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38 相(愛)乗り

※ご報告とお礼

6/14現在、本作がハイファンタジー日間ランキング二位、総合日間ランキングで三位に入りました!

これもすべて応援してくださる皆様のおかげです。本当にありがとうございます。

本作も、この辺りから作者の地が隠しきれなくなってドタバタコメディ色が濃くなっていきますが、変わらずお付き合いくださって、むしろより楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。

それでは、本編をお楽しみください。

「水の勇者に会いに行く!?」

「何を言い出すんだカレン!? アイツに会って何をすると言うんだ!?」


「もちろん交渉するんです」とカレンさんは言った。


「あの人自身の気持ちはどうあれ、あの人の活動で、私たちの教団が困ったことになっている。それをやめるようお願いしに行くんです。教団同士での交渉が不調なら、私たち勇者個人でのパイプを使う」

「イヤ、その程度でやめるようなら既に教団から私たちに打診が来てるだろう。『お前らからも何とか言え』とか。アイツらだってバカじゃないぞ?」


 とミラクさん。どうにかカレンさんの突飛な行動を抑えようと必死なようだ。


「忘れたのミラクちゃん? 今の私たちには協力関係があるんだよ!」

「協力関係が!?」

「そうだよ。一人ずつなら聞き入れてもらえなくても。勇者が二人がかりで要求すれば、さすがにシルティスさんも断れないよ。私たちの協力関係はこんなところでも活きてくるんだね!」

「そ、そうか……。そう言われると、そんな気が……!」


 ダメだ。

 ミラクはカレンさんと仲直りできてからこっち、『協力』とか『力を合わせて』とかのフレーズにとことん弱くなっている。

 ここは僕が、補佐役としての使命を果たさなければ。


「待ってくださいカレンさん。たとえその案が行けるとしても、さすがに水の教団本部まで行くのはマズいでしょう」

「えぇ……?」


 なんかカレンさんからギロリと睨まれた。

 何で今日は、こんなに怖いのこの人?


「イヤ、考えて。ここから水都ハイドレヴィレッジまでどれくらい遠いんですか?」

「すっごい遠いです」

「少なくとも隣街のムスッペルハイムより遠いな。何倍も」


 ほらやっぱり。


「そんなところに行けば、ある期間本拠を留守にしなければなりません。その間にモンスターが発生したらどうするんです? そりゃ一匹二匹程度なら地元の人や騎士団が何とかしてくれるでしょうが、こないだのピュトンフライみたいな大群や、炎牛ファラリスみたいな超大型が出てくる可能性もゼロじゃないんです」

「そ、そうだぞカレン。そんな時こそ勇者の出番なのに『留守にしていました』となっては恥ではないか!」


 僕の意を汲んでミラクも畳みかける。

 これで何とか説得できるかと思いきや、カレンさんは誰にも屈しない勇者だった。


「それなら問題ありません」

「「え?」」


            *   *   *


 そして連れてこられた光の教団本部大聖堂の外延部。

 そこは、あの小型飛空機の格納庫としてすっかり定着してしまった場所だ。


「この子に乗っていけばハイドラヴィレッジへも一日足らずで着けます!」


 マジか。

 ヤツのスピードは身をもって知っているだけに、ウソだと言い切りがたい。


「後はこのエーテリアル制超広範囲通信機を持っていけば有事でも完全に対応できます。世界中どこへでも急行できますよ!」

「文明バンザーイ……」


「お手上げ」という意味も込めてみた。


「……アレ? でも小型飛空機って基本一人乗りで無理して二人乗りですよね? ミラクさんも加わって三人で行くには無理があるんじゃ……」


 起死回生の新しい反対意見。

 でもこれ、あるいは僕が留守番になってしまうんじゃ、それはそれで今のカレンさん野放しにすると困ると思ったが……。


「小型飛空機なら、オレが乗って来たのがもう一台あるぞ」

「お前も持っとるんかい!?」


 ミラクも小型飛空機をもっていた。火の教団のシンボルカラーらしい真っ赤に塗られたヤツだ。

「当り前だろう。比較的近いとは言っても光都アポロンシティと火都ムスッペルハイムは、それでも歩いて一昼夜はかかる。こんな乗り物でもなければ頻繁に通えるか」

「やっぱり頻繁に通ってるんじゃねーか!」


 しかしこれで本格的にハイドラヴィレッジ行きへの障害は何もなくなってしまった。

 強いて挙げれば、僕用の小型飛空機がないことぐらいだが、やはり僕は今日留守番?


「行きますよハイネさん。後ろに乗ってください」

「やっぱそうなる!?」


 カレンさんは既に小型飛空機にまたがり、僕にお尻を向けている。ここに座れと言わんばかりに。


「あ、でも言っておきますけど。この間みたいにしがみ付くと見せかけておっぱい握るのはナシですからね。絶対ナシですからね」

「もう勘弁してください!!」


 このネタで生涯いびられ続ける気がしてきた。


「オイお前ら、さっきからその話度々出ているが、どういうことだ? まさか本当に触ったのか?」


 そして再びカレンさん大好きっ子が騒ぎ出した。


「ふざけるな! そんなヤツをカレンの後ろに乗せられるか! そんなヤツ置いていけ! ……イヤ、閃いた。グッドアイデア。ハイネ、オレの飛空機にお前が乗れ! そして代わりにオレがカレンの後ろに座るから……!!」

「ミラクちゃん、黙ってて」

「はい」


 火の勇者弱い。


「ハイネさんは私の補佐役なんですから同行するのは当然です。いいから乗ってください。くれぐれも前みたいにおっぱい触らないでくださいね」

「は、はい……」

「絶対に――、触らないで――、くださいね?」


 なんでそんな一言ずつ区切って言うんです?

 ここまでしつこく念押しされると、むしろ触る方が正解じゃないかと思えてくるから不思議だ。

 同時に危険でもある。

 何故か知らないけどアイドルポスター広げてからすこぶる機嫌の悪いカレンさんに対して一つたりとも不正解は出せない。


「さー、行きますよー」


 僕の水都ハイドラヴィレッジへの道行は、悶々としたものとなるのだった。

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