第7話 衝撃の事実
その男性は何度か違う言語っぽい言葉で話しかけてきたが、俺がまったく理解できないでいると、立派な装丁の書物を持ってきた。
本を開きながら何かぶつぶつと呟くと、指先がほわっと光った。
それから自分の白髪頭に指先を触れた。
なんぞ、光ったぞ。あれなに?!
驚く俺に彼は言った。
「これで言葉が通じるかな?」
「は、はい! わかりましゅ」
びっくりした。日本語だ。かんじゃったぞ。
「良かった。旅人よ、孫を助けてくれてほんとにありがとうございます。私はマテウス。この子はランジュ。ほんとうにありがとう」
丁寧に何度も頭を下げてくる。
少女も一緒に頭を下げている。
彼女の言葉はわからないが、助けたお礼を言っているらしいのは伝わってきた。
「あ、あの。どういたしまして。助けられて良かったです」
それから俺は名前を名乗ったがどうも発音が難しいらしい。
苗字をお持ちとはどちらの貴族かお役人でしょうと言われた。
なるほど、普通の人は苗字など持ってないってわけね。
「えーっと。俺は普通の、えっと平民です。リョータって呼んで下さい。いやあ、日本語が通じてよかったです」
リョータって呼んでもらう方が言い易そうだ。
「ニホン語……いえ、リョータ殿。これは意思疎通の言語魔法ですぞ?」
「ま、魔法ですか!」
出たよ魔法だよ。
通訳の魔法ってことなんだろうか。
「リョータ殿はよほど遠いところからこられたようじゃな」
不思議な顔をしているとマテウスさんが言った。
「あ。はい! あのここはどこですか? 怪我の治療ありがとうございます。どうやって治ったんだろう」
聞きたいことがたくさんある。俺は重症だったはずだ。それがむしろ前よりも健康になっている。
そこで俺は気が付いた。
衝撃の事実だ。
メガネがないのに、はっきり見えてたー!
視力がよくなってる。
「説明いたしましょう。ですがその前にスープなどいかがかな」
「はい。いただきます!」
いろいろ気になるがまずは飯だ。
言った瞬間に俺の腹がぐううっと鳴った。
言葉が通じなくてもその意味は通じる。少女がかわいらしく笑った。
ああ、魔物を倒せて良かった。