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第21話 帰還~再びのアンファング~

1週間後、俺はアンファングに向かって帰路に着いていた。

あれから数日間、俺は村で療養した。

というかサスレンダ魔呪禍病にかかった。

助けに来てどうなんだと思うけども、あれだけ罹患した襲撃者と戦って血を浴びまくったんでしょうがないだろう。

すぐ治療されたのでなんとも無かったが、ずっと落ち込んだ気分だった。

だってなあ。

ついにやっちまった。

DDT前に殺人だよ。

時代劇などの「殺陣って書いてタテと読む」の方じゃなくてだ。

いきなり3人だ。

無我夢中だったけど。

また戦うなんて出来ないよ。

いや、あんな感じでめちゃくちゃにやればできるのかな。

そうしないといけないのかこの世界の冒険者は。

あーあ。なんで異世界なんて来ちゃったんだろうなあ。

だいたいだよ。

こういう場合、物語だと女の子が慰めてくれるパターンじゃないか。

落ち込む主人公をこうなんというか、体でさ。

それがどういうこと?

助けに行った村目前で死に掛けた上に魔呪禍病に罹って療養って。

隔離されてて、お世話してくれる村人はおっさんだし、そりゃあ村人さん感謝しまくりだったけどさ。おっさんですよ。犬耳すらないおっさんですよ。

うーん。だめだ。

落ち込まずに明るくいようと思うけど、どうやっても気が滅入る。


ゾラさんはCランクに挑戦してた俺が、どうして落ちてるのか知ってたわけだから、初めて敵を剣で切り伏せた俺に言ってくれた。

お前は依頼を果たした。強盗殺人者を撃退した。それによって俺達を含めて多くの人の命が助かった。だからお前は自分を責める必要は全くない、と。

ちょっとだけ気が楽になった。

でもやっぱり気が滅入るし、罪悪感が半端無い。

とにかく俺は魔呪禍病からの回復を待つしかなかった。


アンファングへの帰りは馬車にしてもらった。

とてもじゃないけど、走竜に乗れる気分ではなかった。

火魔法でやられてしまったゾラさんが乗っていた灰色走竜は篤く弔われた。

さよならチョーゴッドスピードZ。

あの世で神様を乗せてぶっ飛ばせよ。

護って上げられなくてごめん。


村に滞在中。ゾラさんもグリアスさんも俺のことを心配してくれていたがずっとベッドの中だったし、二人は事態の収拾や事後処理などで忙しいかった。

そしてゾラさんは報告のために先にアンファングへ戻った。

帰りの道中、グリアスさんとはたまにぽつぽつと喋るくらいであまり話していない。

グリアスさんは商人や冒険者達とすれ違う時に挨拶したり、道中の情報交換をする時は元気に喋ってるけど、ほかの時はグリアスさんの耳はいつも悲しげにたれていた。きっとジェイグさんのこと、昔のことを思い出しているのだろう。


一週間かけてやっと遥か先にアンファングが見えた。

こうしてグリアスさんと初めて町を見た時のことを思い出す。

そこで始まった生活も、なんだか随分昔のことみたいだ。

だから俺は元気よく言った。

「……グリアスさん! もしかしてあれがそうですか!」

もちろん空元気だけど。

グリアスさんはすぐにぴんと来たようだ。

「そうですよ、リョータさん。あれがアンファング。冒険者の街です!」

グリアスさんがおどけた顔で紹介してくれる。

遠くに見える城塞都市。

多くの冒険者達が集いては去って行く町。

俺は帰ってきたんだ。


「リョータさん。巻き込んでしまってすいませんでした」

町に着くとグリアスさんが悲しげな顔で言った。

「いえ。緊急依頼だったんです。それに俺がもっと戦えれば」

俺のステータスウィンドウはああいう使い方もできた。

もっと早く気がついていれば――

「いいえ。ありがとう。僕の友達を友達のまま死なせてくれたこと。深く感謝しています」

グリアスさんが穏やかな顔で言った。

「グリアスさん……」

「馬車は私が返しておきますね。ギルドへの報告はゾラがしているはずなので、リョータさんはゆっくりしてください。ではまた」

「グリアスさん!」

「リョータさん?」

振り向いたグリアスさんに俺は言った。

「旅……と商いの幸運を……」

グリアスさんは寂しげに笑うと言った。

「はい。あなたにも幸運を。グリアス商会を今後もよろしく」



『通称。輝け! 楽しき憩い亭』のドアには休業中の札がかけてあった。

「おかえり……」

中に入るとテーブル席に座っていたカラハさんが立ち上がって出迎えてくれた。

「ただいま。カラハさん」

「ゾラが話してくれたの。遺品を届けに来てくれて、あの人のことを……ごめんね、部屋は綺麗にしてあるけれど、わたし、どうしても料理を失敗してしまって。何度も。ちゃんと作れなくてっ……」

顔をくしゃくしゃにして泣き出した。

今泊まっているのはレイナだけだろうか。事情を話してカラハさんには休んでもらおう。

「カラハさん、いいから休んでください。俺もしばらく何もしたくないです。カラハさんもゆっくりしてください」

俺はいつもしてもらっているように、でもできるだけそっとカラハさんの肩を叩いた。

カラハさんはありがとうと言うと自分の部屋へ行った。


とても疲れた。

レイナはどうしただろう。

ノックする。

返事はなかった。

「レイナ?」

まったく人の気配がない。

俺はドアノブを回してみた。

簡単に回った。

「レイナ。ごめん、入るよ?」

ドアを開ける。

中はがらんとしていた。

私物も無い。整ったベッド。

そうか。どこかへ行っちゃったんだ。

帰ったらあれだけ話そうと思ってたのに、今はそんなこと考えていたのが何年も前のことみたいに遠く感じる。

いつもの串焼き屋さんも避けて帰ってきた。

俺は部屋に戻ると装備を外してクリーンを唱えた。

ブーツや装備品の点検だけはしておく。


ベッドに倒れこむ。

あの時の戦闘のことを思い出す。

眠りの魔法があったらいいのに。

あるいは忘却の魔法とか。

そう思いながら俺は目を閉じた。

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