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第9話 魔法ってすごい

俺はランジュちゃんと一緒に机に座っていた。

とてつもなく緊張する。


すごく遠いところから来たことになっている俺に、このエクセリオ大陸のほとんどの国で使われている共通語(コモン語)を教えてくれることになった。

大陸の多くの国々で使用されてる言葉を知らないって、いったいどんな島国から来たんだよとなるが……

お、合ってる!

たしかに極東の島国から来たんだものな。なんでそうなったかはわからないが……


そんなわけで、俺はランジュちゃんと言葉の練習だ。

本当はマテウスさんが教えると言ったが、助けてもらったお礼に私が教えると彼女が宣言したからだ。


「アーアー。ワターシのなまえはー。リョータでぇーす。ワオ!」

この日本語はちゃんとコモン語になって響いていた。

マテウスさんに魔法をかけてもらったのだ。


「らららー。あめんぼあかいなあいうえおー」

「ん、それはなあに?」

「えっと、これはぁ」

俺はこの世界の言葉で説明する。


そう、ほんと魔法ってすごい!!!

俺は魔法のすごさに衝撃を受けていた。

『ランゲージ』の魔法は相手の喋る言葉の意味が理解でき、話せるようになるのだ。


「この死んでちょっとしかたってない鳥の肉はー、とっても美味しいでぇす」

異世界の言語だからか、魔法を使ってもちょっとおかしくなるようだったが。

「リョータおにいちゃん。そこは新鮮な肉と言うのよ」

「お、おおおおにいちゃん?!」

病気の治癒や魔法以上に衝撃的なことなど早々あるまいと思ったが、すぐさまそれ以上の衝撃が起こったぜ。

お兄ちゃんと呼ばれるとは!


「……ごめんなさい。イヤだよね。ほんとのお兄ちゃんじゃないから、お兄ちゃんって言ったら、ダメだよね」

しゅんとなっている。俺は慌てて言った。

「あ、ちがっ。ほら、オレはすごく年が上だから」

「ううん。おにいちゃんだもん!」

うわあ。嬉しいけど何か犯罪のような気がする。

俺が困っていると、ランジュの緑色の瞳が潤み始めた。


「わかった。おにいちゃんで正解だ、アニキとよんでくれてよくってよ!」

「……ほんと?」

その上目使いの威力は半端無いです。

「ほんと。ホントだよっ」

自分に兄や妹がいたらと思うこともあった俺は照れながら頷いた。

「やったー! じゃあわたしのことはランジュって呼んでね。リョータおにいちゃん!」

喜びにきらきらとした笑顔。

「お、おう。ラ、ランジュ」

俺は今、生まれて初めて女性(少女だが)を呼び捨てにした!

なんかレベル上がった気がするぜ。


「じゃあ、おにいちゃん。続きね」

にへへという感じで笑う。

「シンセンな鳥肉はチョー美味いでぇす」

「うーん。なんか変だよぅ」

『ランゲージ』は一度かけてもらうと1日程度は効果が持続する。

この世界ではコモン語以外にもたくさんの言語があり、新しい言葉を覚える必要がある者は、こうして習うそうだ。


「じゃあ、鳥って書いてみて」

「フッ……まかせたまえ」

小さな石版にチョークみたいな石の棒で書く。

読み書きの魔法『リードランゲージ』もかけてもらっているので、俺はかかかっと軽快にコモン語で綴る。


「おにいちゃん、字がきたなーい」

「うう。ごめんよ」

お兄ちゃんと呼ばれ照れながら書き直す。


この歳で読み書きを教わることになろうとはなあ。

でも、魔法のおかげでかなり勉強しやすい。

自分で発した言葉を聞いて書いたり、読み上げてみたりと一人でも学習できるのがすごく便利だ。


俺が危うく殺されそうになったあの魔物の名前も教えてもらった。

グレイホーンウルフ。

角狼の中でも灰色種は強い魔物だそうだ。

よく生きてたよな俺。

死にかけたけど。というか普通なら死んでた。

思い出すと今でもガクブルもんだ。

無茶しやがってオレ。


しかし、頑張った甲斐があった。

女の子と一緒に勉強など人生で初だ。

しかもものすごい美少女である。

加えて命の恩人ということですごい懐かれようでお兄ちゃんと呼ばれる。


「おにいちゃん。ほら、ここちがうよ?」

「あ、う、ごめん。ランジュちゃ……ランジュ」

憧れていた兄妹の関係ってこんな感じなのかな。

そう思いながら勉強に勤しむ俺だった。





ちなみにランジュと呼び捨てにしたことでレベルがあがっているかもと、俺は寝る前にステータスウィンドウを見てみた。

うん。

元々レベルなんて表示項目なんて無かった~。


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