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318 理想像

 神勇者化したササエちゃんが、大人になった?

 いや大人になったササエちゃんが神勇者フォームなのか?


 どちらにせよ勇者の中でも最年少で、小柄であどけない蕾のようだったササエちゃんは今いない。

 今そこにいるのは、肉厚な花びらを大輪に割かせた豊満の美女ササエちゃんだった。


「いつまでマジマジ見とるさね!?」

「あいたーッ!?」


 教主のお婆さんから目潰しを食らう僕。


「目が! 目がァァーッ!?」


 どうして目を潰されたのか。

 それは他でもない神勇者ササエちゃんが、急激成長したことで着ていた服をビリビリ破ってしまったからだ。

 つまり、デカ乳デカ尻の大人ササエちゃんは、一糸まとわぬ全裸だった。


「あいやー? 一体何が起こっただすか?」


 とササエちゃん呟く。

 声質はソプラノからメゾソプラノ的にやや低くなったが、それでも口調はササエちゃんそのものだ。


「いや、ササエちゃん! それはこっちが聞きたいよぉ!!」

「ねえちゃ、へんしんしたー!」

「ねえちゃ、へんけいしたー!」


 ヨネコさんとその子どもたちも突然のことに驚くことしかできない。

 その間も僕は目を抑えて悶絶していた。


「目が! 目がァァーーーッッ!?」

「とにかくササエちゃん、何でもいいから服を着なよぉ! 嫁入り前の娘が素っ裸で外をうろつくなんて、はしたないよぉ!?」

「そうだすか? オラ今までそんなこと言われたことねえだす。夏場にまっぱで川泳いでも何も言われんかっただすよ?」

「いいからその無駄に実った体を隠さんかい破廉恥娘が!!」


 教主のお婆さんに怒鳴られて、ササエちゃんはようやく服を着ることにしたようだ。


「仕方ないだすなあ」


 目潰しのダメージからようやく回復し、視力を取り戻した僕は見た。

 全裸の大人ササエちゃん。その足元の地面がズズズ……と盛り上がる。ササエちゃんの体を、土が薄く覆っていく。

 その土は、ササエちゃんの頭部を除いた全身をくまなく覆い尽くし、その上で組成を変質させた。


「『繊維錬金』だす!」


 ササエちゃんの掛け声と共に、ササエちゃんを覆う土は、立派な衣装へと変わった。しかも一目見て高級品だとわかる上物の生地。絹とかサテンとかそんな感じだ。

 普通の縫製過程を経ず、従って縫い目もできないから天衣無縫。そんな羽衣をまとった大人ササエちゃんは、まさしく天女のようだった。


「あんれまあ、めんこいことぉ。まるでどこかのお姫様みたいだよぉ」

「しかも布地を錬金するなんて、細やかなこと……。ササエ、アンタ一体どうしちまったんだい? 突然色々ありすぎて付いて行けんさね」


 ヨネコさんもお婆さんも、親族に突然起こった大異変に戸惑いを隠しきれないが……。もっと戸惑ってもいいような……。

 ともかく、この異変に答えを告げられるのは僕しかいない。いまだ引かない目の痛みに耐えながらも、僕は搾り出す声で言った。


「し……、神勇者……!」

「「「神勇者?」」だす?」


 地の勇者ファミリーは打って響くように反応した。


「そうさね、何やら無線の報告で言ってたよ。そんなのが都会で流行ってるってよ」

「神様が勇者に力を分け与えるってヤツかい!? そんなの都会のホラ話とばかり思ってたよぉ?」


 カレンさん、ミラク、シルティスと神勇者が増えていき、名が広まるようになってきたか。


「ということは……、地母神マントル様が、オラに力を与えてくれただすか……?」


 大人化したササエちゃんは、自分で自分をたしかめるように、自分の体を見下ろす。

 凄烈なまでの色気溢れる、今の自分を。


「……何か、今なら何でもできる気がしてきただす。そいや!」


 ササエちゃんは、手に持つ地鎌シーターを地面に向かって突き立てる。

 それと同時に、ササエちゃん謹製、女神ゴーレムが地面から浮上する。


「凄い! 精錬速度がさっきまでとは比べ物にならないよぉ!?」

「神気を流すのと、ゴーレムが完成するのがほぼ同時でないかい……!? 相当な圧で神気を放たねば、ここまで速やかにはいかないよ……!?」


 さらにササエちゃんは意気揚々と大鎌を振り上げる。


「行くだすよ! 我が分身!!」


 精錬された女神ゴーレムは、ササエちゃんと共に駆け出す。

 ササエちゃんとゴーレム。それぞれが別個の生き物であるかのような動き。しかし、それは違う。ササエちゃんの生み出したゴーレムはあくまでササエちゃんの一部。

 モンスターとしてライフブロックを持つゴーレムと違って半自動操縦で動くことすらない。

 何から何までササエちゃんからの指示がなければ動かないのだ。


 仮に人間が四本の腕を持っていたとして、それを余すことなく自在に動かすことができるだろうか。

 二本の腕すら持て余し、どちらか一本を利き手と決めなければ文字も書けないのに。

 それと同じで、みずからの神気でゴーレムを作り出したササエちゃんは、体を一つ余計に持ったようなもの。

 自分自身の体と並行して操るなど至難の業であり、だからこそ双方を満足に動かせず、ヨネコさんに連戦連敗していた。

 しかし今は違う。

 神勇者となったササエちゃんは、自分自身とゴーレムとを充分に制御し、まるで二人でダンスを踊るかのように軽快な演武を見せていた。


「まるで自分の体が、自分のものじゃないようだすーッ!!」


 神勇者となって上がったのは、神気の出力だけじゃない。

 神気を操る精密性、演算力までも、それ以前とは比べ物にならないほど大パワーアップしていた。

 少女体型だった頃には身の丈に合わなかった大鎌も、大人の体には完全フィットして危なっかしさなど微塵もない。

 あらゆる点において完成を見ず、潜在能力の高さのみを光らせていたササエちゃんが、今ここに、唐突に、完成の域に上り詰めた!


「地の神勇者ササエ! ここに爆誕だす!! この力をもって魔王さんたちを、いっしょーけんめー膾に斬り刻んでいくだすよー!!」

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