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第13話 灰色種ですか。ええ、ええ、知ってますとも。

「ふえぇぇぇー。しんどかったー」

俺は走竜の手綱を取りながら、ゆっくりと歩いた。

疲れてはいるが心地良い疲れだ。

スピードはスリルあるけど、やっぱり走竜はいいなあ。

城壁の前の衛兵さんはいつもと違って緊張した顔で、俺に敬礼してくれた。

え? なんで? これは走竜効果?

でも。行きはぜんぜんそんなこと無かったのに。

冒険者証を光らせ提示しつつ挨拶して町の中に入る。

なんかかっこいいぜ。


城壁のトンネルをくぐる。

やっとアンファングに帰ってきた。

まずは走竜を返してギルドに行って依頼完了の報告して報酬を貰おう。

「世話になったな、ゴッドスピード」

俺は走竜の首筋を撫でる。

命名は勝手にしました。

きゅるきゅると走竜が鳴いた。

おお。かわいいぜ相棒。

わずか四日間だったが地平の彼方目掛けて爆走した俺達だ。

ぶっこみのリョータといえば俺のことよぅ。世路私苦!

いい相棒だったが、こいつともお別れか……


あ。

馬や走竜を扱う店は城壁内だけど、走竜を返す厩舎は城壁の外にあるんだった。

走竜は走り回れる広い土地が必要なためだ。

城壁内に入らなくていいの忘れてたー。

さっきの衛兵さんに冒険者証を光らせ提示しつつ挨拶して町の外に出る。

かっこわるぅぅ。

衛兵さんが怪訝な顔をして町から出て行く俺になぜかまた敬礼してくれた。

なんか変だな。

そういえばアンファングの雰囲気もちょっと違うな。

どこがどうとは言えないけど、ざわついているような感じだ。


とにかく走竜を返してギルドに依頼完了の報告をしよう。

そしてレイナと話をする。

この依頼の間に考えて決めた。


俺は確かに対女子スキルが皆無だ。

今までなら「あっしのようなDTには関係ねえ話でござんす」って避けても来た。

でも、お互い冒険者なんだ。

こうしている間にどっちかが深刻な事態になることだってある。

最悪は二度と会えないことに、今既になってるかもしれないんだ。

そう考えたら解らないとか言ってられないと思った。


レイナにちゃんと話す。

俺が異世界人であること。

Cランク冒険者を目指す理由が、帰還方法を探索するためであること。

俺が居た国はとても平和だったから、殺人には抵抗があること。

そういったことを全て話そう。

その上でこの二人パーティの今後を相談したい。


レイナがしたいことがあれば俺はそれに協力しよう。

手がかりを探すのを手伝って欲しい気持ちはあるけど、迷惑はかけたくない。

お互いに別々の道を行くとしても、自分のことを知ってほしいと俺は思った。

信じてもらえるかわからないけど、まずは説明だ。

そして、俺の気持ちを伝える。


恥ずかしいとか振られたらどうしようかなんて言ってられない。

レイナのように元騎士で強くて、冒険者としてランクも上で将来期待されている彼女と俺なんてまったくつりあわないけど。

俺はレイナが好きだ。

「無理っ」の一言で返り討ちかもしれないけど、それが理由で即座にパーティ解散かもしれないけど。


凛々しかったり、甘いものにほわんとなったり、俺より賢い事を言ったり、気遣ってくれたり。

彼女といる時間がとても大切だとわかった。

俺はレイナが好きだ。

あの宝石みたいな紫の瞳を見たときからかもしれない。


だからこ、こくこくこく告白だ。

断られたらと思うとここここ怖い。

でも、臆病さは時に罰なんだと走竜師さんは言ってた。

俺もそうだと思った。

臆病で何もしないうちに何も出来なくなってしまうのかもしれない。

走竜だって何とか乗れるようになったじゃないか。

挑戦だ。

転んだっていいんだ!

異世界にすっころげるわけじゃない――よね?!

心に魔法の馬具は無いけれども……

とにかく俺は決めたんだ!


「お、お土産も買ったし……」

依頼で行った工房のショップスペースで水晶のアクセサリーを売っていた。紫色の水晶のペンダントでレイナに似合うだろうなって思った。

そしたら親方が「女にプレゼントか? それ俺が作ったんだぜ。気に入ったんなら、よおし、安くしてやるぜ」って言ってくれた。

こんな美しいものをこの筋肉ひげだるまおっさ――いや、匠ドワーフさんが作ったのだって驚いて、そのままハイって買っちゃった。


いきなりアクセサリー贈るのってどうなんだろう。まずいんだろうか。

ああ。ネットで質問したいよ。

でもとっても似合うと思う。もしかしたらもしかして感激して一気に妄想のようなことになっちゃったりして。

いったん決めたらどきどきはあるけど、気が楽になった。

Cランク昇格試験は頑張るが、駄目なら別の道を探すのもいい。

グリアスさんみたいに行商人になって旅をするのもいいかもしれない。

できたらレイナに護衛を頼みたいなあ。

そしたら「今度は俺が急襲だZeee!」なんてことあったりして!

そんなことを考えながら走竜の厩舎に来ると、俺の楽しい妄想を打ち砕く声がした。


「リョータはどこほっつき歩いてんだ。まったく。ええい。もう準備が出来たら出発だ!」

「ゾラ、走竜は騎手がいなければ駄目だよ」

「うるせえ。荷馬じゃ無理だろうが。こっちの荷物もいるだろ」

「それはそうだけどさ」

なぜかゾラさんとグリアスさんが言い争いをしながら、走竜厩舎の人と一緒に三騎の走竜に荷物を取り付けていた。

銀色がかった灰色の鱗と黒い羽毛を持つ立派で凶悪な感じの走竜だ。

あれ、なんか俺が借りた走竜と違くね?

と、それよりも今はなんで二人がここにいるのかだが。

「リョータ! 帰ってきたか」

「リョータさん!」

「こ、こんにちは」

なんか嫌な予感がするよ。


「リョータ。つべこべいわずに緊急依頼だ。こっちの走竜に乗ってくれ。いますぐ出発するぞ」

ええええ、ゾラさんなんですか急に。

あの俺いま帰ってたばっかりなんですけど。

それにその灰色の走竜、明らかに今までの走竜とレベルが違ってますよ。だって、うちのゴッドスピードちゃんがなんか大人しいですもん。

灰色の走竜……あー、なるほど。

灰色種ですか。ええ、ええ、知ってますとも!

きっと普通のより強いんでしょ早いんでしょ。

「乗れませんよ、無理ですって!」

俺はぶるぶると首を振った。


「リョータさん。走竜に乗れる人が必要なんです。きついと思いますが、どうか一緒に来てください!」

え、グリアスさんまで。

「どどどどうしたんですか、俺、このあと用事が。ギルドに完了報告して、それから大事な用事が」

二人とも血相が変ってて怖いです。

「ギルドの緊急依頼だ。人命がかかってる。頼む」

「説明は後でします。お願いします!」

「人命が?」

どういうことなんだろう。

「頼む、リョータ」

「リョータさん」

ギルドの緊急依頼ってよくわからないけど、人命がかかってると言われ、ゾラさんとグリアスさんに頭下げられたら断れませんでした。

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