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第1話 Cランクへの道

「コクッ!」

「コキャ!」

森を歩いているとコボルトが2体現れた。

身長は1.2メートルくらい。

歯を剥き出しにした醜く歪んだ犬顔で、汚い体毛におおわれた人型の魔物だ。

ぼろぼろの布や拾った武器防具を身に着けていることもある。

ちなみに獣人族の人に「コボルト野郎」と言うとものすごい侮辱で大喧嘩になるから機会があったらぜひ使えってゾラさんが教えてくれたので、絶対使わないでおこうと心に思ったもんだ。


コボルトは後から1体が走ってきて合計3体。

それぞれ錆付いたショートソードや棍棒を持っている。

俺は落ち着いて盾と剣を構えていた。

なぜならば俺には仲間がいる。

「リョータは右を!」

「わかった!」

俺が1体を仕留める間にレイナは2体倒した。


人型の魔物を倒すのは精神的にくるものがあった。

けど、コボルトは交渉して仲良く暮そうというのが無理な相手で、敵対的な魔物だ。

放っておくとどんどん増えるし、結局戦うしかない。

そういうのがわかってくると、徐々に慣れていった。

でも、倒した後に手を合わして拝むのは止められない。

自己満足かもしれないけど、命を奪ったんだから。


討伐証明のために片耳を頂く。

それからコボルトの皮を素材として持って帰るんだけど。

皮を剥ぐ。

こ、これだけはまだ慣れないぜ。

魔物を殺すのには慣れたが、解体はまだちょっと、というのもどうかと自分では思うけど。

ということで、毛皮の状態のいい一体分だけかついで帰ることにした。

もちろんレイナが倒した方です……


「リョータ。そろそろ戻ろうか」

「そうだね」

呼び方はリョータに戻ってしまった。

尊敬の念が無くなったとかではないよ、たぶん。

これは冒険中にさん付けとかまどろっこしいからだ。洋画など見てたら外国の人は、相手が年上の人でもファーストネームで呼んでいた。あんな感じだ、と思いたい。


今日は二人で森の奥へ薬草の採取に来ていた。

帰りに遭遇したコボルトの討伐証明も集め終えたし、アンファングに戻る頃合だ。

「か、帰ったら。またおやつをくれないか」

レイナは俺が作るお菓子が好物になった。

恥ずかしそうに言うレイナに萌えるぜ!

うーん。これは餌付けなのだろうか。


レイナと一緒に部屋で話してから2ヶ月。

俺達は一緒に依頼をこなすことが多かった。

ああ、あの夜のことは忘れないぜ。


ナニも無かったけどさ。


二人で飲んでお喋りをした。

レイナは遠くの小国に仕える騎士だったそうだ。

「冒険者は互いの過去を詮索しないのがルールだ」と聞いているので詳しくは聞かなかったけど。

アンファングに着いた時はほとんどお金を持っていなかったらしい。

剣で稼げばいいと思っていたレイナだったが、ここで思い悩んだ。

これまでは名誉と誇りを持って戦っていた。

騎士ではなくなって、この剣を何の為に振るうのかと。

冒険者という職に今一馴染めなかったらしい。

今までは従者がやってくれていた倒した魔物の処理や、身の回りのことも全て自分でしなければならない。暮らしが上手くいかない苛立ちもあって他の冒険者となじめず、倒した魔物は高く買い取ってもらえない。ますますいらだつという悪循環に落ちいっていた。


そんな彼女を華麗に救ったのがこの俺だ。

まあ、たまたまド級初心者の俺がやってたことが、レイナに丁度いい学習になったってわけだけど。

レイナは素材採集や魔物退治など冒険者が人々に貢献していることがわかってすっきりしたそうだ。

「強くなることが他者への貢献になるというのは私にあっている」とレイナは言ってた。

さすが元騎士殿です。

そんなこんなで彼女の冒険者業への邁進は凄い。

レイナの冒険者レベルは昇格試験を経てCランク。

彼女に引っ張られる形で俺もDランクになった。レイナ様々である。

ちなみに他の冒険者達とパーティーを組んで、魔物退治や迷路化した古代遺跡の探索などもしている。


パーティーとは冒険者同士が数人でチームを組むことだ。

依頼によって組まれることもあれば、長く一緒に組む冒険者もいる。

高いレベルのパーティに低レベル冒険者が入ることだってある。

俺とレイナはゾラさんのパーティや上位レベルのパーティに何度か入れてもらった。主に荷物持ちとかの手伝いだ。


高レベルパーティに低レベル冒険者が入ってどんどんランクアップだぜ!

ということは無かった。

まあ形だけレベルが上がっても、そんなんじゃすぐ死んじゃうから意味無いもんな。

高レベルパーティに参加するのは、強い魔物との戦い方や探索方法などを実地で学ばせてもらうためだ。じゃないと見たことも無い魔物への対処なんて難しすぎる。

参加すると俺の場合はDランク相当の報酬が出る。

下のランクの冒険者を連れて行くのはいろいろ面倒だけど、荷物持ちとして使えるし皆こうして先輩に世話になったそうで、冒険者として当たり前だそうだ。


上位ランクのパーティ戦闘は見事だった。

レンジャーが索敵して魔物を発見。

魔法使いが筋力や敏捷性を上げる付与魔法をかける。

高い防御力のある盾や防具を備えた戦士が前衛。

準備が整ったら魔物へ矢と遠距離魔法。

魔物の種類によっては能力を下げる魔法だ。

接敵したら後衛に攻撃が行かないようにしつつ戦闘。

うん。

コンピューターRPGでやってたような感じだ。

もちろん俺は大規模オンラインRPGなんてしたことないけど。

ゲームと違うのはミスると痛いのと最悪死ぬことだ。


ゾラさんのパーティは遺跡や森林探索術に長けたレンジャーで獣人族のコーッラドさんと治癒魔法を仕える神官のレキスさんに、魔法使いのメルラさんと男女双子の戦士スタウス姉弟、前衛の重戦士ゴラゾンさん。そしてリーダーがゾラさんで7人だ。

フォーメーションやハンドサインとか、こういう状況になったら撤退するとか報酬の分配を前もって決めるなど、初心者講習よりも詳しく実践的に教えてもらった。


ちなみに前衛で敵からの攻撃を防ぐ盾役の戦士ゴラゾンさん38才はマッチョで口髭のおじさんで、「悩んだら筋肉を鍛えろ」と見事な筋肉を見せて俺にアドバイスをくれた。

なのでよほどすごい苦悩があったんだろうと「どんな悩みがあったんですか?」と聞くと「うーん。特に無かったな」と答えてくれた。

「ほ?」

どういうことだと俺が悩んでいると。

「がっはっは! 悩んだな! そら! 筋肉を鍛えろ。腹筋だ!」

「ええっ?!」

そしてゴラゾンさんと一緒に筋トレタイムになった。

もうなんなんだよ。わけわからないよ……

だ、だめだここで悩むと筋トレループじゃないか!

そうでなくても筋トレの材料には困らないのに。


そんな感じで、俺は冒険者としての日々を送っていた。

暦は12月になった。

この世界に来て二度目の年の瀬を迎えようとしていた。

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