「いや、ホントになんでまたそれやるんだ!? 力が完全に戻ったんなら鎧にもみっちり中身を入れていいだろうに!?」
とツッコミを入れるヒュエちゃん。
体の細胞一つ一つを虫に変えることのできるラファエルは、そのほとんどをハイネさんに消されていた時期に、既存の鎧に入ることで足りない分を補っていたらしい。
「カッコいいからに決まっているだろう! そこから……!」
鎧のパーツたちは、真魔王ルシファーをぐるりと取り囲み、何かしらを「――!」と放出した。
……何も聞こえない?
「……ッ!? 超音波か!?」
ヒュエちゃんが即座に耳をそばだてる。
「……ッ! よし! ルシファーの体内に囚われている者どもの位置がわかったでござる!」
そうか!
前にもスライムという巨大モンスターの核を見つけ出すため、超音波でその内部を調べたことがあった。
あれと同じことをまたしたんだ!
ルシファーの体の中には、飲み込まれて力を奪われた魔王さんたちがまだいる。
そしてあの人も……!
「ハイネ殿だけがやたらと奥深くに取り込まれて、ルシファーを完全に機能停止させなくては掘り出せなさそうだ……!」
「アテスの……、クロミヤ=ハイネへの執着は何故か人一倍だならな。ならば手近なところから、一人ずつ掘り出していくぞ!」
「応!」
ラファエルが音を発し、その反響をヒュエちゃんが聞き取る。勇者と魔王、そのコンビネーションは既に完成されている。
二人は空を舞いながらルシファーへと向かう。
「くッ、こうなったらブラックホールの生成は一時中断して……!」
アテスがヒュエちゃんたちに対応しようとするのを……!
「させないッ!!」
私たちは『ダーク・マター』の出力をさらにアップしてルシファーを押す。
「今ブラックホールの生成をやめたら、私たちの暗黒物質がルシファーに丸い被りしますよ! 光の神気で中和するまでどれだけの神気が失われるでしょうね!?」
「おのれ虫けらぁぁぁーーーーーーーーーーッ!?」
アテスとルシファーは私たちで止める。
その間にヒュエちゃん!
「囚われた連中は、自分自身の神気で檻を作られている!」
「そのようだな……! ならば我々が解放すべきは……!」
分裂していたラファエルの鎧が、再結合を始める。
でも、その形は人型じゃなく……、何?
「『ラファエル砲』」
何!?
ラファエルさんの鎧が大きな銃の形になった!?
「抽出中、あのオバケみたいな女が私に色々とインプットしていたようだ。こんな機能を私に追加するとは……!」
「だが今は必要だ!」
ヒュエちゃんが大砲になったラファエルさんを担いで、そのまま照準をつける!?
「魔王級の神気をそのまま空気弾として打ち出せる『ラファエル砲』。それに我が神勇者の神気をも上乗せし……!」
最大火力で撃ち出される精密無比の射撃。
「風の神銃術『平天秤』!!」
天をも貫く一撃が、真魔王ルシファーに突き刺さった!
「解々々々々々々々々々々々々々々々々々々ッッ!?」
痛みに呻くルシファー。
ヤツに命中した風の神気は、相性で下位となる地の神気を討ち払う。
地の神気。
つまりヒュエちゃんたちが狙った場所には……。
「うおおおおおおおッ!?」
風の一撃で緩んだ戒めを打ち破り、ルシファーの体内から飛び出してくる樹木人間。
地の魔王ウリエルさんがここに解放された。
「くっ! また部品が!?」
ルシファーの背中から、樹木を模した地の翼が消え去っていく。
これで残り四対八枚。
「ラファエルぅぅーーーーッ!?」
そして解放されたウリエルさんは、そのままの勢いで人型に戻ったラファエルさんに飛びつく。
「ラファエル生きてたぁぁぁぁーーーーーッ!? うええええッ!? きはぁぁぁぁぁーーーーーーーッッ!?」
「うわああッ!? 何するんだ気持ち悪い!?」
抱きつかれたラファエルさんはビックリ仰天。
自分が死んでから仲間たちがどんなに落ち込んでたか知らないと、そりゃあ戸惑うだろうなあ。
「ごめんよラファエルぅぅーーーッ!? もう絶対キミのこと見下したりしないからぁーッ!? 生きてるぅ、ホントによかったぁぁーーーッ!?」
「ああー、うるせーッ!? 今は戦闘中なんだよ注意を乱すな! っていうかやっぱりお前ら私のこと見下してたのか!?」
本当にラファエルさんが帰ってきてくれてよかったね。
「ウリエル殿のご帰還だす!」
そしてこっちにも帰りを喜ぶ人がいる。
地の神勇者になってムチムチに大人びたササエちゃん。
「こうしてはおれんだす!! カレン姉ちゃん! オラも行かせてもらうだすよ!」
「ええッ!?」
「オラの地の神気も聖剣に込めておくだす! それではあとは頼んだだすよ!」
と言ってササエちゃん飛び去ってしまった。
「ウリエル殿お久しぶりだす!」
「ヒィッ!? ササエ様!?」
様!?
「違うんですこれは……、帰るのが遅れたのはですね。……そうルシファーが! あのバケモノが全部悪いんです! 僕のことを取り込んで捕えやがるから!」
「そんなことどうでもいいんだすよ! 今は戦いあるのみだす!」
「どうでもいいとか言われると、それはそれで悲しい!」
このコンビも相変わらずだなー。
「ルシファーの中に捕えられた魔王殿たちを助け出すには、それぞれの弱点属性が必要だと見ただす! だとすればオラたちにもすべきことがあるだす!」
「あっハイ、そうですね!」
「水の魔王ガブリエルさんを助けるんだす!!」




