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303 神と人と魔

 火の魔王ミカエル。

 突如空から飛来し、私たちを助けてくれたのは彼だった。


「火の魔王と火の神勇者……。二人がかりの極大炎で水の神気を蒸発させたの……!?」


 人と魔の究極が重なれば、苦手な神気と言えども対抗することができるの。

 でも何故?

 本来敵である魔王が、何故私たちを助けてくれるの?


「傷はもういいのか筋肉ダルマ?」


 戸惑う私たちを差し置いて、同じ火属性のミラクちゃんが気軽に話しかけていく。

 二人はつい先日、激闘を繰り広げた仲のはず。傷、というのも、その時負ったもののことを指しているのだろう。


「侮るな。お前が全快できているのに何故オレのみがダメージを引きずる?」

「それで何故オレたちを助けた? 人間は滅ぼすべき敵じゃなかったのか?」

「…………」


 火の魔王は、少しの間無言で前方を見詰めた。

 そこには水の神コアセルベートに体を乗っ取られた水の魔王ガブリエルの姿。


「……ガブリエルが何を企んでいるのか気になってな。ヤツの神気を辿ってここまで来てみれば、既にお前たちと戦っていた」


 えぇ……?


「人間が興味深い、学ぶべきところのある生命であることはお前との戦いで判明していた。より多くを学ぶため、最初は手出しせず、お前たちの戦いを観察するつもりだった。しかしそうも言っていられぬ事態になった」


 変わり果ててしまった水の魔王を、火の魔王は鋭く睨む。


「ガブリエル……! 邪なる者に惑わされ、その術中にはまるとは軽率極まる。しかし共に手を携えた同志を、見捨てるわけにはいかぬ」


 そのハンマーのように大きな拳を、ミカエルはかざした。


「邪なる者よ、ガブリエルから離れてもらうぞ」

「ハッ、操り人形風情が偉そうに……!」


 コアセルベートに乗っ取られたガブリエルの顔が、それ以前には絶対見られなかったような侮蔑の表情を浮かべた。


「勘違いしているアナタに教えてあげましょう。モンスターとは所詮魂なき疑似生物。私たち神が、神の役に立つために作り出した操り人形なのです。それなのに己を生命と勘違いし、あまつさえ霊長に成り上がろうなど、バカの極み、傲慢の極み」


 コアセルベートの悪罵は続く。


「モンスターは、我ら神の役に立つための道具であればいいのです。その点このガブリエルさんは、とてもいい道具ですよ。私の新たな体として優秀です。火の魔王、アナタもモンスターならば、神に使われる道具としての分際を弁えるのですな!」

「知ったことか」


 ミカエルが静かに答えた。

 炭火のように、静かに熱く。


「いかなる宿命に生まれてきたとしても、オレのゆく道はオレが決める。それはつまり……!」


 巨大な拳を突きつける。


「漢たるもの熱血たれ、だ!」

「その通り」


 ミラクちゃんまでもがミカエルの横に並び、戦いのかまえを取る。


「お前も火の教団の流儀がわかってきたではないか。語るべきことは拳で語る、ゆえに言葉は少なくていい。……しかし、あれと戦うには相当な覚悟がいるぞ」


 神魔王。

 そもそもが究極の神気保有者たる魔王の肉体に神が宿り、人からの祈りの力を無制限に吸収する仕組みを作り上げた。

 それに加えて属性は水。火属性であるミラクちゃんやミカエルにとっては最悪の相手。


『我が信徒のくせに何を腰抜けておるか!? 神と人と魔ならこちらにも揃っておるだろうが!!』


 荒っぽい口調でミラクちゃんを叱り飛ばすのは、炎牛ファラリスさんだった。


『いい機会じゃクソ水神に教えてやれ! この火の神ノヴァより発した炎に、焼き尽くせぬものなど何もないとな!! ワシは火の神ノヴァだ! お前らが崇める火の神ノヴァだ!!』

「うおっ? 何だウシ? いつにも増してモチベ高いじゃないか?」


 ミラクちゃんが指摘すると、火の神ノヴァ様であるところのファラリスさんは、むず痒そうに前脚で地面を掻いた。


『……不覚にもな、あの水の勇者が言ったことに得心してしまった』

「え?」

『「人から愛されることで神の高みに座れていた」と。まさしくその通りだ。炎牛ファラリスとして人の近くで暮らしたことで。やっとワシはその事実に気づくことができた……!』


 ファラリスさんは言う。


『神は、人に祈ってもらうことで神になれるのだ。最初から全知全能の神であるのはエントロピーぐらいのもの。それ以外のワシらなど、人に認めてもらうまでは所詮自然の一側面に過ぎなかった。お前たちが神と呼んでくれたから、ワシらは神になれたのだ……!』


 ウシさんはハタと気づいた風に、頭をブンブン振る。


『クソ……! クソッ!! 何を小っ恥ずかしいことを言っているのだワシは!? こんなのは本来エントロピーやクェーサーの役回りだ!! いいか、つまりワシが何を言いたいかというとだな……!!』


 神は言う。


『神は、人を絶対に見捨てはせん!! 何故ならば! 神もまた人から見捨てられたくはないからだ!!』

「フン、ひねくれ神め……!」

「これこそまさに、漢たるもの熱血たれ!」


 え?

 待って、これはまさか……!?

 薄々そうなるかもとは思っていたけど、これから始まるのは火の魔王と火の神勇者による共闘!?


「やるぞミカエル! 火が水に絶対勝てないか、実際に試してやろうではないか!!」

「仲間を救うために致し方ないことだ。しかし人間と共に戦う機会に巡り合おうとは。これも熱血のなせる技か!」


 女の子の割に長身のミラクちゃん。それに巨体のミカエル。

 二人の体から凄まじい炎が巻き上がる。

 それはファラリスさんから神の力を送られている結果だ。


「なるほど勉強になりましたよ! 人も神も魔も、火に属するヤツはどいつもこいつも単細胞だらけだとね!!」


 向かうはガブリエルの体を奪いしコアセルベート。

 ヤツに向けて、まるで太陽が地上に落下したかのような業火が走った。


「『プレデアス・バースト』ッ!!」

「『フェネクス・ハンマー』ッ!!」

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