初めての町、初めての差別
牛の獣人を加え、亮は森の中を進んでいた。まだ体が本調子ではない子供であるから、今は亮が背負って移動している。痩せている為か驚くほど体重は軽い。また背負っているので魔法を使い遠慮なく速度を出せる。野宿で夜を明かしたその当日の内に、森は抜ける予定である。
「リョウ様、重くない?」
「いや、むしろ軽くて拍子抜けしてるよ。これからもしっかり食べるんだよ、ハナ」
獣人の子には名前がなかった。それまで必要なかったのだろう。しかしそれでは亮が困る。そこで少し考えた結果、『ハナ』という名前を付けた。そしてなぜかハナは亮の奴隷となることを決意していた。その時の事を思い出して、思わず亮は顔をしかめる。
ラナが言うには、人間の多いこの世界で獣人が生活するには何者かの奴隷になるか魔族の領地に入らなければならないという。何者かの奴隷、つまり持ち物になれば最低限の生活は保障される。もちろん主人にもよるのだろうが、虐待を受けるような事は少なくなる。魔族の領地には人間がいないため虐待を受けることもない。しかしその境には『魔の森』と呼ばれる大森林が広がり、そうそう簡単には移動することができないのだという。
それで奴隷か、と納得してしまう自分がいた。正直なところ奴隷という言葉に良い印象などない。強制労働や、それこそ虐待につながる言葉だと考えている。しかしそれは自分がそうならないように注意していけば良いだけの話。亮はそう自らに言い聞かせた。
「リョウ様の魔法はすごい。こんな速さで走れるなんて」
振り落とされないよう、しっかりとつかまっているハナが少し興奮したように言う。あまり外に出られず、集落では魔法を使う者が少なかったのだろう。今朝見せた、簡単な火種の魔法にさえ大げさに驚き感動していたのだから。
「そうだね。魔法ってのは本当にすごいよ」
彼自身の力ではない為、どうしてもこうした言い方になってしまう。だがさすがにこの森を魔法を使わずに抜けるというのは無理がある話だ。魔法の力に感謝しながらも、まだまだ自分には鍛える余地があるなと考える亮である。
『主、進行方向左です。この速度ですとあと十分ほどで広場に出られます。ハナのためにもそこで一旦休息をとることをお勧めします』
「わかった。そうしよう」
いくら背負われているだけとはいえ、高速で走るその背中であれば緊張もするだろう。身体が強張ることも考えられる。加えて用足しも必要となれば適度な休息は必要不可欠。目指す町に繋がり一般的に使われる道までの距離と所要時間を考えて、問題なしと判断する。このペースならば暗くなる前に森を抜けられるはずだ。
ハナが居た集落からは道らしい道などはなかった。一本の獣道が通っていた程度だ。折れ曲がりさすがに効率的ではないと判断した亮は、ラナに街道へショートカットする道の案内を頼んだ。それに従って走り続けていたわけだ。おかげでその時間は大幅に短縮された。もちろん足の速さもあるが、馬よりも早いというのは普通では考えられない。
そのようにして数度森の中の広場で休息をとりながら、亮がハナを背負って走り続けた。そして予定通り暗くなる前に森を抜け、自然の河川敷で二回目の野宿を行うことになった。
一晩ぐっすりと寝て、今日一日ほとんど動かなかったハナが枯れ枝を拾ってくる。亮はそれを重ね合わせて焚き火を作る。その間にラナは食事の下準備を始め、二回目とは思えないほどの分担作業である。本格的に夕食の準備を始めるラナはそのままにして、亮はハナに乞われて運動方法を教えることになった。と言っても亮が知っているのは部活動の練習程度である。ただ、体力があまりないであろうハナに本格的な運動はまだ早い。そう考えた亮はラジオ体操を教えることにする。
ラジオ体操と言っても本格的に毎日行えば、体操選手の身体を作れると噂されるものだ。亮が知るのはその体操にちょっとしたコツを加えた程度のモノ。剣道部の顧問から教わったものだが、何が幸いするかわからないものである。
「フゥ、フゥ」
「ハナ、無理はしたらだめだよ。まずは自分に出来る範囲でいいんだから」
一通り体操を行ったハナは息をきらしている。やはりまだ運動ができるほどではないと思えた。だが言われたハナはそう考えていない様子である。
「フゥ、これぐらい大丈夫。私はいずれリョウ様を守るんだから」
健気で、それでいて強い視線。恐らくは本気でそう考えているからだろう。熱い視線を向けられて、その目と目を合わせるのが何やら眩しくて亮は思わず逸らしてしまった。あまり良くない態度なのだろうが、真正面から視線を合わせられるほど亮は自信がない。
「はは。まぁ期待して待ってるよ」
「ぶー。あんまり期待してないみたい!」
年相応に頬を膨らませてむくれる。いかにも子供っぽく、微笑ましい。ポンポンと頭を撫でて美味しそうな匂いに顔を向ける。
「さて、それじゃ食事にしよう。ハナ、この体操は毎日続けることが肝心なんだ。僕が忘れていても自分ですること。いいね? ラナも一応気を付けておいてくれ」
「承知いたしました。では、二人とも夕食ができています。ハナは少しでもいいので肉を食べなさい。主は主でハナを甘やかせすぎないようお願いします」
それまでの食事を見て注意点があったのだろう。確かにハナは肉を殆ど食べず、その残した肉を亮が食べていたのだから間違いはない。二人同時に返事をしてそれぞれの器にとりかかるのだった。
食事もすんで一息つく。ふと自分の体臭がきになった。あまり疲れていないとはいえ相当な距離を走ったのだ。多少の汗はかいているはず。ハナにしても体操だけとはいえ、息切れするほどの運動をこなしたのだ。少なからず汗はかいているだろう。ハナに関しては正直なところそれ以前の問題で、背負ったときから少し臭っていたのは間違いない。
「ハナ、そこの川で水浴びをしよう」
「うん、わかった」
特に疑問に思うことなく賛成したのは、今の自分の臭いに慣れてしまっているのか。とにかく今日はハナを集中的に洗うことを決めて、パパッと服を脱いでしまう。もちろん、ラナには剣に戻ってもらっている。凝視されているような感覚があるのは、どちらにしても同じなのだが。
ハナが着ていたのはズダ袋に穴をあけた程度の、服とも言えないみすぼらしい着衣。それを苦労しながら脱ぎ捨てる。その下には一糸すら纏っていない。その様子を微笑ましく見た亮が自分の服を脱ぎ始める。その前にもう一度確認してしまった。子供は性別がわかりにくい上に、ハナは痩せこけていた。今まで気付かなかったのも無理はないのだが。
(ハナは女の子だったんだね)
『そのようですね。楽しみが増えましたか?』
同じように気付いたラナからは妙な事を言われる。一体なんの楽しみなのか。一瞬考えた後に思いつき、ありえないと首を振る。亮はロ○コンではない。
『さすがに今のままでは私も止めますが、獣人は総じて成長が早いのです。主の世界でいう光源氏計画、ですか? それを狙ってみてもいいのでは?』
(君はいつからそんなに俗っぽくなったんだ)
この口調になる前の、厳めしい様子はすでにない。亮が元いた世界の影響を受けたのか、それとも彼自身の影響を受けたのか。コホンと咳払いして考えを追い出し、すでに水浴びという名の水遊びを始めているハナの元に向かう。
遊びをやめさせ、少々乱暴に頭をワシワシと洗う。もちろん水が耳に入らないよう注意しながらだが、ハナに嫌がる様子はない。子供はこういったジッとすることは苦手だと思っていたのだが、彼女に限ってはそうではないようだ。むしろ目を細めて気持ちよさそうですらある。ラナが回収しあまり量が多くないと言われた身体用の洗剤を、今回は気兼ねせずに使う。ハナを身ぎれいにしてしまう為である。
「なんだかスッキリした。気持ちいい。リョウ様、ありがとう」
「それなら何よりだよ」
先に上がらせたハナをラナに任せて、自分の水浴びを済ませてしまう。二日目だというのに、すでにこの状況に慣れてしまっている自分に少し驚いた。日本語が普通に通じ、野宿や水浴びにも抵抗がない。異世界という感覚が薄いせいかもしれない。元居た世界にそこまで未練がないのも理由の一つだろう。
自分の手を見る。あのキマイラの命を奪ったのは間違いなくこの手である。それを思い出すと今でも震えがくる。
岸のハナを見る。あの小さな命を救ったのも間違いなくこの手である。無意識に手を握っていた。
この地、異世界では命を奪うのも救うのもこの手。しかしそれは力があってこそ。力がなければ屍をさらすのは自分自身なのだから。
* * * * * *
翌日、予定通りに街道へ出る。その後はハナを背から下ろし歩かせるようにする。さすがに人目のあるところで、ハナを背負っての高速移動などできるはずもない。自分の魔法、魔力が異常であると知った以上は当然の判断だろう。
亮はそれなりに整った服を着、ちょっとした革の鎧を身に着けている。双方ともハナのいた集落で調達したものをラナが魔力によって強化したものである。全体的に黒い色が多いのはご愛嬌というものだろう。
ハナも服をちゃんと着、サンダルに近いものの靴も履いている。こちらはラナの魔力によるものではないが、それまでに比べたら随分マシになるだろう。また、フード付きのマントも羽織っている。これは耳や角によって簡単に獣人だとバレないようにするためである。ハナが亮の奴隷だとわかってもちょっかいをかけてくる者が多いためだ。獣人に対する差別がどれだけ根強いのかがわかろうというものである。
荷物は亮が全て背負っていくつもりではあったのだが、それは一本と一人の反対によって叶えられていない。奴隷という立場の者が主人に荷物を持たせるのを良しとしないためだ。未だ強いとは思えない体格のハナに荷物を持たせることは好まなかった亮だが、そうすることでハナの社会的身分を周知できるというラナに折れた。結局半分ずつにしているのだが、それでも自分の持つ分が少ないとハナは言う。
確かに痩せこけている割には筋力が強く、今渡している分は苦も無くもっている。ハナの言い分もわからないでもなかったのだが。
『主、この速度なら多少の休憩をはさんでも夕刻には着くでしょう。今晩は野宿を避けることができそうです』
(それは何より)
ラナの言う通り、日が暮れかかるころに町に着くことができた。三メートルほどの塀が大きく広がり、魔物や賊の侵入を防いでいるのだろう。そして肝心の街門には衛兵が詰めていた。町に入る人間をチェックすると同時に、おそらくは通行税を徴収しているのだろう。中世西洋のことはよくわからないが、ゲームや小説の中ではありがちなことである。
(ラナ、通行税はだいたいどれぐらいになりそう?)
『はい。通常であれば銅貨五枚程度、主の感覚で言えば五百円程度でしょうか。あくまで平均なので一概にいう事はできないのですが』
十分だ、と亮は頷いた。財布代わりにしている革袋には銅貨はもちろん銀貨、金貨もある程度入っている。これで足りないことはまずないだろう、と亮は考える。ちなみに銅貨で百円、銀貨で千円、金貨で一万円ほどの価値があり、この世界共通の認識で間違いがないようである。
そんな事を考えつつ、歩けばやがて街門に到着する。数名が並んでおり、亮たちは本日の最後になりそうである。だが、思ってもみない障害が現れた。
「フン、冒険者志望の旅人か! 通行税は一人銅貨三枚だが、ソレは獣人だろう! 見たところ奴隷でもない。故に町の中に入れるわけにはいかん! 暴れられれば我々の責任問題になる!」
一人銅貨三枚まではいい。たった今ラナに聞いた金額よりも安いぐらいである。しかし衛兵が告げた次の言葉で亮は愕然とする。ここまで獣人への差別が酷いとは思わなかったのである。
「確かに今はまだ正式な奴隷ではありませんが、こちらでそうなるなら同じではありませんか」
「そう言われてもこちらも規則だ。曲げるわけにはいかん!」
頑固な口調と表情。その中にある、何かを期待するようないやらしい感情を感じとった。一瞬だけ眉をひそめた亮は、さっと革袋をまさぐると金色の硬貨を相手の手に握らせる。
「規則では仕方ありませんね。ただ、皆さんもずっと立ちっぱなしでお疲れでしょう。休憩などされてはどうですか?」
自分の手にあるものをチラリと確認したかどうか。一瞬ニヤけた顔をすぐ戻し、真面目くさって言い放った。
「ふむ、お前のいう事も最もだな。もうすぐ閉門でもある。私は詰所に戻るとしよう」
位置的に亮たちの背後にある詰所に向かい、衛兵は歩き始めた。その間にハナを伴って門を抜ける。他の衛兵も居るのは居るが、見て見ぬふり。おそらくは応対した衛兵のおこぼれにでもあずかるのだろう。完全に門を抜けてしまい、チラリと背後を振り返った亮は深々とため息をついた。
「町の顔である門衛があんな様子だと、他の様子も簡単に想像できるね」
『確かに良くはないでしょうね。まずはハナの件を済ませましょう。門衛だけではなく宿や他の店舗でも同じような事になる可能性があります。次にキマイラの核を売り払い、そのお金で必需品の購入を行いましょう。それが終わり次第町から出た方が気が休まりそうです』
確かにそれが一番いいだろう。ハナや自分の精神衛生を考えれば。そして酷いことを言われたハナの様子を見れば、やはり気落ちしたのか俯いてしまっていた。
「リョウ様、やっぱり私は置」
「ハナっ!」
ハナにみなまで言わせることなく、大声で遮った。
「その先は絶対に言わないように。ハナが僕についてきたいと言ったのは確かだけど、それを許したのは僕なんだ。その僕が、君が居たら迷惑だなんて思うと思うかい? 僕はそこまで薄情じゃないし真逆だよ」
「真逆?」
不思議そうに聞き返すハナに笑顔を向ける。
「そう。僕はハナが居てよかったと思ってる。僕は元々孤児でね。孤児院から引き取られた家も年上しかいなかったから、弟や妹が欲しいってずっと思っていたんだ」
「妹・・。それならリョウ様はお兄ちゃん?」
上目遣いで言われて思わずドキッとする。媚びた様子もない自然な声。目の隈がとれ血色もよくなったハナの顔は、かなり可愛らしい。そんな妹、いやハナに見つめられればドキッとするのも仕方ないだろう。
「そ、その呼び方も悪くないけど、人の目のある場所ではやめとこうか」
「ん、リョウ様がそう言うなら」
素直に返事をするハナの頭をフード越しになでる。妹と呼ばれたのが嬉しかったのか、もう気落ちしている様子はない。それを確認して、今度はハナの手をとった。ハナは驚いて亮の顔を見る。その目を見て笑顔で軽く頷いた。そしてそのまま歩き出した。
大通りが交差する広場にはいくつかの出店があった。食べ物や土産物を売っている店なのだろう。野菜や肉などの串焼きはあるようだが、子供向けの甘味はないように思った。この世界では砂糖が高級品になるらしい。主な甘味は蜂蜜ということになるのだろうが、それも貴族が買い占めている。ここにあるような出店にまでは回ってこないのだろう。
小腹の空いた亮は自分用に肉の串焼きと、ハナ用に野菜多めの串焼きを一本ずつ頼む。出来上がるのを待っている間、ラナの指示であるものを扱う商店の場所を訊いた。店の主人はチラリとハナを見て特に忌避もなく教えてくれる。串焼きを受け取り代金を払いながらも、亮の気分は良くない。
(ラナ、君の言う通りこの世界では奴隷商というのは普通にあるんだね)
『はい。主の世界では裏組織のような団体ですが、獣人がいるこの世界では少なくはありません。ただし中には非人道的な事をする者も居ますから、付き合いは最小限に抑えたい所です』
商人であれば利益を追求するのは自然な事だが、奴隷商人となれば商品を用意するのが難しい。口減らしとして捨てられそうな者であればまだいいが、下手をすれば誘拐などの手段をとることもあるらしい。大きな忌避もないが良い目では見られないのは、そんな暗い部分を知っているからだろう。
(まぁこれ以上奴隷を増やすつもりもないし、ハナの登録を済ませたら用はないよ。あるとすれば最終的にハナを解放する時ぐらいだろう)
ラナに思念を送りながら、ほとんどが野菜の串焼きをハナに渡す。猫舌というわけでもないだろうが、ハナは息を吹いて冷ましながら頬張っている。歩きながら食べるのはさすがに気が引けたので広場にある腰掛けに座っている。小さな口をモクモクと動かして食べているハナはとても微笑ましい。その姿を見て亮自身も和みながら自分の串焼きを頬張るのだった。
今、亮は宿の部屋にいる。二階建てで一階は食堂を兼ねた酒場、二階が宿泊者の居室。ラナが言うにはこの世界でごく一般的な形態の宿なのだそうだ。そこそこ良心的な価格であり、比較的清潔。夕飯に出た料理の味も悪くはない。宿としては良い方なのだろう。
今、彼は悩んでいる。ハナの奴隷登録は驚くほどスムーズに行われた。亮に対して二、三の質問があった程度で、登録そのものはあっという間に済んでしまった。その質問にしても拘束力や強制力をどの程度にするかといった実務的なものであり、ハナを連れることになった経緯については触れられなかった。恐らくは口減らしなど、あまり表に出したくない理由であることが多いからだろう。その点について亮自身は何も後ろ指を指される様な事はなかったのだが。
つまり、ハナの事に関してではない。
宿の主人が偏屈で、獣人にベッドを用意することを拒否したのだ。その代わり、亮一人分の料金で構わないと言ってきた。これにはさすがに憤りを感じたのだが、ラナにこの世界では多数の考え方であると言われ何とか抑えた。だが、それはそれで悩むことが出てきてしまったのだ。
亮一人分の部屋ということは、当然ながらベッドも一つ。ハナが自分は床で寝るから構わないと言っているのだが、さすがにそれは清潔ではないし亮の気が済まない。逆に自分が床で寝ようと言えば、ハナだけではなくラナにも強い口調で反対されてしまった。
「それだけは絶対にダメ。ベッドに奴隷を寝かせて自分は床だなんて、主人のとる行動じゃない」
『今回はハナの言う通りです。次からは私が人化してでも交渉しますから、そのような事はもう仰らないでください』
その手があったか、と気が付いて頷いたが今回はもうどうしようもない。結局一つのベッドを二人で使うということになった。亮の世界で言えばビジネスホテルのシングルルーム程の広さである。ベッドもそれに準じたものであるのだが、二人が寝るとなればさすがに広さが足りない。
大人と子供という体格差はあっても二人の顔は当然近く、少し手を動かせば相手の肩や腕に当たる。孤児院での生活では自分より小さい子と一緒に寝ることが多かった。それ故に今更ハナに対して欲情などするはずもないのだが、その事と緊張するしないという問題は同じではないようだ。
ハナは安心しきった顔ですでに夢の中。身を離そうとするどころか、腕をとりしがみつくような格好である。子供の少し高い体温に包まれて、亮もウトウトしてくる。
『ハナはもう寝てしまいましたね。この子にはまだ聞かせられない話ですが、主も男ですから持て余す時もあるでしょう。その時は遠慮なく仰ってください。僭越ながら私がお相手を務めさせていただきます。自慰する必要も娼館に向かう必要もありません』
(ラナ、君ねぇ)
剣が人化した姿を見た後では魅力的な話に思えるが、今その話をする必要もない。そんな想像をしてしまい、かえって悶々とした夜を過ごすことになってしまった。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
誤字脱字、感想などもよろしくお願いします
H27.11/21 加筆修正いたしました。