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第22話 アンファング冒険者ギルド

依頼完了の報告は先に帰ったゾラさんがしてくれているけど、俺も翌日に冒険者ギルドに行った。

応接室でキノさんが報告を受けてくれた。

俺の場合は直接依頼を受けていないが、ゾラさんの報告で特別依頼扱いとなっている。

あの傭兵達のことは既にゾラさんが話してくれているので簡単に済ませてくれた。


ギルド証に記録してもらって、これで依頼終了だ。

報酬は緊急依頼なので100万エルド、それから予想外の危険手当で100万追加。それから襲撃してきた連中が持ってたエルドを3等分したものが約400万エルド。

合計600万エルドほどだそうだ。

え?

あの500万以上口座に入らないから困るんですけど! じゃないや、なんでそんなに大金が。

とにかく口座に入らない分は、後で「預かり所」に預けないといけないから報酬の受け取りは後日にした。まさか俺がお金持ちになるなんてなあ。


利用するなんて思わなかったからざっとした知識しかないけど、預かり所は銀行のようなものだ。利息は無いし入出金には手数料もいるし数日かかったりするが、大金を預けておける。本人確認はギルド証と同じだが、預り証等は持ち歩かない。自分で預かり所へ行って自分のプレートを出してもらって、念じながら手を触れれば名前が出る仕組みだそうだ。


ギルドの皆は職員さんも冒険者達も随分と心配してくれていたそうで、ちょっと顔見知りだったくらいの人からも緊急依頼達成と帰還を祝福された。

あ、そういえば衛兵さんが敬礼してくれたのは、俺が走竜で緊急依頼に着いていると思われたのだろう。結果的にそうだったけど。

ゾラさんを万年Bランクだと嫌味を言ってたゴラードさんからも褒められた。

おお。なんか俺、ぼっちじゃない気がする。

キノさんはすごく喜んでくれた。素材買取係りのマールお爺さんも「よく依頼を果たして帰還したのう。おかえりリョータ」って俺の手をがっしり握って言った。ちょっと泣いてた。なんか俺もちょっとうるってきた。


残念ながらルナちゃんは今は家で休んでいるそうだ。

なんでもサスレンダ魔呪禍病が発生したという報告が入った時から、ものすごい勢いで働いて、にゃーにゃーふーふーとすごかったそうだ。その反動からか、事態が沈静化したとたんにダウンしたと。それでも冒険者の皆が帰ってくるまでギルドに居るって言い張ってたらしいけど。


あのごっつい熊獣人ギルド支部長は、事後処理等であちこちに出向いているため不在だった。

領主や近隣の町や村やギルドと、魔呪禍病対策の反省と今後の対策を協議中らしい。それとギルドの緊急依頼を受けた冒険者が襲撃されたのだ。あの傭兵達のことの調査などもしているらしい。

キノさんから「一番の功労者であるリョータ達に支部長から直接礼を言えなくてすまない」と言われたけど、「次の魔呪禍病の対策は大事だし、さっそく取り掛かってるのは良いことだから気にしないでください」と言っておいた。

俺としては襲撃を受けた時のことを支部長に質問されなくてよかった。

たぶん支部長もゾラさんとグリアスさんとジェイさんのことは知っているだろう。


キノさんから帰還祝いにぱーっと行くかという誘いを、俺は先約があるのですいませんと辞退した。

キノさんと一緒に応接室を出ると。

「リョータ。ちょっと付き合ってくれるか」

ゾラさんが待っていた。

「はい」

俺は頷いた。



こんな店があったんだな。

ギルドから数本裏通りを行ったところにその店はあった。

看板も何も出ていない。

階段を上がり中に入るとそこは静かな酒場だった。

カウンターとテーブルは半分透明で飴色をした琥珀樹製だ。

よく磨き上げられて美しいツヤを放っている。

カウンターの向こうには、いろんな酒瓶がならんでいて、魔法ランプの明かりを受けてそのビンやグラスがきらきらと輝いている。

マスターはニンブルのおじいさんで、頷くような挨拶をした後はグラスを磨いていた。

客は俺達だけだった。


一番奥の窓際のテーブル席に着くと夕暮れのアンファングの通りが見渡せた。

茜にそまりつつあるいつもの街。

行き交う人の喧騒が遠く感じる静かな店だった。

ゾラさんが手振りでマスターに合図すると、ナッツみたいなのを盛った皿と琥珀色の液体が入ったグラスが二つ、琥珀樹のテーブルに出された。

それから小さな金色の呼び鈴が一つ。

ニンブルのおじいさんはカウンターの奥に戻った。

一度鳴らせば防音の魔法がかかって、周りに会話が聞こえなくなるそうだ。

もう一度鳴らせば戻る。

ゾラさんはちりんと呼び鈴を鳴らした。

一口飲んでから言った。

「俺とグリアスとジェイとカラハのことだ」

俺は頷いた。

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