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第5話 上位鑑定 後編

アルマト山中のカルソンヌ渓谷にワイバーンが現れた。

近隣の村に被害が出たため討伐依頼がギルドに出された。

ワイバーンは翼長が10メートルくらいある飛行亜竜種だ。

知能は高くない。魔法も竜のブレスも使えないが、空から攻撃されるので手強い魔物だ。


俺とレイナを含む数十人からなる討伐隊は、予定通りに遠距離から魔法と弓で翼を攻撃する。

飛べないようにしてから倒した。

かなり時間がかかったが討伐成功だ。


と思ったらワイバーンは一匹ではなく複数だった。

倒したと思ったら「実は番で二匹居ましたー」なんてよくあるパターンだぜ。

実際になったらどえらい衝撃だったけどね。

それでも何とか倒した。

と思ったら、もう一匹いたのだ。

「実は番じゃありません群れでしたー」のパターンだ。

ちゃんとギルドが偵察したんじゃないんかい!


三匹目である。さすがにこれは危険だった。

窮地に陥った討伐隊。

俺はステ盾で飛竜の攻撃をひたすら防御し続けた。


めちゃくちゃ怖かった。

ワイバーン自体がまず怖い。


軽くて頑丈なステータスウィンドウだけど、その時はまだまだ検証実験中だったし、飛竜の攻撃を受け損なったらそれで終わりだ。

それからどうやってステ盾のことをごまかすか。

俺が思いついたのは、盾の表面にステータスウィンドウを被せるように大きく出現させて、ひたすら防御することだった。

このステータスウィンドウ盾は恐ろしく硬い。そして最大の特徴は衝撃が俺に通らないことだ。飛竜の攻撃を受け止めても俺は吹っ飛ばされない。


結果として飛竜の討伐に何とか成功した。

もちろん、とどめは俺ではなく別の人だったけどね。

俺はただ盾で防いでいただけだが、それが高く評価された。

すごい防御力の冒険者がいるぞと。


確かに飛竜の上空からの突進だろうが、尻尾の一撃だろうが俺は耐えることができた。むしろ突進した飛竜がダメージを負った。

しかし。

このステ盾は万能ではない。

まずは出現する距離。

俺の体から最大で60センチくらい前に現れる。

遠く離れた所には出ない。

手を伸ばしたくらいの距離にしか出ない。


ただ、厚さは変えられた。

最大で2メートルくらいの立体にできる。

自分の体から3メートルくらい先に俺にしか見えない盾が展開できることになる。

でも、そうすると動かすのが難しいし動きが鈍くなる。俺は自分の意志で自由にこいつを動かせるが、最大の弱点はあくまでステータス表示であること。

何より俺が向いている正面の範囲でしか出せないことだ。


あれからずっと思ってた。

俺がもっと早くステータスウィンドウを盾に使うことを思いついていたら、上手く使いこなせたらジェイグさんは死なずに済んだんじゃないかって。

レイナは慰めてくれたけど、彼女を護る時に、使いこなせなくて後悔なんて絶対したくない。


俺は普段の鍛錬にこのステ盾の練習も少しだけしていた。

念じて動かせるけれど遅いし、戦闘中にすると俺の動きがちぐはぐになってしまった。

そこで持っている盾にかぶせるようにして手で動かしながら、意識を動かすほうた方が操りやすかった。

その修練の結果が、飛竜との一戦で役立ったのだ。

そしてど根性盾と呼ばれることになった。


あの時は必死だったので「ど根性だ俺。うおおお。俺、ど根性を見せてみろ! 俺、ドコンジョー!」とか叫んでいたからだ。

だって、俺が恐怖で後ろを向いたらステ盾がずれてしまう。

「ヘ、ヘイヘイヘーイ。どうした飛竜。カマーン!」とびびりながら飛竜を挑発して、俺以外のところへ行かないように向き合い。

「オラオラ、ど根性を見せてみろ」

と己を叱咤し続けるしかなかったのだ。

根性を見せてみろとはおれ自身への叱咤激励だったのだ。

それが俺の二つ名「ど根性盾」となったのである。

先日は名前がドコン・ジョーになったけどな。


みんな生き残れて大興奮で感謝されて、健闘を称えられたけど。

レイナからはステータスウィンドウのことが知れ渡ったらよくないと指摘されたので、戦闘の後には「露店で盾をかったら偶然魔法の盾だったみたい。掘り出し物があって、俺ラッキー。でももう魔力切れたみたい俺アンラッキー」的なことを話しておいた。

おかげで俺のことはたまたま魔法の盾を持ってた冒険者ということになってる。それでそこそこ有名になったみたいだけど。

ここは、毎日のように冒険譚が生まれるような町だ。

その内に忘れられていくのだろう。


さて漂ってくるこの匂いは。

レイナの家庭料理もいいけど、たまにはね。

「おじさん、こんばんは!」

めちゃくちゃ美味い串焼き屋さん。

「おっ、にいちゃん。毎度!」


いつものアンファングの通り。

夕暮れに外灯をつけてゆくおじいさん。

その後をついて行く楽しげな子供達。


「……さあて。家に帰るか」

レイナにお土産用にもう3本頼んだ。

最近パルセルと飲んで帰ったりが多かったからな。

しばらくは、レイナと冒険者依頼に専念しよう。

どこかへ依頼で遠出するのもいいかもしれない。

カルソンヌ渓谷みたいなのは困るけどね。

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