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400 混然一体

 ただの風じゃない。

 氷雪の交じった極寒の風。

 シルティスちゃんの水属性とヒュエちゃんの風属性が交ざった複合属性攻撃を、ルシファーはまともに浴びた。


「阿迦迦迦迦迦迦迦迦迦迦迦迦迦迦迦迦ッッ!?」


 ルシファーは苦しそうなうめき声を上げるけれど……、おぞましい!?


「休んじゃダメよ! このまま一方的に攻め立てるわ!!」


 シルティスちゃんの指示に従い、私たちも既に次の行動を起こしていた。

 ミラクちゃんは、私との手を離すとすぐさま地表へと降りる。そこには神勇者化して大人の色気たっぷりとなったササエちゃんが待っていた。


「ササエ! 相変わらずその状態だとおっぱい大きいな!!」

「そんなことどうでもいいだすよ! さっさとおっぱじめるだす!!」


 ミラクちゃんとササエちゃんが今度は手を結ぶ。

 ミラクちゃんの火属性と、ササエちゃんの地属性。二つが複合してできるのは……『マグマ』。


「「『マグマ・オーシャン』!!」だす!!」


 しかも神勇者化して、遥かに威力が増した溶岩攻撃。見渡す限りの地表が赤い光を発し、ルシファーの長い長い蛇身を飲み込む。


「於禦ォォーーーーーーーーーーッッ!?」


 なまじヘビの長い尾をもつだけに、接地面積の広いルシファーにとって効く攻撃だろう。

 上からの氷雪。下からの溶岩。

 極寒と灼熱の二面攻撃は、真魔王様にだって効果覿面のはず。


「調子に乗るんじゃありませんよ虫けらども!!」


 ルシファーの頭上に乗るアテスが逆上の雄叫びを上げる。


「何をしているのですルシファー!? 上方に火、下方に水の神気を撃ちなさい! 弱点相性は無効化されても、高熱低温を緩和することはできるはず……!」

「させません!」


 刹那、アテス本人へこの私――、コーリーン=カレンが襲来する。

 両手から一振りずつの二振り。大剣のごとく真っ直ぐ迸る光の神気が、ハサミのように両側から敵に迫る……!


「『聖光巨蟹鋏』!!」


 光の神勇者、単独の極大神気攻撃を食らいなさい!


「くッ! 『聖光黙示掌』!!」


 そこまで甘くはなく、アテスも自身の極大神気攻撃で迎え撃つ。

 神勇者である今の私と拮抗する神気。今ならなるほど光の女神の化身と納得することができる。


「でも、これでアナタの動きは封じた!!」

「!?」

「ルシファーが、他の魔王さんたちと違い知性をもたない通常モンスターである以上、アナタから命令を与えられなければ細かい対応はできない!」


 六つの属性を網羅しようと、それを細かく使いこなすことはアテス、アナタの指示なくしてルシファーには不可能!


「今だよ皆! 私がアテスを抑えているうちに!!」

「「「「おう!!」」だす!!」」


 皆が好き放題暴れてくれる。

 ミラクちゃんの『火』。シルティスちゃんの『水』。ササエちゃんの『地』。ヒュエちゃんの『風』。

 それぞれが合わせ重なる、複合属性祭りの開催だよ!


 まず、『火』と『水』が合わさり……!

「「『水蒸気爆破』!!」」


『地』と『風』が合わさり……!

「「『サンドウォーム』!!」だす!!」


『水』と『地』が合わさり……!

「「『ツリー・プラント』」だす!!」


『風』と『火』が合わさり……!

「「『ファイヤーストーム』!!」」


 次々と決まる複合属性攻撃に、ルシファーは翻弄されていく。


「いいわ! いいわよこの流れ!! むしろこのまま勝ちそうじゃない!?」

「相手のターンなどいらん! このまま一気に畳みかけるぞ! シルティスの好きな見世物ステージじゃないんだから、盛り上げるためのピンチ演出など必要ない!!」


 たしかにここまでは、私たちの圧倒的優位だった。

 でもこのまま勝てるほど、ハイネさんや魔王さんたちを破ったルシファーは甘い相手なの?


「ふざけるな虫けらどもがァァァ!!」

「うわッ!?」


 激情するアテスの勢いに、私は思わず跳ね飛ばされてしまった。


「カレンッ!?」「カレンッち!?」「カレン姉ちゃん!?」「カレン殿!?」


 皆が私の下に集まり、一時攻勢が中断される。

 そして、私の拘束から逃れたアテスは……。


「許しません……! 許しませんよ!! 戯れに遊んであげればつけ上がりやがって! 身の程を弁えない、だから人間は愚かだというのです!!」


 滅茶苦茶怒っている……!


「わかっているのですか!? 今までの戦いはすべて遊びなのですよ!? 世界を終わらせる前に、ほんの戯れでアナタたちの最期を飾ってあげたかったのです。その証拠に……!」


 え?


「私のルシファーは、地水火風の四属性しか使ってこなかったでしょう? この子が使うのは今やそれだけじゃないのに」

「まさか……!?」

「もう終わりです。遊びは終わりです。最初からの予定通り、この世界を消し去ってあげましょうアナタたちごと!」


 ルシファーの翼が蠢いた。

 最後の、六対目の翼……。

 ハイネさんを取り込むことで得た闇の翼が。


「ルシファーよ! 六属性の頂点に立つ闇の力を今こそ振るいなさい!! 世界を滅す力のもっとも正しい使い道! ……世界を滅ぼすのです!!」


 他五対の翼が降り、交代するように闇の翼が大きく広がる。

 そして二枚の翼の中心に、少しずつ集まっていく黒い粒子。


「あれはまさか……!?」


 ハイネさんの使う暗黒物質!?

 それを集めて、凝縮している? ということは……。


「そう、ブラックホールです」


 アテスは勝ち誇るように言った。


「闇の力の究極。世界を葬るリセットスイッチ。本来ハイネさんだけに許されたこの力の正当な使い道を、この私が行使します。世界はブラックホールに飲まれて滅ぶのです」

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