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248 還る場所

 しかしその前に……。

 バタン! と病室のドアが開け放たれた。


「ハイネさん!」


 部屋に飛び込んできた輝かしき聖女。


「カレンさん!?」


 カレンさんは、一時の躊躇もなく僕に抱きついてきた。


「よかった! 本当に目を覚ましてる! よかった!」


 と僕の胸で泣きじゃくるカレンさん。

 そんなに僕のことを心配していたのか。


「しょうがないですねカレンさんは……。アナタだって初めての神勇者化で相当な負荷を負っていますのに……」

「はは……、まだ体がギクシャクしてます……!」


 ヨリシロからの指摘に、苦笑いするカレンさん。

 しかし彼女は、そのままヨリシロの袖を引っ張って、僕もろともギュッと抱きしめてきた。


「あっ……!?」

「おう……?」


 僕とヨリシロ、二人揃ってカレンさんの腕の中。

 そのギュッと込められた力から、カレンさんの想いと心が伝わってくるような気がした。


「私……、もうこの関係を壊したくないです」

「?」

「ハイネさんもヨリシロ様も失いたくないです……! ずっとこのまま、ずっとこのままでいたいです……!」


 ……。

 そのカレンさんの哀願に、僕は何も答えられなかった。

 人は変わっていく生き物だ。

 生きることは変わることであり、永遠に変わることがなくなることを『死』と呼ぶ。

 だからこそ変わり続ける人間は、変わることのない神より大したものというべきだが。

 ……だがそれでも、カレンさんが望む通りに変わらないものがあってもいいかなと思えるのだった。


「ハイネ様……、ヨリシロ様……」


 開け放たれたままの病室の扉から、小柄な褐色の少女がおずおずと入ってきた。

 影の少女ドラハ。

 僕の意識不明中、ずっと警護に寄り添ってくれていたらしい。


「申し訳ありません。誰も通すなと言われておりましたが……。さすがにカレン様を締め出すわけにもいかず……」

「いいのですよ、お話は終わりました。ハイネさんの面会謝絶は、これにて解除します」

「そうですか!? それでは……」


 ?

 ドラハがなんかいそいそしだした。

 振り返って病室のドアから外へ。


「皆さん、面会謝絶が解除されました。病室に入っても結構です!」


 と言った途端……。

 ドオオオオオオオオオォォォォーーーーーッッ!! っと!

 人の流れが病室に注ぎ込まれた!?

 なんだこの人数は!?

 軽く五十人はいるんじゃないか!?

 病室は俄かにバーゲンセール状態に!!


「ハイネーッ!? クロミヤ=ハイネーッ!? 元気ですかァーッ!?」

「その声はグレーツ騎士団長ッ!?」


 よく見たら黒山の人だかりの中に、ほんの一ヶ所黒くない反射光が。

 つまりハゲが。


「お前はァー! 極光騎士団の誇りだぞぉー! それから痛い!? 痛い痛い痛い!? 誰なのオレ様のケガしてるところ執拗に押してるのは!?」


 あの人は騎士団長になっても相変わらずだなあ。

 結局ハゲで熱血なんだあの人は。


「ハイネ補佐役! ハイネ補佐役!」

「その声はベサージュ中隊長!」

「お見舞いにシルたん抱き枕を持ってきたぞ!! 養生中はこれをベッドに並べて眠るがいい!!」

「持って帰って!!」


 いよいよシルティスファンであることを隠しもせずになってきたあの人!

 そのうちどこかで歯止めをかけないと!


 それ以外にも、今病室に詰めかけているのは極光騎士団で仲良くなった騎士たちや、それ以外の教団関係者――、いずれも一般職。

 それに、問題の図書館立てこもり事件で人質になったので、一言礼を言うために訪れた人たちもいるようだった。


「ヨリシロ様ァ、そろそろ大聖堂に戻っていただかないと、執務の滞りがァ……!」

「あらミナさん、ちょうどいいのでここでわたくし成分の補給をしておきましょう」

「やめて! 抱きしめないで! せっかくアテスお姉様の成分が抜けてきたのに! 今度はヨリシロ様依存症になってしまう!? やめてせめておっぱいを揉まないで!! 尻も撫でないで!! むはぁぁ~~~~~ッッ!?」


 …………。

 こうして見ると、光の教団の中だけでも随分と知り合いが多くなったものだなあ。

 初めてここに来た時は、皆が他人だったものだが。

 僕の居場所は、この世界にたしかにある。

 ここにも、この以外のあらゆる場所にも。

 それがとても幸福なことであり感謝すべきことをであると、僕は改めて思うのだった。

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