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第18話 再会

なぜか見当違いの方向へ矢が飛んでいくのが見えた。

「攻撃をやめろ! 略奪は無しだって契約だったろうが」

そう大声を上げて木々の間から覆面の男が出てきた。

剣を鞘に戻しながら。


攻撃が止む。

俺はポーションを飲んだ。

左腕の中でぎゅんぎゅんと音がしているかのようだ。

一瞬だけステータスウィンドウを出して状態を確認する。

HPは僅かな回復だし、骨折も完全には治ってはいない。

ウィンドウを消すと俺は剣を握りなおした。

痛みが奔るが堪える。


男は覆面を取ってゾラさんの前に立った。

「ゾラ」

男の口からゾラさんの名前がもれた。

ゾラさんはかっと目を見開いて男を見た。

「ジェイ……ジェイグかっ」

ゾラさんが男をそう呼んだ。

ジェイ? ジェイグ?

どこかで聞いたことがある名前だ。


「ジョグ! 何してやがる! そいつらを殺せっ。走竜を逃がすなっ」

襲撃者の中で体の大きい男がその人に向かって言った。

痛みがましになったおかげで頭がハッキリしていく。

ジョグ?

ジェイグ?

それって――

思い出した。カラハさんが言ってた昔ゾラさんとグリアスさんとパーティを組んでいた人だ。

カラハさんとも知り合いで、冒険者を辞めて遠くへ行ったんだよな。

なんでこんなところにいるんだ。

そして俺はこのジェイグさんとどこかで会ったような気がした。

このブーツ。

そうだ、シィーニでブーツ直してもらった人じゃないか?

ジェイグさんとゾラさんはじっと互いを見ていた。


「ジョグ。薬を奪うんだ。目撃者は生かしちゃおけねえ」

「レルド! このクソ野郎が! 俺が村へ行っている間になんてことをしたんだ。略奪は一切しない契約だろうが」

ジェイグさんはレルドという男に向かって怒鳴った。

「うるせえ。てめえだけ逃げるつもりだったんだろがっ」

「馬鹿野郎。村じゃ病人は隔離されてる。魔呪禍病に罹らない者が病人の世話をしてた。村に行っても金を出せば問題無かったんだぞ!」

それを聞いた襲撃者達はあきらかに動揺していた。


「おい。ジェイ」

ゾラさんが静かな声で言った。

グリアスさんをグリと呼ぶように、ジェイグさんをジェイとゾラさんは呼んでいたのか。

「わかってる。全員病人だが火魔法使いと風の魔剣士がどっかにいる。気をつけろ。グリアスが逃げる時間を稼ぐ」

ジェイグさんは振り返らず、俺達だけに聞こえる小さな声で言った。



「ど、どうすんだレルド」

「うるせえ」

「でもよ……」

あの大男はレルドという名でこの襲撃者達のリーダーらしい。

どうやら襲撃者達は迷っている。

事情はわからないが病気に罹って薬を奪いに来たが、この先の村で安静にできるならそれに越したことはないはずだ。

残りの数は10人ほど。

病人だが数は多い、しかも魔法使いがいる。

このまま戦いが終われば。

俺は殺し合いをしなくて済む。

そう思ったときだった。


「うわぁぁぁっ」

グリアスさんと、きゅるらっと鳴く走竜の叫びが聞こえた。

向こうで走竜が転がっている。半ば道に埋まっているように見えた。

落とし穴か。

道に縄を張るのと落とし穴の二段構えだったのか。


「かかった! お、おまえら。襲撃をかけた以上、村になんぞ行けるもんか。逃げるには俺達を知る者は誰も生かしちゃおけねえぞっ」

それを聞いて襲撃者達が再びじりじりと剣を手に前に出てくる。

何人かはグリアスさんの方へ行こうとしている。

「ジョグ。そいつらを殺せっっ」

「断る。お前らは契約を破った」

彼は動かない。

すると大男が絶叫した。

「契約だとっ! 護衛依頼で依頼人の金を強奪して逃げたお前がぁ。契約だとっ。いえることかっ。冒険者ギルドのお尋ね者だろがっ。お前の方がその冒険者を殺して逃げるしかねえんだぞ!」

辺りはしんとしていた。


だが、止まっていたのは一瞬だった。

弓を持った男の喉にナイフが刺さっていた。

ゾラさんが放ったナイフだ。

冷静に殺せる位置にいた弓持ちを倒した。

それがきっかけとなって剣を持った戦士が恐ろしい顔で迫ってくる。

「ゾラ。あの時はすまなかった。俺の首を渡す前に。せめてあの時の罪滅ぼしをさせてくれ」

「……侘びならその口でグリアスと。カラハに言え……カラハはアンファングで宿屋をやってる」


「くそっ。あいつもまとめて殺せっ」

レルドがジェイグさんを指差して叫ぶ。

「リョータ。後退してグリを手伝え。これを持ってろ」

それは小さなワンドだった。20センチくらいの木製で表面に呪文が彫ってある。防御の魔法が込められていて、シールドと唱えるだけで発動する。魔法使い対策だ。

「でもゾラさんは」

「さっさと行け」

グリアスさんは怪我をしているようだがなんとか走竜を落とし穴から出そうと奮闘中だ。

「ジェイ」

「わかったゾラ」

荷物とグリアスさんを守るための戦いが再開された。

「わかりましたっ」

俺は言われたとおりグリアスさんを助けに行くが、頭の中はぐちゃぐちゃだった。

敵は病人で。

殺せとか奪えとかばっかりで。

ジェイグさんのこともよくわからない。

この世界のことが分からない。

なんで殺しあうんだ。

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