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393 女王の間

 遺跡都市ヨミノクニの中心には、一際大きな建物があった。

 そこは何かの宮殿みたいだった。

 私たちの住む五大都市それぞれにある五大教団本部。それを連想させた。


「……光は、この中に入っている?」


 小型飛空機を降りて、光に導かれるまま宮殿に入る。

 ミラクちゃん、シルティスちゃん、ササエちゃん、ヒュエちゃんも一緒。


「念のため警戒は充分にしておこう。……ヒュエ、後ろを頼む」

「承知」


 かつてこの都市を徘徊していた黒い影――、ドラハさんが怪物化したもの――は、いなくなったから危険はないと思うけど。


 そうこうしているうちに到着した。

 光が指し示していた終点は、この宮殿の最上階にあるひたすら豪華な部屋だった。


「うわぁ……!?」


 豪華と言ってももちろん数百年前のことで、今はすっかり荒れ果てている。

 しかし部屋の大きさ、壁や柱に施された彫刻。何より部屋の一段高い場所に置かれた玉座から、この部屋の役割を推測するのは難しいことではなかった。


「王の間……!?」

「だろうな。あの玉座に王が座り、謁見やら式典やらを行っていたのだろう」


 前に聞いたことがある。

 この闇都ヨミノクニに君臨したという王様は女性で、たしかイザナミという名前だった。

 女王イザナミがあの玉座について闇都ヨミノクニを治めていた。

 ここは女王の間。


「なんかおあつらえ向きな場所に到達したけれど、ここに何があるって言うのかしら?」

「何もありませんでしたとなったら笑い話にもならないだす!!」


 そんなことはないと思うけれど……!


「とにかく何か探してみよう! 何か文字の刻まれた石碑とか特別そうな神具とか……!」

「ハイハイ。でもこれじゃアタシたち遺跡泥棒か墓荒らしって感じね」

「控えめに言って勇者のすることではござらんな」


 とにかくここにルシファーを倒すヒントが隠されているのは間違いない……! はず!!

 ここで何としても何かしら見つけないと……!

 体を張って時間稼ぎしてくれたハイネさんに合わせる顔がない……!


「おいカレン、部屋の隅が暗いから光をもっと出してくれないか?」

「うん、わかった……!」


 地下都市のために基本光源のないヨミノクニは、それこそ暗黒都市だ。

 そのため私は聖剣サンジョルジュから光を発し、皆の視界を確保する。


「…………? カレン? ちょっと光らせすぎじゃないか? あまり眩しすぎると却って見えづらいんだけど……?」

「え? いやちょっと待って!?」


 私は慌てた。何故かというと聖剣サンジョルジュから発する光を制御でいないから。

 抑えようとしているのに、どんどんまばゆい光が溢れ出る。


「カレンどうした!?」

「ついにトラブル……ッ!? ……うわッ!?」


 私の下へ駆け寄ろうとした皆が、足を止めた。

 皆の持つ神具まで急に輝き出したから。


「炎拳バルバロッサ!? 一体どうした!?」

「水絹モーセがいきなり……!?」

「地鎌シーターどうしただす!? オラの言うことを聞くだす!!」

「風長銃エンノオズノ……!? 何を訴えようとしている……!?」


 五つの神具から発せられる神気の輝き。それらは際限なく眩さを増し、ついには私たちの視界すべてを、感覚までをも塗り潰していった……!!


              *    *    *


 そして、やっと光が収まって感覚が正常に戻ったと思ったら、私たちは知らない場所にいた。


『ここどこ!?』


 少なくとも私たちがさっきまでいた女王の間ではない。

 何もない空間だった。

 それこそ完全な意味での『無』。

 地面もなければ空もない。空気も、光も闇も、空間の概念すらないとわかる。

 私たちの体すらここにはなく、意識だけがこの空間にもなりきれていない空間に漂っているような感じ。


『カレン!? カレン無事か!?』

『その声は……、ミラクちゃん!?』


 声というか、純粋な意識の波動? 的なもので私たちはお互いを確認することができた。


『なんか、どえらいことになっとるだす!?』

『どうすれば元に戻れるのでござるか!? ずっとこのままだと相当ヤバいことになるまいか!?』


 ササエちゃん、ヒュエちゃんの意識も感じる。

 あともちろんシルティスちゃんも。


『お互いの存在を感じ取れるのが唯一の救いね。お互いのパンツを交換したことで繋がりを保てたのかしら?』


 それはどうかと?

 でも、状況確認できたとしても、このまま元に戻れないとなったら相当ヤバい。

 ルシファーが復活する前に戻れなかったら洒落にもならないし。

 何より自分の体も認識できない意識だけの状態が続いたら、正気を保つのも難しそうだ。


『何とかして……、元に戻らないと……!?』

【お待ちなさい】


 !?

 何!?

 ここに来て初めて、私たち五人以外の声が空間でない空間にこだました。


『この声……!?』


 どこかで聞き覚えが……!?


【困惑させてしまい申し訳ありません。ですが、心配はありません。伝えるべきことを伝え終えたら、アナタたちの意識は速やかにヨミノクニにある元の体へと帰還するでしょう】

『ど、どういうこと……!?』

【これから伝える事実は、世界の始まりの秘密。それを伝えるためにもまず、アナタたちのその目でヨミノクニを見てほしかったのです。それを経なければ、これから伝える事実の重みは変わってしまいます】


 この声……!?

 まるでお婆さんみたいにしわがれてしまっているけれど、まさか……!?


【だからこそ無理を押し切って、アナタたちを闇都ヨミノクニへ遣わした。ヨミノクニの女王の間で作動するよう神具に細工を施した。アナタたちがこれから見るのは、この世界の始まりに実際にあったこと。そして……】


 そして……!?


【真魔王ルシファーと戦うにあたって、知っておかねばならないこと。それは……】


 それは?


【闇の神の慈愛と、光の女神の罪科に関わる物語です】

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