03 光の騎士たち
「ぐばッ!?」「のべッ!?」「うぼッ!?」
次々と宙を舞う鎧騎士たち。
鎧なんかを着てる相手に打撃を加えても意味ないのは当然だから、相手の勢いを利用して投げ飛ばしてやれば、後は鎧の重みも加わって地面に堕ちれば地獄の衝撃のはずだ。
落ち方が悪ければ首を折って即死もあり得るが、そうはならないように手心は加えておいた。
「父さん! 母さんを頼む!」
「わかった! でもお前は……!?」
僕を追って飛び出した父さんに母さんを頼み、僕はそのまま飛び出した。
本来なら隠れて様子を見るべきところ、飛び出してしまったからには、このまま一気に勝負をするしかない。
相手の騎士たちは軽く見積もっても五十人。いちいち全部を相手にしてたら押し潰されてしまう。
それならば、何よりまず頭を潰す。
さっき見かけた、他の鎧騎士たちに指示を飛ばしている一際偉そうな鎧騎士。
ソイツへ向かって一直線に駆け出す。
「小隊長! 気を付けてください!」
「……!? なんだ!? 何が起こっている!?」
向こうも異変に気づきだし、偉そうに振る舞っていたのがにわかに慌てだす。
「何をしている貴様ら! 向かってきている痴れ物を叩き潰せ! 光の女神の名の下に!!」
命令に従って、幾人かの鎧騎士が阻もうとしてくるものの、僕はそれをかわし、ある時は殴り返して、順調に小隊長と呼ばれた騎士との距離を詰める。
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーー!! 近寄るなァァーーーーーッ!」
隊長は目に見えて慌てながら、手にしていた剣を捨て、代わりに腰に収まっていた短剣を引き抜いた。
(ッ!? 何のつもりだ!?)
普通敵を迎え撃つなら、長剣の方が圧倒的に有利なはずだ。
なのにそれを捨て、武器としては明らかに性能不足な短剣にあえて持ち替えるとは。
その意味不明な行動の謎はすぐに解けた。
短剣の切っ先を僕へ向けると同時に、その刀身が眩く輝きだした。
「『聖光弾』ッ!!」
「なッ!?」
短剣から放たれる光の矢、とでも言うべきだろうか。
とにかく矢のように素早く飛んでくる光だ。これは、当たったらヤバイ。
「ぐッ!」
ザンッ! と振り薙いだ腕が光の矢と接触し、弾き飛ばす。
さすがに走るのはやめ、一時停止。
「なっ……!? 『聖光弾』を弾いただと? そんなバカな……!?」
光の矢を放った小隊長は、驚愕にカッと目を見開いている。
「我ら極光騎士団が、光の女神様より賜った破邪の力。神力を込めし『聖光弾』が、こんな田舎のどことも知らん馬の骨に弾かれるなど。……あるはずがない!」
「何故人間のお前が光の神力を扱っているのか、よくわからんが」
ビックリして、ちょっとだけ使ってしまったじゃないか。闇の力を。
「ヒトの村にズカズカ上がり込んで田舎だ何だとこき下ろしてんじゃねえ!!」
突撃再開。
完全に及び腰になった小隊長騎士へと詰め寄る。
「ヒィーッ!? 来るなッ! 『聖光弾』!『聖光弾』!『聖光弾』『聖光弾』『聖光弾』『聖光弾』ッ!!」
相手は恐慌を起こし、光の矢を滅茶苦茶に乱射してくるが、だからこそ当たらない。
もはや弾き飛ばす必要もなく落ち着いて避けるだけで、すぐさま懐へ入り込めた。
「終わりだ」
そうして、その動揺しまくった顔に一発叩きこもうとしたところ。
ガジャキン!と。
僕の拳を受け止める者がいた。
慌てふためくだけの敵リーダーじゃない。
「ゆ、勇者殿……!」
と、小隊長は言った。
いきなり新たに現れて、僕と小隊長の間に入ったのは、他の騎士たち同様純白でピカピカに輝く鎧をまといながら、しかしその気配は他とまったく違う。
威厳、というべきものを発する。
美しい少女だった。