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391 晒し合って

 こうして私たちはオアシスで一通り水浴びを楽しんだあと、湖のほとりで五人並んで甲羅干しをしております。


「んやー、気持ちいいー」

「日光浴もいいけど、それに加えてお外でこんなにまで気兼ねなく全裸でいられるのも気持ちいいわねー。クセになりそう」


 シルティスちゃんお願いだから変な趣味に目覚めないでね。

 私たち勇者五人、水浴びのためにパンツまで脱ぎ去ったが上がっても服を着るのが億劫で、結局全裸のまま並んでぐったり寝転んでおります。

 絶人の地『無名の砂漠』の奥深くだからできることで、少しでも人が通りかかる可能性があったら、ここまで油断しきることはできないよ勇者として。


「極楽だすぅー。日光が肌をジリジリ焼く感覚が溜まんねえだすよー」

「そんなに日光浴が気持ちいいなら、行楽シーズンに我が火の教団管理下のラドナ山地に来ないか? ここみたいにマッパとまではいかないが、水着になって山地のひんやりした空気の中肌を焼くのは気持ちいいぞ?」


 とミラクちゃんが観光案内。

 そうだよねー。皆でお出かけ楽しみたいよねー。


「まあ、それもルシファーに世界を滅ぼされたら何もかもお仕舞でござるがな」

「「「「……」」」」

「え? 何でござるか?」


 ヒュエちゃん……、アナタ風の勇者のくせに……!


「風の勇者のくせに空気読まないな」

「何でござるか!?」


 お互い服も着ずに真っ裸でいるせいか、いつも以上に遠慮がない。

 今私たちは、身も心も隔てるものは何もないのだ。


「じゃあさ、お互い隠すものがないってことでアタシも本心さらけ出させてもらうけれど……!」


 シルティスちゃんが寝そべった体勢から上体を起こし、その大きくはないが決して小さくもないおっぱいを揺らした。


「アタシたち、本当にこんなことしている場合なの?」

「うっ!?」


 それは多分、ここにいる五人全員が共通して思っていることだろう。


「真魔王ルシファーっていうこれまでにない敵が現れて、せっかく仲良くなれた魔王も全員やられちゃった。その上あのハイネッちでもお手上げで足止めするのが精一杯。そうしてハイネッちが作ってくれた貴重な時間を……」

「我々がこのように無駄に浪費していいのか? と、そう言いたいのか?」


 言葉を引き継ぐミラクちゃん。

 つまり、シルティスちゃんと同じ意見を持っているということだ。


「そんな! 無駄なんて……!?」

「拙者も同意でござる」


 ヒュエちゃんが、撫でたらつま先までシュッと流れ落ちていきそうなスマートな裸体を捻じらせる。


「ルシファーを倒す方法を見つけ出したいのは当然ながら、それがヨミノクニなる古代遺跡にある、というのはいささか突飛に過ぎると存じまする。そして、光の教主殿はどうやってその事実に気づいたというのでござろう?」

「最初に会った時から、謎めいてるのよね光の教主。でも、今回ばかりはちょっと荒唐無稽が看過できないレベルだわ」

「今回『ヨミノクニに行け』などと言いだしたのは、自然さを装う余裕もない、という印象だったがな。あの光の教主の迫力に押されてここまで来てしまったが、休憩して却って冷静さを取り戻してしまった」

「なんだかよくわからんだすが、左様だす!!」


 皆の不安、疑問が、ここに来ていきなり噴出し始めた!?

 休憩して一度頭の中を整理できたのと、裸になって互いへの遠慮が軽減されただからか。

 ……たしかにヨリシロ様は、出てきた時から奥底が読み切れなくて、臆面もなく言えば怪しかった。

 心のうちでは何を考えているかわからない。

 だからこそ信じる側は、信じることに勇気を必要とするのだろう。


「私は、ヨリシロ様を信じる」


 私は、決然と立ち上がって言った。

 裸だけどもたじろがない。パンツも穿かずに仁王立ちしてやる!


「皆が不安に思うのはしょうがないと思う。でも、この中で一番ヨリシロ様のことを知っているのは私。その私が、今回のヨリシロ様の判断は正しいと信じられた」


 だから。


「皆は、その私の判断を信じてくれない? 私たち五人は、これまでも色んなことを協力して乗り切って来た。私たち五人の信頼関係は誰にも負けないと思う。だから皆は、ヨリシロ様を信じる私のことを信じてほしい!」

「「「「…………」」」」


 それを聞いて、ミラクちゃん、シルティスちゃん、ササエちゃん、ヒュエちゃんが次々立ち上がった。

 女子五人、裸のまま向かい合って円陣を作る。


「カレンにそうまで言われては仕方ないな。オレは元より、もう二度とお前と反目したりしない」

「時流を見抜いて乗っかることが、アイドルの長生きするコツだものね。カレンッちたちの突発行動にはこれまで何度も儲けさせてもらったし、今度も勝ち馬に乗らせてもらうわよ」

「愚直に信じ抜くことこそ地の教徒の真骨頂! 死ぬまでカレン姉ちゃんを信じますだす!!」

「拙者も仲間に入れていただけるなら恐悦司極……!」


 お互い裸を晒して、心のうちまで晒すことで新たに団結し直すことができた。

 急ぐ旅ではあるけれど、この休憩には大いに意味があったことだろう。


「よし! じゃあ休憩はこれぐらいにして、ヨミノクニへに向かうよ!!」

「え?」

「待てカレン慌てすぎではないか? もう少し休んでからでは……!」


 ダメダメ! ルシファーさんは待ってくれないんだから、あの人が復活する前に何としてでもヨミノクニに到着し、攻略法を見つけてくるんだよ!


 私に追い立てられ、他全員は慌てて服を着だした。

 思えば、こうして慌てながら服を着たのが悪かったのかもしれない。

 決定的な失敗に気づいたのは、しっかりと服を着終ってからだった。


              *    *    *


「「「「「……………………」」」」」


 服を着終えた五人の勇者。

 しかし皆に等しく違和感があった。

 慌てて服を着てしまったがために……。


「なあ、オレたち……!?」

「穿くパンツ間違えたわね!?」


 そう! 違和感は股間から物凄く来てます!

 慌てて急いで着衣したがために、自分のじゃない別の人のパンツ穿いちゃった。


「オレが穿いたのは……、シルティスのパンツか!? こんなド派手なパンツなんで穿く時に気づかなかったんだ!?」

「アタシはヒュエッちのパンツだよう!? っていうかヒュエッちはなんでパンツまでメッシュ生地なの!? 股間まで通気性が大事なの!?」

「ひいいいいッ!? ミラク姉ちゃんのパンツ、ブカブカだすよぅ!?」

「拙者のはカレン殿のパンツでござるか……。余裕があるな案外カレン殿はお尻大きいでござる?」


 慌てたのはもちろんだけど、皆デタラメに脱ぎ散らかすからこんな悲劇が起きるんだよ!

 皆綺麗に脱いで、自分の服をまとめて置いていたら!


 とにかく私たちは、また脱いでパンツを交換する暇を惜しんだので、そのままヨミノクニを目指すことにしました。

 女の子の服は、また脱いで着直すにも手間がかかるから。


 でも私……、私が間違えてはいたパンツは、五人の中で一番幼女なササエちゃんのパンツ!?

 小さい小さい小さい!?

 食い込む食い込む食い込む!?

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