108 追跡
どうしよう、私のせいだ。
光の大聖堂の廊下を全力疾走しながら、私は自責の念に苛まれまくる。
せっかく仲良くなれたのに。
地の勇者ゴンベエ=ササエちゃん。
生まれて初めて故郷を離れ、心細さの絶頂で訪れた異郷で初めて出会った心許せる相手。
それが私たちだったはずなのに。私は彼女から告げられた事実を受け入れきれずに、彼女ごと拒絶してしまった。
これでは裏切るために信頼させたみたいなものじゃないか。
彼女が告げた事実の真意は、今はもうどうでもいい。
ササエちゃんに追いついて、一刻も早く謝らないと。
大聖堂の談話室から飛び出したササエちゃんは、いまだ大聖堂の中にいる可能性が高い。
広くて迷いやすいから、ここって。
手分けしたミラクちゃんやシルティスさんが先に見つける可能性もあるけど、何としてでも私が最初に見つけて、しっかり謝罪したい。
「……うわッ!?」
「カレンかッ!?」
途中、曲がり角でミラクちゃんと鉢合わせした。
「どう!? ササエちゃんいた!?」
「影も形もないな……! ここで鉢合わせということは、オレとカレンの探索エリアにはいなかったということ。となれば……!」
と考え合わせていたその時だった。
ズドンと、建物全体を揺るがすような物音。
近くにあった窓から身を乗り出すと、遠くから見える水柱。シルティスちゃんの仕業に違いない。
「あの方向は……! 外の広場……!?」
「何をやっているんだアイツは!?」
ともかくも何かがあったことには違いない。
ここはマナーとか気にしている場合じゃないと、窓からジャンプし、光の神力で落下衝撃を相殺しながら水柱の地点へ急行する。
「ッ!? オイ待てカレン!!」
ミラクちゃんもそれに続いた。
この光の大聖堂は元々私の本拠地。だからわかる。あの水柱の上がった地点は、広場。普段は極光騎士団の人たちが自分たちを鍛えるために使う野外練習場だ。
だから広くて遮蔽物もなく、あれぐらいの水柱を上げたところで問題なんかないだろうけど……。
でも、そもそも何故シルティスちゃんはあんな技を使ったの?
* * *
……とか言ってる間に到着。
まず目に入ったのは、シルティスちゃんの後ろ姿。
「ああっ、やっときたわね待ってたよー!!」
捜索でバラけてから、いくらも経っていないはずなのに。まるで数年来の再会のように待ちわびた風のシルティスちゃん。
「シルティスちゃん……! 何かあったの!?」
「説明するより見た方が早い! アレをルック!」
そうしてシルティスちゃんに促されて見てみると……。
「ッッ!? モンスター」
そう、野外訓練場にモンスターがいた。
初めて見るタイプのヤツだが、アレは間違いなくモンスターだ。
大きく人型。見たところ土か鉱物のような材質でできている。
基本モンスターは見た目に統一性がある。火属性なら陸上の獣か鳥類。水属性なら魚などの水棲生物。風属性なら虫類という風に。
でもあんな形態のモンスターは初めて見る。大海竜戦で会った黒巨人さんとも雰囲気が違うし、一体……?
やはり訓練場であるため、鍛錬中の光騎士さんたちも多くこの場に居合わせ、唐突なモンスターの登場に驚き戸惑っている。
「まさかこんなところでモンスターが……! それでシルティス、ササエの方はどうなった?」
あとから追いついてきたミラクちゃんが尋ねる。
「……いるじゃないの」
「え?」
「だからいるっての! ホラあそこ!!」
シルティスちゃんの指さす先には、例の土人形型モンスターが。
どういうことかと目を凝らすと、巨大な土人形の背後にちょこんと女の子が。
「ササエちゃん!?」
何であんなところに? モンスターの足元と言っていいぐらい近くに……!?
「何故そんなところに……! 危ないわ! 早く離れて……!!」
「うるさいだす!」
突き刺すような拒絶の言葉。
「どいつもこいつも……! 都会の人間は皆、敵だす! 味方はこの子だけだす! 『ゴーレムの坊や』! アイツらを近づけねえでけろ!!」
すると土人形型のモンスターは、ササエちゃんの願いを聞き届けるかのように私たちに向かって突進する。
「うわぁッ!?」
回避のために一歩後退。
そしてササエちゃんは、一人土人形の立っていた場所にそのまま残り、さらに旅のために携帯していたのだろうリュックサックから、何かを取り出した。
「何アレ……? レンガ?」
「ヤバイ! また……!?」
そのレンガを見て、見るからに焦り出すシルティスちゃん。
「アイツ、また同じものを生み出すつもり!?」
「同じもの? 生み出す?」
「アタシがあの子を見つけて、ここまで追い詰めたの。そしたら、あの子、今と同じようにリュックからレンガを取り出して、それに何か書きつけた。そしたらレンガを中心にその辺の土やら石やらが集まり出して、完成したのが今目の前にいるデカブツよ!!」
え? じゃあ……!?
今ササエちゃんがもっている二つのブロックは……!?
「出でよ! 『ゴーレムのお父さん』『ゴーレムのお母さん』!!」




