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ダ女神と悪執事の救世術  作者: 式神 影人
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貴公は一体……



「さぁさぁ、ちゃんと列んでね。沢山あるから慌てないで」



『・・・・・・』



 女夢魔の一団は唖然としていた。何故なら目の前では宴が始まっていたからだ。カレーライス、海鮮鍋、ローストビーフ、BBQ、海賊焼きなどなど、とても食欲を掻き立てられるよい匂いだ。

 ぶどう酒も樽が何個も用意され、並べられた屋台ではカチュアやダーナ達、聖呀の毒牙に…いや、堕とされ……じゃなく、説得で目が覚めた女性達が頑張っている。


「美味ェ!美味いよ!生きてて良かったぁぁぁぁぁ!」

「これが噂に聴いた“変態鬼畜の調教メニュー”なのか!これなら納得せざるをえない」

「最近は貴族でも燕麦パンをかじってるって話しなのにこんな美味ぇモン食えるなんて〜〜〜」



 歓声を上げる騎士・傭兵団、男性陣はその場に座り込み、女性陣は日除け付きの円型テーブルを囲んで座って笑顔を綻ばせていた。 これら料理や屋台は全て目にも止まらぬ早さであれよあれよという間に聖呀が用意してしまった。


「ダーナちゃん、もう一杯くれ!」

「コイツ等なんて適当に食うからカチュアさん達も交じって食べなよ」

「いやぁ、こんな内陸で新鮮な魚が食えると思わなかったぜ。これ、聖呀の“港の女”からの貢ぎ物だろ?」

「妾を愛人呼ばわりするで無いわ!」

「“妾”って“愛人”って意味もあるぞ」

「なっ……」


 ショックを受けているのは冒険者ギルドのストーレン支部、元支部長秘書の海竜王女ヴァイアだ。聖呀の頼みで海の食材を二つ返事で集めてくれた。

 遠く離れた町に居た筈のカチュアやダーナ達も一瞬で連れて来られていたのだが、妙に頬が上気だっていたので移動中にまた何かされていたのだろう。


「わっち等を無視していきなり何をおっ始めておるのじゃあああああああ!」

「ホラ、“腹が減っては何とやら”ですよ。貴女達も如何ですか?」

「わっち等の食事はオス共の精気じゃ、そのような物は必要無いわ」

「そうですか、それは残念……。あ、おかわり如何です?プチフールもご用意しておりますのでご希望の物をおっしゃってくださいね」


 高く掲げたティーポットからカップへと優雅に紅茶を注ぐと芳醇な香りが漂う。聖呀らしからぬとても絵になる所作だ。


「美味え!何だよコレ?こんなん初めて食ったぜ」

「もう、ちょっとはお上品になさいませ。あ、ワタクシは木苺のタルトとガトーショコラを」

「アタシはえっ〜と、面倒臭ぇから全部くれ!」

「………アップルティーおかわり。ハチミツ多めで」

「美味しいです、ご主人様。でも私がご奉仕されるなんて……」


 夢魔とはいえ精気だけを食している訳では無い。これでも女の子なのだ、可愛い物や甘い物には目が無いし、別腹だ。

 だがこんな程度で懐柔される訳にはいかない。自分達は人間を捕食する者、人間の上に立つ者なのだというプライドがある。強者はただジッと待てばいい。

 どうせ喰らうのであればスカスカよりコッテリとギンギンな方がいいに決まっているのだ。……だがしかし……、だがしかし………。


「姐御〜〜〜〜」


 指を啣え、上目遣いで訴えかける部下の女夢魔達。


「ええ〜い、もうッ!」




 最早それからはカオスだった。先程まで互いに剣戟をかわしていたにも拘わらず、今は盃を交わしている。女夢魔達はコンパニオンの如く甲斐甲斐しく男性陣の間を動き回って接待しながら時折少しずつスイーツや精気をつまみ食いしていた。中には浮かれて脱ぎだす夢魔までいて、男性陣は大いに盛り上がった(色んな意味で)。




「のう、勇者様よ。わっちゃあ聞きたい事がありんす。どの雌からも勇者様に発情しとる匂いがするが、どれからも勇者様の“匂い”がしんせん。一体どういう事じゃ?」


 性交が食事と同じ意味合いを持つ夢魔にとっては当たり前の事なのだろうが、年頃の少年少女には些かストレート過ぎる質問だった。

 噂では聖呀からアクションを起こし、堕としているにも拘わらずそういう関係に至っていない。好意を持つ=性交である夢魔には聖呀の行動が理解出来ないようだ。

 そんな夢魔の質問に聖呀は微笑みで返すだけだった。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「グウオオオ……」

「ば…馬鹿な……、こちらの攻撃が一切効かぬとは、化け物か!?」

「ひ…怯むな、撃て!討てええええええええ!!」



 ストーレンから船で二週間、そこには更にから広大な大陸があった。そこには南に在る一つの大国の圧政に苦しむ様々な小国が在り、その小国達が連合を組んで数ヶ月もの間、戦争を続けていたのだ。各所に点在する村々は働き手を戦地に取られ、畑は荒れ、少ない食料を狙う野盗や魔獣の恐怖に怯え、日々暮らしていた。

 そんなある日、鬩ぎ合う二大勢力の真っ只中に一人の少年が降り立った。魔法も物理攻撃も物ともせず、全てを無効化する人知を超えた存在に皆が恐怖した。

 その傍らで黄色い歓声がとぶ。その数、約20人。


「ダーリン、頑張ってくださいましーーー」

「ご主人様、早く〜〜。これ以上“待て”はツライです〜〜」

「主様、妾にも暴れて欲しいのじゃ」

「勇者様よ、今宵はわっちの番ゆえ、力は控えてくりゃれ〜〜」


 内容はともかく、まるでチアガールのようだ……。


「……と、いう事なんで、皆さん飯でも食いませんか?」


 軽く手を掲げるとその場の猛者全員が崩れるように膝を着いた。


「ま…まさか、闇のように黒き髪と眼、悪魔が翼を畳んだ如く伸びる一対の尾を持つ黒い服。そして連れ廻すハーレムの女達…貴様が噂の……」

「両軍併せて数千にも及ぶ軍、これだけの戦力を一瞬にして制するとは……貴公は一体何者だ!?」



 燕尾服を纏った少年は掲げた手を胸の前へと持って行き、恭しく頭を垂れた。



「俺ですか?俺はこの世界を護る為、皆様に奉仕する執事でございます」




      ―完―

 駄文にお付き合い頂き誠に有り難うございます。

 ダ女神と悪執事の救世術はこれにて閉幕でございます。

 ただ番外編が有るやもしれませんので、まだ完結とはなりません。

 その際はまたお引き立ての程を……。m(__)m

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