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402 闇の勇者たち

「そんなバカな……!?」


 アテスが、私たちの生み出した暗黒を目の当たりにし、魂消ていた。

 私たち五人の重ねた手から、もはや見慣れた黒き粒子が噴出している。


「暗黒物質ですって……!? もっとも貴く偉大な力……、闇の力に人間どもが触れるなんて……!?」


 地、水、火、風、そして光。

 それら五つの属性が全部複合された先にあったのは、『闇』だった。

 元々世界は闇から生まれた。

 だからこそ世界を構成するすべての因子を組み直したら、原初の闇へとたどり着く。


「闇都ヨミノクニで世界の始まりを見なければ、この力にはたどり着けなかった」「神気の操作はイメージだからな。五つの属性を合わせても、明確にどんなものになるか想像できなければ闇にはたどり着けない……!」

「そりゃあ何度となくハイネッちの暗黒物質は見てきたけど。それだけじゃただの現象。本質まで見通すことはできない」

「世界の始まりを見て、どうやって闇が世界にすべてを与えてきたかを知っただす!」

「その段階が、闇の神がどれだけ世界と人間を愛してくれたか知った今だからこそ、拙者たちは闇の力を扱える!」


 ますます私たちから噴き出す暗黒物質。

 この力を行使すれば、私たちもルシファーと戦える。


「行くよ皆。ルシファーがブラックホールを完成させる前に、こっちの闇の力で押し潰す!!」

「「「「おう!!」」だす!!」」


 私たち五人の重ねた手から噴出する暗黒の奔流。

 それは普段ハイネさんが操る力と何ら遜色なかった。


 既にブラックホール化しつつあるルシファーの圧縮暗黒物質。

 それが作り出す重力障壁も、私たちの暗黒の波は難なく中和して、超圧縮の核を飲み込む。


「おのれぇぇぇぇッ!?」


 それが有効な戦法だということはアテスの金切り声で確信できた。


「あらゆる神気を飲み込み、消滅させる。それが暗黒物質の第一性質……!」


 ハイネさんの受け売りです。


「同じ闇の神気同士がぶつかり合えば、どうなることになるか……!?」

「何気に世界初なんじゃない?」


 私たちの暗黒物質と、ルシファーの暗黒物質。

 二つが触れ合った瞬間互いに弾けて消えた。


「違う意思を持った暗黒物質がぶつかると、互いに消滅しあうのか!?」

「ならばよし! このまま我々が暗黒物質を出し続ければ、向こうも圧縮させるための暗黒物質を追加できずにブラックホールは完成せぬでござる!」


 ヒュエちゃんの言う通り。

 今はとにかく力尽きても暗黒物質を出し続けて、相手のブラックホール完成を阻止するしかないよ!


「ブラックホールが出来上がったら世界の破滅だ! 危急存亡の瀬戸際と思って力を振り絞れ!!」


 私たちの闇とルシファーの闇。

 二つの闇は今のところ拮抗していて、どちらとも傾かないように見えるけれど……。


「愚かな……! ルシファーの力は闇だけではないのです……!!」


 アテスは努めて冷静さを取り戻そうとしている。


「ルシファーはすべての属性を獲得した完全体。ましてその本質は光の魔王! そして光の神力こそ闇を破る唯一無二の手段!」

「まずい……ッ!?」

「ルシファーの光の力でアナタたちの闇を消滅させてあげましょう!!」


 いけないッ!?

 そんなことされたら一気に突き崩されてしまう!?

 しかし、ルシファーからの光の攻撃はいつまでたってもやってこなかった。


「?」

「……くそッ!? ダメだわ。ルシファーが発する闇と光は同じ根源。今光の力を出したら、ルシファーが作りかけているブラックホールまで消し去ってしまう……!?」


 闇は光に絶対勝てない。

 その摂理は、ルシファーの体内でも厳密に働いているらしい。


「他の四元素の力も、闇の力が発動中は消去されて使えない……!? 完全体のはずのルシファーに、こんな力の制限がかかるなんて……!?」

「欲張って何でもかんでも取り込むからだ! お前絶対ダイエットに失敗して太りまくる質だな!?」


 世界最強の力たる闇。

 その扱いはやはり難しいんだね。


「はっ! ならば力押しで押し切るまで!」


 ルシファーがまごつくのをやめて、暗黒物質の放出に全精力を注ぐ。


「ぐああああああッ!?」

「だすぅぅぅぅぅぅッ!?」


 私たちへの圧力が一気に上がる!?


「純粋な力比べでも、超巨大モンスターのルシファーがたかが人間五人に劣るなどあり得ない! このまま根競べで、アナタたちの気力が尽きるのを待たせてもらいましょう!!」


 それ、一番ヤバいんじゃないかな……!?

 巨大モンスターと人間。種としてのスタミナ差を差し引いても、私たちは全員か弱い女の子。それほどスタミナがもつとも思えない。


 私たちの秘策。五神気複合『ダーク・マター』は結局のところ、状況を拮抗させる時間稼ぎにしかなっていない。

 しかも体力が切れたら押し切られる期限付き。

 何か新しい策を考え出さないと、ジリ貧になってしまう。


「……拙者に、任せていただけぬか?」


 ヒュエちゃん?

 一体になって暗黒物質を放出し続けながら、ヒュエちゃんが言う。


「上手くいけば、この均衡を崩すことができるかもしれぬ。無論我らの有利に。拙者を信じていただけぬか……」

「信じるよ!」


 私は即答した。


「ヒュエちゃんは立派な風の勇者だもの! ヒュエちゃんにいい考えがあるならきっと上手くいく! そうだよね!?」

「無論、ヒュエ以上に背中を預けて安心できる味方はいないしな!」

「このパーティの中じゃ、ヒュエッちがアタシの次に賢いしね! 期待してるわよ!!」

「ヒュエ姉ちゃんにお任せしますだす!!」


 ミラクちゃん、シルティスちゃん、ササエちゃんも信じるのが早い。


「……ッ!!」


 ヒュエちゃんが決意を固め直すように風の神気を大放出した。


「今、出来る限りの風の神気を、カレン殿の聖剣サンジョルジュに込めたでござる。これでしばらくは五神気複合が続き、暗黒物質も途絶えぬはず……!」

「それまでに策を決める、ということだな?」


 ヒュエちゃんが無言で頷くと、私たちから手を離し、飛び出した。


 風の神勇者ヒュエちゃんの独壇場が始まる。

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