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340 列車の旅

 ヨリシロからの緊急指令?


 一体何事だ?

 そりゃあヨリシロの立場は光の教主。光の教団に所属する僕やカレンさんに命令する権限は大いにある。


 でもこの時期に、緊急と銘打って指令が送られてくるなど、一体どういう用件なのか想像がつかない。

 と、僕が困惑している隣で……。


「ドラハさん。一人でお使いに行けるようになったばかりか、見知らぬ人から呼び止められてもしっかり受け答えできるようになるなんて……! 感動です!」


 なんかカレンさんが感動しておられる?

 あの……、たしかにドラハは出自が特殊で、復活したての時は何も知らない幼児のようではありましたけれども……!


「でも実際にはそんな幼いわけではないんだし、買い物と見知らぬ人への応対が出来ただけで大袈裟では……!」

「ハイネさんは何も知らないからそう言えるんです!!」

「うひぃッ!?」


 なんか怒られた!?


「ドラハさんの人見知りの深刻さがどれだけだったか! ……もうハイキックで天井に突き刺さる被害者が出ないと思うだけで安堵です! 胸を撫で下ろします!」

「そ、そうですか……!?」

「大体ハイネさんは、私やヨリシロ様と一緒にドラハさんを見つけた人なのに配慮が足りません! だからドラハさんの些細な成長だって見逃してしまうんです! ドラハさんも日々進歩しているんです! しかも女の子なんですから、ちゃんと目を懸けて褒めるタイミングはその都度褒めてください!」

「すみません!!」


 なんか僕前回から連続して、子育てに関心のない父親みたいな怒られ方してるんですけど!?

 しかも毎回違う女性から!


 話が逸れた!

 ヨリシロが寄越してきた緊急指令って、一体なんぞや!?


「教団支部の使いの人から、電報を預かって来ました」


 とドラハの手から一枚の紙片を渡される。

 二つ折りになっているそれを開いてみると、印刷の無機質な字体ながら、ヨリシロの艶美さを匂わせる文章が記されてあった。


 以下はその本文。


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 謹んで申し上げます


 カレン様、ハイネ様。

 各地でのご活躍、わたくしの下へも届いております。

 わたくしの大切なお二人の勇名が響き渡ること、アナタたちの友人として、それ以上に心繋がる者として、誇らしく思います。

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「……電報の割には悠長な書き出しだな」

「それがヨリシロ様ですから」


 たしかに。

 アイツのマイペースを崩せる人間は、それこそここにいるカレンさんぐらいしかいないのではあるまいか。

 続きを読もう。


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 今は光の教団と友好関係にある他教団からの情報は、エーテリアル無線通信によって遅滞なく共有し合えています。

 この世界に現れた四人の魔王のうち、三人までもが人類の共存に前向きである。

 耳を疑う報告ですが、それが実現すれば何と喜ばしいことか。

 我々光の教団も流れに合し、世界が一つになる道を共に歩まんと準備するつもりでいます。

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「……まあ、魔王が現れた当初は想像もつかなかった展開ですもんね」

「すべてはミラクちゃんやシルティスちゃんやササエちゃんが頑張ってくれたおかげです! 皆は世界を守るだけじゃなく、世界を変えたんですよ!」


 と鼻息荒いカレンさん。

 ……ホント、信じがたい出来事が連続して起きたもんな。

 ふと思ったが、ウリエルのヤツは今頃どうしているんだろう? 無事息災だろうか?

 …………続きを読もう。


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 さて。

 ここで気がかりになってくるのが、風にまつわる方々です。

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 ふむ。

 風にまつわる連中か。


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 四魔王のうち火、水、地の魔王が人間への敵意を収めた今、残るは風の魔王。

 たしか名をラファエルと仰りましたか。

 彼の動向はいまだ不明で、決して楽観できる事案ではありません。

 それに加えて我が光の勇者カレンさんから始まり、ミラクさん、シルティスさん、ササエさんの四人が神勇者化を成し遂げた今、残るは風の勇者ヒュエさんのみ。

 彼女が神勇者化を果たせば、五大教団の神勇者が揃います。

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 たしかに。

 風の教団とその勇者については、風の教主シバが全面的に協力的であるため、他の属性のヤツらほど注視はしてこなかった。

 何しろ、シバの正体こそ風の神クェーサーが転生した者なのだから。

 クェーサーの転生者であるところのシバがその気になれば、すぐにでもヒュエは風の神勇者になれる。


 そう思って大変そうな火や水や地の方を先に取り組み、風は後回しになっていたんだけれども……。


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 予感がいたします。

 次にことが起こるのは風の教団であると。

 そこでカレンさん、ハイネさん、それにドラハ。

 三人は現在列車にて光都アポロンシティへの帰途についているとのことですが、進路を変更し、風の教団本部のある風都ルドラステイツへと向かってください。

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「これが本題か」

「緊急指令の内容ですね」


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 ルドラステイツは移動都市ですが、現在はその位置を明確に他教団へ通知してくれています。

 現在の居留地へは、ハイネさんたちの列車が向かっている次の駅から乗り換えることで最寄りまで行き着くことができるでしょう。

 風の教主シバからの許可は得てありますのでしばらくルドラステイツに留まり、何らかの異変があろうと対応できるよう備えてください。


 かしこ 光の教主ヨリシロ

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 なるほど。

 それで前の駅の支部に電報を飛ばして、伝言を預けていたというわけだな。

 しかし『何らかの異変に備えろ』って。命令にしてはえらくあやふやな……。


「ハイネさん、行きましょう」


 カレンさんは既に前向きだった。


「魔王たちは一斉に行動を起こしています。四人中三人が動いて、残り一人が何もしないなんてないと思います」

「ヨリシロの予感は当たる、……というわけですね?」

「ヒュエちゃんともしばらく会っていませんし、様子を見ると言うだけでも行く意味はあります!」


 次の事件は、風で起こるというわけか。

 たしかにあり得るような気がしてきた。光都アポロンシティにはヨリシロが戻ってきているし、もうしばらく空けておいても心配ないだろう。


 ならば行くか。

 風都ルドラステイツへ。


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 追伸

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 ん?


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 カレンさんへ。

 長い間、アナタからハイネさんを引き離してしまい申し訳ありません。

 今回の任務は、そのお詫びも兼ねて、と受け取ってください。

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 んん?


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 アポロンシティはわたくしに任せ、今度はアナタがハイネさんと、二人での旅路を楽しんでくださいませ。

 ドラハのこともよろしくお願いいたします。

 帰還するアナタたちのお土産話を楽しみに、わたくしたちの愛の巣でお待ちしております。

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 それを読んだ途端、カレンさんは感涙した。


「さすがですヨリシロ様! さすが我が教主! 私、一生ヨリシロ様についていきます!!」


 ……もしかしてヨリシロが、行先変更を指示したのって。

 本当にメインの理由はこっちなんじゃ……?

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