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378 蛇神降臨

 こうして人間たちと魔王の交流がどんどん深まって行って何だこりゃ? となる矢先。

 ついに事態は大きな進展を迎える。


 実際のところ、僕らの方からできるアプローチは少なかった。

 問題を解決するためにもっとも積極的な方法はアテスを探し出して捕えることだが、その行方がまったくつかめない。


 世界全土に渡って指名手配はするものの、相手が神の転生者となれば行方を掴むのは容易ではないだろう。

 魔王たちが僕を避けて潜伏した時もそうだったからなあ。


 それで出来ることと言ったらそれぞれの都市が勇者を中心にして守りを固め、隙を突かれないようにすること以外なかったのだが……。


              *    *    *


「勇者様! 補佐役!!」


 今日も魔王たちの歓待で日を潰そうとしていた僕たちへ、光騎士の報告が飛び込んできた。


「緊急通信です!」


 緊急通信?

 今のご時世、発達したエーテリアル無線技術で遠く離れた他都市とも瞬時に情報を取り合うことができる。

 仮にどこかが襲われたとしても、瞬時に急報が飛んで、エーテリアル製小型飛空機で応援に駆け付けることができるというわけだった。


「風都ルドラステイツから緊急通信が……!」

「ルドラステイツ……、また随分近くだな」


 エーテリアル超巨大駆動機関の上に建つ移動都市でもあるルドラステイツは、今は急事に備えて、ここ光都アポロンシティ近辺に駐留していた。


 僕はカレンさんと共に通信室へ急行し、マイクに向き合う。


「こちら光の教団のクロミヤ=ハイネ! 風の教団の方、聞こえるか!?」

『ハイネ……、ハイネか……!?』


 この声。

 風の教主トルドレイド=シバじゃないか!


 教主みずから通信なんて。しかもその声音は聞くからに苦しげだ。


「どうした!? 一体何があった!? 状況を知らせろ!」

『……あのバケモノ……! 俺たちなどまったく眼中になかった……! まるで路傍の石ころを掃うかのように……! 都市一つ丸ごと……!』


 スピーカーが、遠くに離れたシバの声を、滲み出す悔しさまでそっくり再現する。


「おい……! おい! ルドラステイツは大丈夫なのか!? 被害は!?」

『安心しろ。こちらにさほど被害はない。……ヤツは俺たちを歯牙にもかけなかったので被害は最小限なのだ。……皮肉なことにな』


 声に、自嘲と悔しさが滲んでいる。


『あまりに突然のことで、こちらは勇者や風間忍を出す暇もなかった。ヤツは、たった一発の神気攻撃を放っただけだ。しかしその一撃でルドラステイツは吹き飛ばされ二、三度跳ねた』


 跳ねた!?

 ルドラステイツの街が丸ごと!?

 五大都市の中で最少とは言え、街丸ごとが駆動機関に乗った移動要塞みたいなものが、一撃で!?


『横転しなかったのは、ジュオが開発したバランサーの賜物だがな。しかしそのおかげでルドラステイツの駆動機関は完全に停止。内部の建物も多く崩壊した。我々は救援に向かえない。自都市内の救護活動で手いっぱいだ』


 え?


「何を言ってる? 救援に出るのは僕たちの方だ。すぐに極光騎士団に救援物資を運ばせるから……!」

『来るなッッ!!』

「ッ!?」


 一際切迫したシバの叫びに、僕は息を呑んだ。

 あのシバが、ここまで度を失うなんて。


『こちらの救援には来なくていい! お前たちは、自都市の守りを固めろ! そのために通信したのだ!!』

「!?」

『ヤツの目的はお前たちだ! お前たちのいるアポロンシティだ!! 我らがルドラステイツは、たまたまアポロンシティへ向かう進路上にあったために払いのけられただけ!!』


 どういうことだ……!?


『むしろ救援はこちらが出す! 事態が安定し次第、すぐにでもヒュエを向かわせる! だからそれまで持ちこたえてくれ!! いいな、生き延びろよ!!』


              *    *    *


 シバとの要領をえない通信を終えたあと、僕はすぐ光の大聖堂の外に出た。

 そしてルドラステイツのある方角を窺う。


「一体……、何が起こっているんでしょうハイネさん?」


 隣にいるカレンさんも不安そうだった。

 僕にもわからない。わからないが、恐ろしいことが起りそうなことはわかる。


「……? あの山脈……?」


 あの方角に山脈なんてあったっけ?

 いや、あるわけがない。

 駆動式の移動都市ルドラステイツは、凹凸の激しい山岳部をまだ走破できないため、進路は必ず平地を選ぶ。


 だからルドラステイツがあるはずの方角を向いて、山脈を見ることなんてあるわけないのに……!?


「!?」


 さらに不可解なことが起きた。

 その山脈が、グネグネと波打ち始めたのだ。


「山が……動く……!?」

「違いますハイネさん! アレ、山じゃないです!!」


 僕たちと同様、騒ぎを聞いて外に出てきた光の教団の関係者たちも、動揺しておののいている。


「山じゃなくて、ヘビです! 物凄く巨大な蛇がうねっているんです!!」


 カレンさんの言う通りだった。

 山と見紛うほど巨大なヘビが、うねりながらこちらへ迫ってきている!?


「あれが……、ルドラステイツをフッ飛ばしたのか……!?」


 あのヘビの頭と、尻尾の先はどこにあるのか?

 ヘビの体自体が大きすぎて、見つけ出すのも不可能だった。


 いや見つけた。


 蛇身をうねらせ迫ってくる、巨人の上半身。


「ヘビの頭が……、人の体になっている……!?」


 上半身は人、下半身はヘビ。

 しかも全体が山のごとく巨大。


 まさかこれが……、僕たちを脅かす最強最後の魔王。

 光を司る魔王。


 真魔王ルシファー!?

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