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09 文明の片鱗

 グレーツ中隊長の説明によると、この属性計測器は人の属性を計るための道具らしい。

 それって入隊試験の時に使った属性盤と同じものじゃん、というツッコミを入れると、中隊長は歯切れが悪そうに補足説明してくれた。


「コイツは属性盤よりも優れものでな。エーテリアル動力でより細かく、正確に属性を計測できるんだ」

「エーテリアル動力!? それって機械じゃないですか!」


 フラストが声を上げるのを、グレーツ中隊長がキッと睨み付ける。


「だから他言無用と言ったんだ! いいな誰にも言うなよ! 特に騎士団長辺りには絶対だ!!」


 中隊長の眼力に、フラストは魂消てシナシナと萎れる。

 二人の会話には、いまいち要領を得ないところがあるが、そこはひとまず置いておいて……。


「つまりこれなら、属性盤より詳しく属性を計れるってことなんですか?」

「そうだな。百聞は一見に如かず。……オイ、貴様レウストルの町で志願してきたフラストだったな」

「えっ? はい……!」


 中隊長クラスがフラストの名を知っているとは意外だ。


「オレ様は入隊試験の担当官だぞ。新人のリストにはキッチリ目を通しておるわ。フラストに属性計測器を合わせるぞ……」


 属性計測器の表面には、五つの枠が載っていて、フラストに向けられると同時に枠内に光の文字が浮かぶ。文字というか数字が。


地105 水130 光128

火214 風309


「おおっ!?」

「フラストは、火属性寄りの風属性特化か。309はかなり高い数値だぞ。ルドラステイツにある風の教団に行っていれば、旋風遊撃団入りは間違いなかったろうな」

「マ ジ で !? オレ今からでもそっちに……!!」

「ダーメ、貴様はもう光の教団に入ったんだから逃がしゃせんぞ」

「えぇーーーーッ!?」


 属性盤なら、もっとも強い属性を指し示すだけのところを、属性計測器ならその人が各属性へどれだけ強い適性をもっているか数字で示してくれるというわけか。

 たしかに得られる情報量がまるで違う。


「……あの、グレーツ中隊長、質問いいですか?」

「何だ?」

「フラストって、一番強いのは風属性ですけど、二番目に強い火属性もけっこうな数値だと思うんですよ」

「そうだな。214は、光属性だったら充分騎士団入りの合格数値だ」

「うっそーーーーーんッ!?」


 現実に打ちのめされるフラストは無視して話を進める。


「それって、たとえば今回の入団試験で属性盤が光を指さなかった人でも、第二属性が光で、しかもそれが充分な数値だったら合格できた。そんな人がいるってことじゃないですか?」


 その質問に、グレーツ中隊長は今までにない重々しい口調で答えた。


「……まったくもってその通りだ。属性盤は結局、一番高い属性を示すものでしかない。言い換えればたとえ光属性の数値が100でも、他の数値が全部99以下なら合格できてしまう。逆に光属性が300であったとして、他に301の属性が一つでもあれば不合格になってしまう」

「何だそれー? なんかおかしくないスかー?」

「フラストの言う通り。だがそれが光の教団の、イヤ、この世界すべての現状なのだ」


 この世界すべての現状。

 その言葉に嫌な響きを感じたが、それもまた今は置いておくしかない。


「それよりも! 本題は貴様だクロミヤ=ハイネ! 貴様をこの属性測定機にかけてみるぞ!」

「そっかー! 属性盤じゃ針へし折ったって言うけど、この機械なら別の結果が出るかもしれないってことですよね!?」

「そのとーり! オレ様って天才じゃろ!?」

「天才ッス! よっ、英雄、勇者! オレのことも騎士団に入れて!」

「ハハハハ! 無理でーーす!!」


 何だろうこの二人の速やかな意気投合ぶり? シンパシーでもあるのだろうか?


「イヤ、でも僕は……!」

「物は試しだって! そりゃ、属性計測器をハイネに合わせて……!」


 そしてはじき出された数値は……。


地000 水000 光000

火000 風000


「ハイ、しゅーりょー! 撤収、てっしゅー!」

「期待したオレがバカだった! ハイネ君はできる子なんて、オレの抱いた幻想だった!」


 そんなこと言われても。

 繰り返して言うが、僕は闇の神の転生者。属性は絶対的に『闇』だ。

 恐らくこの属性計測器も、人の属性を完全に計るには機能が足りないのだろう。

 もしこの計測器に、六つ目の項目があったなら、そこには999の数字が刻まれていたと思われる。


「んー、でも属性値ゼロとか本当はありえんのだがのう? どんなに低くても普通なら100はあるもんだぞ?」

「マジすか!? ハイネお前大丈夫? 悪いもんでも食ったんじゃね!?」


 食べ合わせで属性が決まるとかそれこそありえないだろう。

 人間は、六人の神がその神力を合わせて作り出したもの。だから六属性が混在している。

 本当なら六属性がバランスよく混じり合っているのが理想的で、偏りがあるのはマズいのだ。


「……もしかして属性盤の時みたく、ハイネのせいで壊れたかの? やべーな、これレンタルなのに……!」

「そういえば、グレーツ中隊長。最低値は100ぐらいとして、逆に属性値の上限ってどれくらいなんです?」


 何となく気になって聞いてみた。

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