14 独りよがり反省会
「失態! 失態!! 大失態だッ!!」
ここは光の教団本部、光の大聖堂内の一角にある会議室。
モンスター騒動を鎮圧し、被害者を家に送り届けるなど事後処理を済ませて帰還してきた僕とカレンさんは、すぐさまそこへと呼び出された。
そこで待っていたのは見るからに偉そうな人たちがたくさん。
その中にいる、騎士の鎧を着た人が何だか凄く荒れていた。
「勇者カレン! 今回のモンスター掃討任務、失敗と言う他ありませんぞ! よりにもよって火の教団などに手柄を奪われるとは最悪です!! これ以上の失態がありますか!」
と騎士の人は、紙束を机の上に叩きつけた。
気になった僕が、その紙束を引き寄せてみてみると、その紙面には、こんな見出しが躍っていた。
『レティシアの森のモンスター騒動 火の勇者大活躍』
僕これ知ってる。新聞ってヤツだよね。
何でもエーテリアル動力で動く、同じ文字同じ絵を何百枚も印刷する輪転機とか言う機械があって、それを使って日々のニュースをあちこちにばら撒くんだそうだ。
ここに戻る途中、カレンさんも新聞記者からの取材を受けて、同行していた僕もその存在を知った。
「勇者カレン、アナタの勇者としての責務は何ですか?」
「……モンスターの脅威から人々を守ることです」
「それによって光の女神インフレーション様の神徳と、我ら光の教団の威厳を内外に知らしめることです! それなのに今回の結果は、まるで我々が火の教団より劣っていると言わんばかりじゃないか!!」
「ドッベ騎士団長、落ち付かれよ……!」
「これが落ち着いていられますか!!」
周囲からなだめられるも、騎士鎧を着た騎士団長と呼ばれた人物は鎮まる様子がない。
っていうか、あれが騎士団長なのか。
「……勇者カレン。小官は前々から騎士団長として、アナタの勇者としての資質に疑問を持っておりました。いい機会ですから今日はそのことを徹底糾弾させてもらいます」
「……はい」
カレンさんは、騎士団長の発言に力なく承諾した。
モンスター討伐に力を尽くして帰ったばかりだというのに、僕の耳はまだ彼女にかけられるねぎらいの言葉も聞いていない。
「まず勇者カレン、今回アナタが現場へと向かう際、エーテリアル動力の小型飛空機を使用したと聞きましたが、本当ですか?」
「……はい」
「あのような人を堕落させる邪悪な機械、我が教団内での使用は全面禁止です。勇者たる者が率先して規則を破るなど言語道断!」
「…………ッ」
「その機械は即刻解体処分とします。いいですか勇者カレン、アナタも光の教団を代表する者ならその自覚をもち、規則を守って……!」
「規則がモンスターを殺せるんですか?」
その言葉に会議室がシンと静まり返った。
誰も口を挟む様子がないので、僕はそのまま続ける。
そう、発言したのは僕だ。
「規則を守ってモンスターを倒し、人々を守れるんならどんどん守ればいい。でも現実は違う。迫りくる脅威に対して規則なんて何の役にも立たない」
「な、なんだとぉ……!?」
騎士団長の敵意が僕の方に向く。
「何だお前は!? 私は極光騎士団長ゼーベルフォン=ドッベだぞ! その私に盾突くと言うのか!?」
「異なる意見を寄せ合って意思の統合を図るのが会議でしょう。アナタはその前提から否定するんですか?」
隣でカレンさんが、心配げな視線を送ってくる。
他にも、会議室には何人もの偉そうな人間が雁首揃えているが、やはり一言も挙げず、物珍しそうに僕のことを眺めるのみ。
だから、僕も構わず進める。
「では騎士団長さん。アナタはカレンさんの小型飛空機を親の仇みたいにこき下ろしましたが、しかしカレンさんはアイツのおかげで現場に一番乗りできた。その成果を無視して解体処分というのは乱暴すぎやしませんか?」
「機械は、人間を堕落させ、神への信仰を失わせるものだ! 存在自体が悪なのだ! それを解体処分にして何が悪い!」
「神への信仰をもっとも失わせているのは、アナタなのに?」
「何ッ!?」




