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384 貪る

「うわああああッ! 『フォビドゥン・ドライゼン』ッ!!」


 再びウリエルが、根のように伸ばした腕をルシファーの体内に潜り込ませる。


「木の根と化した我が体で敵を体内から裂き分ける『フォビドゥン・ドライゼン』ッ! 今度は全力でやってやる! そのクソデカい図体が崩壊するまで、縦横無尽に根を這わせてやる!」

「遅いですね」


 ルシファーは、新たに得た蝶の羽を羽ばたかせる。

 それだけでウリエルは吹き飛ばされただけでなく、伸ばそうとしていた木の根も乾いて粉々に砕け散る。


「四元素どもの神気は、それぞれ相性を持ちます。ルシファーが得た風の神気は、土を乾かし風化させる。つまり地の魔王さん? 風の力を得たルシファーに、アナタはもう勝つことはできない」

「煩い黙れェェ!!」


 神気の相性。

 これまでも散々戦いを支配してきたルールが、またしても僕たちの前にのしかかる。

 火は風に勝ち、風は地に勝ち、地は水に勝ち、水は火に勝つ。

 それが二極四元素の六属性における、地水火風の相性の関係。

 だからこそ地母神マントルが生み出した末たる地の魔王ウリエルは、風の神気こそ大きな弱点なのだ。


「うわああああああ!! おおおおおおおおッッ!!」


 それでもウリエルは突進をやめない。

 ヘタレかと思われたウリエルが、これまで果敢に立ち向かうなんて。

 それだけ仲間だったラファエルへの思いが大きいのか?


 しかしそれは、今の状況を悪化させる元にしかならない。


「待てウリエル! まず落ち着くのだ! 冷静さを取り戻せ!!」

「もう! ヘタレのくせに友だち想いなんかしないでよ!!」


 ミカエル、ガブリエルたちが必死に諫めるも、効果は薄い。


「うふふ……、では、その大切なお友だちの技で叩きのめして差し上げましょう」


 アテスの意志を汲み、ルシファーが極彩色の蝶の羽を広げる。

 そして、ヘビのごとく裂けた口から紡がれる、たしかな人の言葉。


「『四連災渦』」


 同時に、蝶の羽から煽ぎ放たれる四つの竜巻がウリエルを襲った。


「ぐぎゃああああああああああああああッッ!?」

「「ウリエルッ!?」」


 相性最悪たる風の極大神気攻撃に、ウリエルはなす術もない。

 襲い来る四つの竜巻の集中攻撃を受け、なす術もなくボロボロにされた。


「がふッ!?」


 そんなボロボロのウリエルを、ルシファーの巨大な手が鷲掴みにする。


「……ふむ、死にませんでしたか。思ったより出力が低いですねえ」


 その様子を見届けてアテスが言葉を吐く。


「やはり死に方が……。ハイネさんの暗黒物質によって、神気をほぼゼロまで消されてしいましたからねえ。ルシファーが吸収できた神気量も少なかったと……」

「ぐ、ううぅ……」

「まあ、アナタたちの翼自体が神気の変換器のような役割を果たしていますから、我がルシファーの尽きることなき光の神気さえあればどうにでもなるのですがね。でも、ないよりはあった方がいい」


 なんだ?

 何を言っている……!?


「つまり、こうすればアナタたちの神気ごと取り込めるというわけですよ」

「……なんだ? 何? まさか!?」


 ルシファーの手の中にあるウリエル。

 彼は驚愕し、恐慌した。

 何故なら、自分を持ったルシファーの手が、ルシファーの口にどんどん近づいてくるから。


「やめろ!? 待て! まさか食べ……!? 嫌だ嫌だ! 嫌……、ぐぎゃああああああああああああッッ!?」


 ばくん。

 そんな音を立てて、ウリエルは消えた。

 ルシファーの口の中に。


「ウリエル……!?」

「ウリエルが食べられた……!? あのバケモノに……!?」


 ミカエルやガブリエルも止めることができなかった。

 そんな暇もなく、淀みなく行為が済んでしまったし、あまりに異常な出来事に身も凍ってしまったから。


「こうして生きたまま取り込めば、アナタたちの有り余る神気ごとルシファーのものにできます」


 勝ち誇るかのような表情のアテス。


「本来なら死して翼のみを頂くはずだったのが、ケガの功名ですね。アナタたちが戦わない無能のおかげで、より良いルシファーの進化方法を見いだせたのですから」

「お前……!?」

「そろそろお気づきになったでしょう? 何故私が当初、アナタたちにへりくだってまで、アナタちと人間を争わせようとしたのか?」


 人間に……、魔王を殺させるためか……!?


 魔王は最初、万物の霊長の座を求めて、人間と争った。

 その争いが付き詰まれば、魔王と人間のどちらかが滅びる結果になっただろう。


「人間の側にはハイネさんもいればヨリシロもいる。四元素たちも何らかのアプローチはするでしょう。人間たちは多大な犠牲を払ってアナタたち魔王を全滅させる。そして残った翼をルシファーが回収し、完全体となる」


 そんなシナリオだったのか……。


「なのにアナタたちは怯懦にも人間たちにおもねり、争いをやめた。人間にも魔王にも犠牲が出ないなど最悪の展開です。部品の分際で私の予定を狂わせ、ルシファーを不完全なまま起動させた罪。ここで贖っていただきましょうか?」

「何度も言わせるな!!」


 ミカエルが激昂と共に言う。


「オレたちはお前の操り人形などではない! オレたちの存在する意義はオレたち自身で見つけ出す!!」

「そうよ! 生きたまま取り込んだってことは、ウリエルはまだ生きてるってことでしょう!? そのバケモノの体内で! 腹を掻っ捌いて助け出してやるわ!」


 と残る二魔王は闘志を失わない。

 しかし……。


「出来ますか? 水の魔王ガブリエル……?」


 ルシファーに、新たな変化が現れた。

 ヤツの背中から生え茂る。翼のごとき一対の樹木。


「ウリエルの翼が……!?」

「取り込んだウリエルの力まで、我がものとしたのか……!?」


 ルシファーは、元々持っていた光の翼に加え、風と地と、三対六枚の翼を揃えた。


「新しい力は、水属性に圧倒的な優位を誇る地の翼。ガブリエル、今度はアナタを取り込んであげましょう」

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