252 充てなし
「……で、ここから先はどうするんだ?」
そうなんですよ。
ヨリシロがカレンさんを光の神勇者にし、シバがヒュエを風の神勇者にする。
勢いづいて「さあ次は!?」ってなりますよね? でもね……。
そこで終わり。
そこで終わりなんです。
他の属性の勇者たちは、神勇者になれる目途がまったくつかないのだよ!
「………………!」
「………………!」
「………………ッッ!」
ヨリシロとシバも、その点に気づいたのだろう。
僕ら三人は額を突き合わせたまま無言になってしまった。
「……まあ、まあまあまあ、まずは情報を整理していこう」
光のカレンさん、風のヒュエ。
この二人がクリアして、残っている勇者は三人。
火のミラク、水のシルティス、そして地のササエちゃんだ。
この三人が神勇者化するためには、それぞれの属性に対応する神の助けが必要なのだが……。
「その神どもが、どいつもこいつも役に立たなくて……!!」
「だよなあ……!」
「ですよねえ……!!」
ヨリシロもシバも、僕と嘆きを分かち合うのだった。
残り三人の勇者を神勇者化させるために必要な三人の神。
ここにいる僕ら三人を除く、残り三人の神。
火の神ノヴァ。
水の神コアセルベート。
地母神マントル。
これら全部を合わせて二極四元素、創世六神というのだが……。
コイツら三人どもが揃いも揃ってまったく頼りにならないので万策尽きようとしているのだ!!
で、コイツらが、どうしてクソの役にも立たないのか一人ずつ検証してみることにしよう。
まず火の神ノヴァについてだが、コイツは僕らと同じように転生して地上に暮らしている。ただ僕らのように人間に転生したのじゃなく、魂の宿り先はモンスター。
火属性モンスター、炎牛ファラリスというのがそれだ。
かつて僕との戦いによって無力化されたヤツは、今では火都ムスッペルハイムで飼われて大層自堕落な生活を送っている。
今でもちょくちょく顔合わせするが、完全にただのペットだった。
そんな火の神ノヴァだが……。
「この神勇者計画、ヤツに話して賛同を得られると思いますか?」
「無理に決まっているだろう。あの単細胞の馬鹿神が」
同じ四元素チームの仲間に対して痛烈な言いようのシバだった。
たしかに火の神ノヴァは、今でこそただの駄牛として人畜無害に見えるが、元々創世六神の中でもっとも過激な人間軽蔑派。
ヤツが炎牛ファラリスに転生したのも、モンスターの大火力で人間たちを焼き払おうとしたからだ。
「そんなヤツが人間を援助するために、自分が痛い思いをしてまで神勇者化に協力すると思うか? モシャモシャ反芻しながら拒絶するだけだ」
僕もそう思っていたので、ぐうの音も出なかった。
ノヴァを説得して、同属性の勇者ミラクを神勇者化させるのは、極めて困難と言っていい。
しかし、さらに絶望的なのは、このノヴァがもっともイージーな相手だということだ。
問題となる残り三神の中で、一応説得だけでも可能なのはノヴァのみなのだから。
「……コアセルベートのヤツは、どうしているんだろうな?」
「知らん。最近まったく姿を見かけんぞ?」
水の神コアセルベートは、創世六神の中でもっとも知略に長けた奸智の神(自称)。
あくまで自称。
こないだも一悶着あって、僕はヤツの地上用の体を破壊した。それでもヤツは神だから魂は何ともないはずだけど、それ以来会っていないな。
「わたくし、会いましたわよ」
「「え?」」
ヨリシロの発言に、僕はシバと共に驚いた。
会ったの? いつ?
「ちょうどハイネさんがマントルを消し去った時のことです。あの方は、創世六神の一人が消されたことで再びハイネさん包囲網を構築できると踏んだようです」
「それでまずハイネの天敵であるお前に擦り寄ったというのか? 相変わらずの姑息さだな……!」
僕もシバの意見に概ね同意。
それでどうしたの?
「即刻拒絶して、一通り罵倒したあと、仮初にしていたモンスターの体を粉々いしましたわ。でもこんなことになるなら捕えて虫かごの中にでも閉じ込めておけばよかった」
相変わらずヨリシロの四元素への怨念は根深いなあ。
しかし、仮にコアセルベートがここに現れたとしても、ノヴァ以上に説得は難しいだろう。
何しろヤツは、人間へ害ある点ではノヴァ以上。人間をオモチャ扱いして弄ぶ外道だから。
もはや論ずるにも値しない。
そういうことでコアセルベートに関しては、これで話はお仕舞となった。
「そして……、極めつけのマントルですが……!」
地母神マントル。
コイツこそがもうどうしようもない。
さっきの話にも出てきたが、何しろコイツは消滅して、この世界にいないのだから。
いないものを説得することも協力させることも、出来るわけがないではないか。
「八方塞がりか……」
「ですわね……」
話し合っていくうちにだんだんお通夜ムードになってきた。
これから魔王と正面からやり合おうというのに、まともな戦力となる神勇者が二人しか確保できそうにないというのでは、心もとない。
こうなれば……。
「仕方がない」
僕は席を蹴って立ち上がった。
「ここでウダウダ考えても仕方ない。行動あるのみだ。一パーセントでも可能性があるなら、実際それに懸けて行動してみよう」
「どういう意味だ? お前みずから魔王を倒しに行くというのか?」
いや、それは最後の手段だ。
それをする前にできることを全部しておきたい。
「では、ノヴァを説得しに行くのですか? 残り三神のうち、もっとも望みがありそうなのは彼ですが……!」
それも違う。
たしかに三神で、居場所がハッキリしていて説得できるのはノヴァだけだ。
だからこそアイツは後回しにしておこう。いつでも説得に向かえるからこそ、今、慌てて行動しなくてもいい。
「では……、何をするというのです?」
訳が分からなそうなヨリシロに、僕は答えて言った。
「地母神マントルを復活させる」




